上 下
19 / 44

⑲盗賊(ミカエル)

しおりを挟む


今日はレイラお嬢様は取り巻きの方のリーゼ嬢のお屋敷にお呼ばれしてお茶会に参加した。
相変わらず、女性はお喋りが大好きなようで、話の内容は美への拘りとか、洋服の褒め合い、流行りの話等、そして、陰口も大好きだな・・・なんでそんな話で花が咲くのか、さっぱりわからん。
つくづく平和な国だな・・・
レイラお嬢様も半分はついて行けず、頷くだけだった。

「今日も楽しかったわ。皆様お話上手で時間があっという間ね。」

帰りの馬車の中でレイラお嬢様が今日の事を嬉しそうに話す。

「そうですね、ご令嬢方は話に花を咲かせるのがお上手ですね。レイラお嬢様、お疲れではないですか?」

レイラお嬢様は本来ゆったりとお話される方なので、矢継ぎ早に次々と出てくる会話について行くのが大変そうだった。あれでは疲れるだろう。

「ええ、そうね、少し疲れちゃったかも。」

「帰ったらゆっくりしましょうね。」

「うん、甘いミルクティーが飲みたいわ。」

「分かりました。アッサムにしますか?ディンブラ?それとも甘い物をご所望ならルフナに致しますか?」

お嬢様はお茶が大好きで、前世とやらからそれは変わらず、しかもお茶の種類もほぼ同じ名前らしい。
それでなのか、お茶の話を始めるとレイラお嬢様はくすっと笑って嬉しそうする。

「そうね、どれも好きなんだけど、今日はなんだかスッキリしたい気分なので、アールグレイでお願い。」

お茶の話で少し疲れが飛んだのか、元気に答えるお嬢様。

「了解致しました。アールグレイのミルクティー、意外と合うんですよね。」

「そうなのよ!最近わたくしのお気に入りなの!」

紅茶の話となると嬉しそうだ。
俺もそんなレイラお嬢様を見るのは好きだ。
本当にキラキラした笑顔で俺を見て嬉しそうに話す。


そんな話をしていると、突然馬の嘶きと共に、馬車が揺れて停る。
俺は直ぐにレイラお嬢様を抱き抱えて剣に手を伸ばす。

「なに?また盗賊?」

レイラお嬢様の嬉しそうな表情が一気に不安の表情へと変わる。

この前の事があるので護衛は前に三人、後ろにも二人乗っている。御者は護衛が兼ねているので全員が戦える状態だ。
俺は外の様子を小窓から確認したが、不味い。今五人が戦っているが、相手の数が多すぎる。馬車を囲んでいるのは四十人ほどの男達だ。
これは、俺が外に出て戦うのは危険だ。
この人数なら俺一人で何とか出来るが、俺が戦っている間にお嬢様をさらわれる可能性がある。
これは、このままお嬢様を乗せて馬車ごとここを突破する方がいい。戦ってくれている五人には申し訳無いが、お嬢様の安全が最優先だ。
俺は咄嗟に判断したことをお嬢様に伝える。

「お嬢様、外は四十人ほどの賊が取り囲んでいます。私が今から馬車を走らせますので、どこかに捕まっていて下さい。」

一刻を争う為、俺はお嬢様の返事を聞かず外へ出ると、すぐに扉を閉めた。
そして、御者の席に着くと直ぐに馬車を走らせる。
取り囲んでいるヤツらの中を、強行突破して飛び出した時、前方の地面より少し上に一直線に張られたロープの様なものを発見した。俺は舌打ちをしながら慌てて馬を停めようと、方向転換しつつ、思いっきり綱を引いた。
だが間に合わず、馬がロープに掛って倒れる。
方向転換しようとしたおかげで馬車は吹っ飛ばず、横倒しに倒れた。

「お嬢様!!」

俺は倒れる瞬間御者席から飛び降り、なんとか着地した。慌ててお嬢様の元へ向かおうとすると、森からさらに十人ほどの男が出て来て俺を取り囲んだ。

「チッ、まだ隠れていたのか。」

俺は悪態をつきながら手にした剣を構え直す。
お嬢様は大丈夫だろうか、早く助け出さなければ、
俺に向かってくる盗賊をなぎ払いながらお嬢様の乗る馬車を見ると、数人の男たちがお嬢様を無理矢理引っ張り出している様が目に映った。

「お嬢様!!」

「おっと、お前の相手はこっちだぜ。」

レイラお嬢様の元へ向かおうとする俺の前に立ちはだかり、俺の剣を受けた男は明らかに周りの盗賊達と動きが違った。

「お前、何者だ?お嬢様をどうするつもりだ!!」

俺はキレる寸前で理性を保ちながら男に問掛ける。

「お嬢様は俺らの慰みもんになって貰うのよ。俺は元騎士だからな、そこらの雑魚と一緒にするんじゃねーよ!」

男は言い終わらないうちに俺に剣を突き立てる。
俺はそれを交しながら男の懐に潜り込むと腹に剣を突き立てた。

「元騎士?俺を抑えようと思うなら王国騎士団長クラスを連れて来る事だな。」

一瞬で方が着いたことへの驚きで、「バカな」とつぶやく男に俺は吐き捨てる。
俺の師匠は王国騎士団長だ。それを超える奴じゃないと俺は止められない。

崩れ落ちる男を振り返りもせず、俺はそのままお嬢様が連れて行かれた方へと走った。
雑魚が五月蝿い。走りながら雑魚を薙ぎ払う。さっきの男の言葉が頭の中に響いていた。

俺のお嬢様を慰みものになんかさせるか!!

森から少し入ったところで男たちが群がっているのが見えた。

居た!

囲む男達を剣で薙ぎ払うと、お嬢様の上に馬乗りになっている男が居た。

「ミカ!」

俺を見た瞬間、お嬢様が叫ぶ。
両手を別の男に抑えられ、汚い男がお嬢様の上に跨っている。
お嬢様の衣服は乱され、上半身の白い肌が顕になり、お嬢様の目には涙が溢れている。

その光景を見た瞬間、俺はブチキレた。









    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。 誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生! まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か! ──なんて思っていたのも今は昔。 40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。 このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。 その子が俺のことを「パパ」と呼んで!? ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。 頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな! これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。 その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか? そして本当に勇者の子供なのだろうか?

【完結】ヤンデレ王子と面食いヒロイン『作られた運命』の物語

うり北 うりこ
恋愛
王子顔が正義! 性格なんて何でもいい! というヒロインと、ヒロインと結ばれるために運命を作り上げたストーカー系王子の物語。 私の大好きなヤンデレ。性癖を裏sideに詰め込みました!!

婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい

香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」 王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。 リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。 『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』 そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。 真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。 ——私はこの二人を利用する。 ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。 ——それこそが真実の愛の証明になるから。 これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。 ※6/15 20:37に一部改稿しました。

夢見る乙女と優しい野獣

小ろく
恋愛
王子様のような男性との結婚を夢見る、自称ロマンチストのエマ。 エマと婚約することになった国の英雄、大きくて逞しい野獣のような男ギルバート。 理想とはまるで違う婚約者を拒否したいエマと、エマがかわいくて楽しくてしょうがないギルバート。 夢見る伯爵令嬢と溺愛侯爵子息の、可笑しな結婚攻防のお話し。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

処理中です...