15 / 44
⑮試練?これは試練ですか?
しおりを挟む目が覚めると、そこにはミカの姿があった。
「おはようございます。」
「お、おはようございますっ。ミカ、ずっと居てくれたの?、忙しいのにごめんなさい。」
わたくしは熟睡出来たことで頭がハッキリして、ミカに何をさせてしまったんだろうと恥ずかしくなった。
「大丈夫ですよ。お湯浴みされますか?用意させますね。」
そう言ってミカは部屋を出ていった。
「お嬢様、今日もとてもお美しくいらっしゃいます!」
わたくし付き侍女のミーナが目をキラキラさせながら言う。
ミーナに着替えとヘアセットと、少しお化粧をしてもらって完成すると、ミーナはいつも本当に嬉しそうに言ってくれる。
「ありがとう。もう少しキツいお化粧に出来ないかしら。」
悪役令嬢なのだからキツいくらいがいい。
「ダメです!お嬢様のお美しさはお化粧なんかで隠せるものではありません!」
お化粧は美しさを際立たせるためにあると思うのだけど・・・いつものお願いは通らなかったので仕方なく了承する。
「分かったわ。ミーナはわたくしを褒めるのが上手ね。」
「思ったことを言ったまでです。」
「失礼します。」
ミカがわたくしが着替えが終わったのを聞いて入ってくる。
「今日もレイラお嬢様はお美しいですね。」
私を見るなりミカがニッコリして言う。
「ミカまで・・・」
うちの使用人は主人を褒める訓練でも受けているのかしら・・・
「私はレイラお嬢様のお伴が出来て幸せです。参りましょうか。」
「ええ、」
ミカに促されてわたくしはジェフリー公爵邸へと向かった。
「ジェフリー様、今日はお招き頂きましてありがとうございます。」
わたくしはジェフリー公爵様を見つけると挨拶に向かった。
「ようこそおいで下さいました、レイラ嬢。しばらく体調を崩されていたと伺いましたが、お加減はもう大丈夫ですか?」
「ええ、体調を崩した訳では無いのですが、足を少し痛めてしまいまして、療養しておりました。」
「そうだったんですね、もう大丈夫ですか?あちらに席を用意していますので、無理なさらずどうぞおかけ下さい。」
「ええ、お気遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますわ。」
相変わらずジェフリー様は物腰が上品で、お気遣いがお上手だわ。
わたくしは案内された席のある方へと向かって歩く。
テーブルの近くまで行くとヘンリー王子がいらっしゃるのが目に入った。
わたくしはゆっくり近づきヘンリー王子に挨拶をする。
「ヘンリー王子様、ごきげんよう。」
「やあ、レイラ嬢、久しぶりだね。」
ヘンリー王子は本当に王道王子様のキラキラ笑顔でわたくしにほほ笑みかける。
「レイラ様、ごきげんよう。お久しぶりにございます。」
ヘンリー王子の後ろから声がして、見るとリサ様が挨拶をしていた。
あら、ヘンリー王子とご一緒でしたのね。
仲がいいのは良い事だわ。でも、わたくしは悪役令嬢なのよね。
「リサ様、ごきげんよう。ヘンリー王子様とお話しされていたのですね、お話のお邪魔だったかしら。」
「とんでもございません。ヘンリー王子様とは少しお話をさせて頂いておりました。」
リサ様が笑顔で答える。
リサ様は可愛らしいですわね。
しばらく話をしていると、ダンスの音楽が流れ始めた。
「ヘンリー王子様、レイラ様と踊られて来てはいかがですか?私はこちらで拝見させていただきます。」
リサ様が進める。
「そうだね、じゃあ、後で僕と踊ってくれるかな?」
「もちろんですわ。」
お二人で会話を進めていらっしゃるけれど、わたくしはいいからお二人で踊っていらっしゃったらいいのに・・・
この曲、アップテンポな曲なので正直足がもつか不安だわ・・・。
「レイラ嬢、私と踊っていただけますか?」
ヘンリー王子がわたくしに手を差し出す。
踊れないとは言えませんね・・・
「はい、喜んで。」
わたくしは笑顔で侯爵令嬢らしく凛とした姿でヘンリー王子の手を取った。
ヘンリー王子と婚約者のわたくしとのダンスは注目となり、わたくし達の周りに空間ができる。
普段高いヒールで踊るのも怖いのだけれど、足にまだ少し違和感があるので本当に怖い。
空間が出来たことで、ヘンリー王子がさらに大きく動くので合わせるのが大変、でも悪役令嬢が転ぶわけにはいかないわ。
わたくしは何とか根性で踊りきった。足はかなりガクガクだけど。
「とても楽しかったですわ。ありがとうございます。」
曲が終わるとわたくしはヘンリー王子に淑女の礼をして挨拶をする。
「うん、楽しかったね、」
わたくし達はリサ様がいるところまで戻ると、ヘンリー王子はリサ様に手を差し出す。
「リサ嬢、僕と踊って下さい。」
「喜んで。」
リサ様はその手に自分の手を重ねる。
2人の様子を見てやっと座れるとほっとする。
「レイラ様も見ていてくださいね!」
リサ様が無邪気そうに話しかけてくる。
「ええ、分かりましたわ。」
にっこり笑って答えたけれど、座れない!
