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⑧ラルフ様の能力
しおりを挟むラルフ様が居ていいとおっしゃるので、私もラルフ様の隣でアレクシス様のお話を聞くことになりました。
「フィアス領なのですが、巡回していましたらやはり作物の育ちが遅いように思います。同じくカシャ領もマーサス領もでした。」
「だろうな、今年は天候が悪いから日照時間が短い。手を打っとかないと、大変なことになるな。後、カナン領とグリーンフィル領に植えさせた作物はどうなっている?」
「はい、ラルフ様の、おっしゃる通り、今年は南の地域で雨が多く、北の地域では水不足になりつつあります。なので作物に水をやる余裕がないのですが、ラルフ様が植えるよう指示された作物はほんの少しの水でも育つため、問題なく成長しています。」
「そうか、良かった。ただ、水不足か・・・作をねらないといけないな。」
さっきからお二人がお話されている内容、こんな所でお話される内容なのでしょうか?
私は政治の事とかよく分からないのだけど、このお屋敷があるナタリア領の話ならともかく、国全体のことを話されているようです。これは一王子の仕事ではないのでは?
「・・・うん、日光が必要な所にはハウスを作ろう。本当は太陽の代わりになるものを空に上げればいいんだけど、さすがにそれは目立つからやらない。」
太陽の代わりになるもの?
そんなことが出来るのかしら?
「そうですね、そんな事やらかしたら国どころか、世界から注目されちゃいますよ。」
アレクシス様はさらりと受け流されているけれど、冗談よね?
「後、北の水不足だけど・・・南から水路を繋げるのはさすがに距離がありすぎるし・・・ちょっと行ってみて調べるか。」
「わかりました。」
「後、ナザリア共和国の動きも気になるから抑えとけよ。」
「はい。承知しております。」
えっと・・・ラルフ様は国王様になれるのでは無いかしら。でも、本人はめんどくさいとかで、なる気は無いのでしょうね・・・
「リリアーナ、しばらく家を空けることになるけど、留守をお願いできるかな?」
ラルフ様が私を見て優しく話しかける。さっきまでの表情とは違う。
こんな風に表情で感情を表せたらどんなにいいかしら・・・
「どれくらいですか?」
多分南と、北の領地両方行かれるのよね?二ヵ月はかかるわよね。
・・・それは寂しいかもしれない・・・
「うーん・・・上手く行けば二日ほどかな?」
「え?」
二日?二ヶ月の聞き間違いかしら?
「寂しかったら夕食には帰ってくるけど、待っててくれる?」
「え?」
全く意味が呑み込めない私を見て、ラルフ様がにっこり笑う。
「俺、実は魔法が使えるんだよ。」
「まぁ、ラルフ様は魔法が使える方でしたのね?」
この世界には魔法がある。
けれど、誰もが使える訳ではなくて、魔力が高い人だけが使えるものなので、国の半分は全く使えない人。私も少しだけ使えるけれど、生活に必要な灯りが灯せる程度なのでなにも役に立たない。
ラルフ様が魔法が使えるのはわかったけれど、魔法を使っても二日で帰ってくるなんて不可能よね?
「リリアーナ様、ラルフ様の魔力は規格外すぎるんで、あんまり考えない方が良いですよ。頭おかしくなっちゃうんで。」
私が理解できなくて首を傾げていると、アレクシス様が横から話しかけてくる。
規格外?魔力が?
「あの・・・ラルフ様は魔法を使って移動するのよね?どうやって移動されるのですか?」
「うん、空間を歪めて行きたい所と繋げるんだよ。」
空間を?そんな魔法聞いたことありません。
「もちろん、絶対人前では見せないけどね。知ってるのはアレクと父上と、執事長のサーシスだけだ、今リリアーナにも話したからこれで四人だね。」
ウインクしながらにっこり笑うラルフ様。
それ、私なんかに話していい事なの??
「すぐに移動できるとはいえ、現地を調べて判断することもあるから少し時間がかかると思う。」
「わかりましたわ。留守はお任せ下さい。」
私はにっこり笑うつもりが、引きつった顔になってしまう。
「すぐに帰ってくるからね。」
そう言って私の頭を撫でたあと、ラルフ様は本当に空間を歪めてアレクシス様と消えた。
・・・ところで、ハウスを作るってなんの事かしら?
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