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㉙それは突然に
しおりを挟むお城に着くと、ジェフリー様が馬車からわたくしを下ろしてくださる。
降りた時に、視線を感じてふと見ると、遠くからリサ様がわたくしを見ていた。
リサ様?お城になんの御用でいらっしゃっているのかしら。私が気がついたのを見て、どこかへ行ってしまいましたけれど、すごくご機嫌ナナメな雰囲気でしたわね。
馬車を降りた所でジェフリー様とマーカス様とはお別れして、わたくしの護衛はいつも通り、ミカが付いて来てくれる。お城の中まで入るともう安心ですものね。
しばらく歩くと、広いホールにたどり着く。
そこでヘンリー王子が待っていた。
「やあ、こんにちは、レイラ嬢」
「まぁ、ヘンリー王子様、ごきげんよう。わざわざお迎えに来てくださったのですか?」
わたくしはこんな所まで来てくださったヘンリー王子に笑顔を向ける。
「今日はリサ嬢も一緒に話したい事があってね、リサ嬢に来てもらったんだ。リサ嬢は城内が不案内だから迎えに来たんだよ。」
そう言うヘンリー王子の後ろを見ると、リサ様が立っていた。
「え?リサ様と・・・ですか?」
わたくしは、初めてこんな所まで迎えに来てくれたヘンリー王子に嬉しさを隠せなかっのだけど、リサ様の為に来たと聞いて、一気に気持ちが下がるのを感じながら考える。
こんな展開、ゲームにはなかったと思うのだけど・・・
「とりあえず、いつもの部屋まで行こうか。」
ヘンリー王子はそう言って私を促した。
いつもの面会のお部屋はここから階段を上がった左奥なので、階段へと向かう。
その後をリサ様も付いてくる。
階段を半分位まで上がった所で、わたくしはドレスに何か引っかかったのか、引っ張られるような感覚で後ろに倒れそうになった。
「きゃっ、」
わたくしはびっくりして、小さく声を出したけれど、数段下から付いてきていたミカが、駆け上がってわたくしを支えてくれたので、階段から転げ落ちずに済んだ。
何が起こったのか分からないでいる私の耳に悲鳴が届く。
「キャーっ」
リサ様の悲鳴?
悲鳴と共に階段を転げ落ちるリサ様の姿が目に入った。
その悲鳴に、先頭を歩いていたヘンリー王子が振り返る。
「リサ嬢!」
ヘンリー王子は慌ててリサ様を助けに向かう。
わたくしは突然の出来事にびっくりして、動くことが出来なかった。
転げ落ちて、しばらく動かなかったリサ様がヘンリー王子の呼び掛けに目を開ける。
「リサ嬢、いったい何があったんだ!」
「レイラ様が・・・レイラ様の使用人が私を突き落としたんです!!レイラ様が命令されたんです!」
え?
ミカが突き落とした?
わたくしが命令したんですの?
えっと・・・ミカ、まだわたくしを両手で支えたままですけれど・・・
足?足で蹴ったのかしら?
わたくしはミカを見上げる。
ミカはわたくしを見て、小さくフルフルと首を横に振っている。
そうよね、ミカに限ってそんな事するはずないわ。
わたくしは状況を把握しようと一生懸命考えていると、ヘンリー王子が私を睨みつける。
「レイラ嬢!どういう事だ!」
どういうと言われましても、わたくしもどういう事か聞きたいですわ。
「レイラ嬢!今日だけでなく、リサ嬢への嫌がらせの数々、聞いているぞ!噴水に突き落としたり、シャンパンを掛けたり、足をかけてリサ嬢を皆の前で転ばせたり、化粧室に閉じ込めた事もあっただろう!水をかけたことも!そして、今日はこれか!」
ヘンリー王子がつらつらとリサ様への嫌がらせの数々を述べる。
まぁ、そんな事が?わたくし半分も心当たり無いのですけれど・・・全部わたくしのせいになっているのね?
ヘンリー王子が立ち上がってわたくしを見据える。
「レイラ嬢!お前との婚約は破棄させてもらう!後程家に書面を送るから、早く俺の前から消えてくれ!」
怒鳴るようにわたくしを睨んで吐き捨てるヘンリー王子。
わたくしは呆然とその言葉を聞いていた。これは・・・シナリオとは随分違うけれど、予定の婚約破棄ですわ!
「分かりましたわ・・・」
嬉しさを隠しながら、わたくしは俯いて階段を降りてエントランスへと向かった。
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