とてもキツいです・・・これは試練でしょうか・・・
笑顔を絶やさず立っているけれど、正直限界です。
そう思っていると、「失礼します」と小さな声がして、わたくしの腰を支えてくれる手が現れた。
ミカがわたくしの斜め後ろで周りに気づかれないように手で支えてくれている。
「レイラお嬢様、後ろにもたれ掛かって頂いて大丈夫です。」
ミカがこっそり言う。
「ありがとう。」
ほっとして少しミカの手に頼る。
わたくしはしばらくしてお二人が戻っていらっしゃると、すかさず話しかける。
「とても素晴らしかったですわ。わたくしは失礼しますわね、ごゆっくりなさって下さいませ。」
言い終わると淑女の礼をして、見た目は優雅に見えるようにさっそうと立ち去った。
0
お気に入りに追加
1,715
あなたにおすすめの小説
陛下の溺愛するお嫁様
さらさ
恋愛
こちらは【悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される】の続編です。
前作を読んでいなくても楽しんで頂ける内容となっています。わからない事は前作をお読み頂ければ幸いです。
【内容】
皇帝の元に嫁ぐ事になった相変わらずおっとりなレイラと事件に巻き込まれるレイラを必死に守ろうとする皇帝のお話です。
※基本レイラ目線ですが、目線変わる時はサブタイトルにカッコ書きしています。レイラ目線よりクロード目線の方が多くなるかも知れません(^_^;)
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。
さらさ
恋愛
これはゲームの中の世界だと気が付き、自分がヒロインを貶め、断罪され落ちぶれる悪役令嬢だと気がついた時、悪役令嬢にならないよう生きていこうと決める悪役令嬢が主人公の物語・・・の中のゲームで言うヒロイン(ギャフンされる側)に転生してしまった女の子のお話し。悪役令嬢とは関わらず平凡に暮らしたいだけなのに、何故か王子様が私を狙っています?
※更新について
不定期となります。
暖かく見守って頂ければ幸いです。
溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!
参
恋愛
男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。
ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。
全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?!
※結構ふざけたラブコメです。
恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
悪役令嬢の幸せは新月の晩に
シアノ
恋愛
前世に育児放棄の虐待を受けていた記憶を持つ公爵令嬢エレノア。
その名前も世界も、前世に読んだ古い少女漫画と酷似しており、エレノアの立ち位置はヒロインを虐める悪役令嬢のはずであった。
しかし実際には、今世でも彼女はいてもいなくても変わらない、と家族から空気のような扱いを受けている。
幸せを知らないから不幸であるとも気が付かないエレノアは、かつて助けた吸血鬼の少年ルカーシュと新月の晩に言葉を交わすことだけが彼女の生き甲斐であった。
しかしそんな穏やかな日々も長く続くはずもなく……。
吸血鬼×ドアマット系ヒロインの話です。
最後にはハッピーエンドの予定ですが、ヒロインが辛い描写が多いかと思われます。
ルカーシュは子供なのは最初だけですぐに成長します。
【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)
野村にれ
恋愛
番(つがい)の物語。
※短編集となります。時代背景や国が違うこともあります。
※定期的に番(つがい)の話を書きたくなるのですが、
どうしても溺愛ハッピーエンドにはならないことが多いです。
婚約破棄されたから、執事と家出いたします
編端みどり
恋愛
拝啓 お父様
王子との婚約が破棄されました。わたくしは執事と共に家出いたします。
悪女と呼ばれた令嬢は、親、婚約者、友人に捨てられた。
彼女の危機を察した執事は、令嬢に気持ちを伝え、2人は幸せになる為に家を出る決意をする。
準備万端で家出した2人はどこへ行くのか?!
残された身勝手な者達はどうなるのか!
※時間軸が過去に戻ったり現在に飛んだりします。
※☆の付いた話は、残酷な描写あり
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる