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㉛ジェフリー様の告白
しおりを挟むわたくしは複雑な思いで、馬車のあるエントランスまで戻った。
婚約破棄はわたくしの目的だったので嬉しいし、なんかシナリオと違って随分早く婚約破棄になったのだけど、早く終わって嬉しい反面、寂しい思いが湧いてきて、複雑な心境だった。
「レイラ嬢、どうなさったのですか?」
ジェフリー様が駆けつけてくる。
「こんなに早く戻られるなんて、何かあったのですか?」
「ジェフリー様・・・」
ジェフリー様を見た途端、ぽろりと涙が零れる。それを見たジェフリー様が慌ててわたくしの涙を拭いながら、わたくしを見る。
「どうしたのですか?」
「ヘンリー王子様に婚約破棄を言い渡されてしまいました。」
わたくしはへらりと笑ってジェフリー様を見る。
「え?それは・・・本当ですか?」
ジェフリー様、驚かれるのも無理ないわね。
思わず涙が出ちゃったけれど、これはわたくしの望んだ結果なの。
「とりあえず、わたくしは家に戻ります。来た所で申し訳ないのですけれど、送っていただいてもよろしいでしょうか?」
にっこり笑って願いしたけれど、本当に申し訳なさでいっぱいだわ。
「分かりました。お送りさせていただきます。」
ジェフリー様は納得したのか、にっこり笑ってわたくしを馬車までエスコートして下さる。
「レイラ嬢、大丈夫ですか?」
馬車の中で、ジェフリー様が気遣って遠慮がちに聞いてくる。
「大丈夫ですわ。」
わたくしは心配して下さるジェフリー様に笑顔を向ける。
「もっと気落ちされているかと思いましたが、レイラ嬢はお強いですね。」
「そうですね、わたくしヘンリー王子様には憧れていたのですけれどね。」
「憧れ・・・ですか?好きでは無く?」
ジェフリー様がわたくしの言葉に疑問を抱く。
あれ?そういえば・・・ヘンリー王子には強い憧れがあったから、好きなのだと思っていたけれど、好きという感情とは違うのかしら?
前世でも恋なんてしたこと無かったから分からないわ・・・
「なら、私にもチャンスはあるのでしょうか?」
わたくしが考えていると、ジェフリー様がにっこり微笑む。
「え?」
わたくしはジェフリー様を見る。
「こんな場で、このタイミングで言うことではないのですが、私はずっとレイラ嬢が好きでしたよ。」
「ええ??」
わたくしはびっくりして思わず声を上げてしまう。
「レイラ嬢、いつも高いヒールを履いているのではないですか?」
ジェフリー様すごい!なぜ分かったのかしら。
「どうしてですか?」
「社交界デビューされる前から、レイラ嬢は何度も城に来ていらっしゃったので、私もよくお見かけしていたのですが、社交界に出るようになられてから急に身長が伸びられて、不思議に思ったのです。何故そんなことをされているのかと・・・」
ジェフリー様鋭いですわね、まぁ、よく考えたら、小さい頃から知ってる方なら不思議に思うのも当たり前ですわね・・・
「初めは興味から、見ているうちに次第に、お可愛らしいレイラ嬢の事が好きになったのです。ですが、レイラ嬢はヘンリー王子のご婚約者、私は思いを告げることは無いと思っておりましたが・・・もし宜しければ私の事も考えていただけませんか?」
ジェフリー様の事はすごく頼りになって、お優しくて好きなのだけど、恋愛対象として見たことがない。お兄様のように思っていたのでよく分からない・・・
こんなことを考えながら、ジェフリー様を目の前にしているのに、何故かわたくしの頭の中に浮かぶのはミカの顔ばかりで、ミカが消えない。
わたくしは混乱する頭で一生懸命考えようとしていた。
「こんな時に戸惑わせるようなことを言って申し訳ございません。気にしないでください。」
ジェフリー様が混乱するわたくしを気遣って言ってくれる。
「ジェフリー様・・・申し訳ございませんっ。」
わたくしは頭を下げることしか出来なかった。
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