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⑮試練?これは試練ですか?

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目が覚めると、そこにはミカの姿があった。

「おはようございます。」

「お、おはようございますっ。ミカ、ずっと居てくれたの?、忙しいのにごめんなさい。」

わたくしは熟睡出来たことで頭がハッキリして、ミカに何をさせてしまったんだろうと恥ずかしくなった。

「大丈夫ですよ。お湯浴みされますか?用意させますね。」

そう言ってミカは部屋を出ていった。




「お嬢様、今日もとてもお美しくいらっしゃいます!」

わたくし付き侍女のミーナが目をキラキラさせながら言う。
ミーナに着替えとヘアセットと、少しお化粧をしてもらって完成すると、ミーナはいつも本当に嬉しそうに言ってくれる。

「ありがとう。もう少しキツいお化粧に出来ないかしら。」

悪役令嬢なのだからキツいくらいがいい。

「ダメです!お嬢様のお美しさはお化粧なんかで隠せるものではありません!」

お化粧は美しさを際立たせるためにあると思うのだけど・・・いつものお願いは通らなかったので仕方なく了承する。

「分かったわ。ミーナはわたくしを褒めるのが上手ね。」

「思ったことを言ったまでです。」

「失礼します。」

ミカがわたくしが着替えが終わったのを聞いて入ってくる。

「今日もレイラお嬢様はお美しいですね。」

私を見るなりミカがニッコリして言う。

「ミカまで・・・」

うちの使用人は主人を褒める訓練でも受けているのかしら・・・

「私はレイラお嬢様のお伴が出来て幸せです。参りましょうか。」

「ええ、」

ミカに促されてわたくしはジェフリー公爵邸へと向かった。




「ジェフリー様、今日はお招き頂きましてありがとうございます。」

わたくしはジェフリー公爵様を見つけると挨拶に向かった。

「ようこそおいで下さいました、レイラ嬢。しばらく体調を崩されていたと伺いましたが、お加減はもう大丈夫ですか?」

「ええ、体調を崩した訳では無いのですが、足を少し痛めてしまいまして、療養しておりました。」

「そうだったんですね、もう大丈夫ですか?あちらに席を用意していますので、無理なさらずどうぞおかけ下さい。」

「ええ、お気遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますわ。」

相変わらずジェフリー様は物腰が上品で、お気遣いがお上手だわ。
わたくしは案内された席のある方へと向かって歩く。
テーブルの近くまで行くとヘンリー王子がいらっしゃるのが目に入った。
わたくしはゆっくり近づきヘンリー王子に挨拶をする。

「ヘンリー王子様、ごきげんよう。」

「やあ、レイラ嬢、久しぶりだね。」

ヘンリー王子は本当に王道王子様のキラキラ笑顔でわたくしにほほ笑みかける。

「レイラ様、ごきげんよう。お久しぶりにございます。」

ヘンリー王子の後ろから声がして、見るとリサ様が挨拶をしていた。
あら、ヘンリー王子とご一緒でしたのね。
仲がいいのは良い事だわ。でも、わたくしは悪役令嬢なのよね。

「リサ様、ごきげんよう。ヘンリー王子様とお話しされていたのですね、お話のお邪魔だったかしら。」

「とんでもございません。ヘンリー王子様とは少しお話をさせて頂いておりました。」

リサ様が笑顔で答える。
リサ様は可愛らしいですわね。

しばらく話をしていると、ダンスの音楽が流れ始めた。

「ヘンリー王子様、レイラ様と踊られて来てはいかがですか?私はこちらで拝見させていただきます。」

リサ様が進める。

「そうだね、じゃあ、後で僕と踊ってくれるかな?」

「もちろんですわ。」

お二人で会話を進めていらっしゃるけれど、わたくしはいいからお二人で踊っていらっしゃったらいいのに・・・
この曲、アップテンポな曲なので正直足がもつか不安だわ・・・。

「レイラ嬢、私と踊っていただけますか?」

ヘンリー王子がわたくしに手を差し出す。
踊れないとは言えませんね・・・

「はい、喜んで。」

わたくしは笑顔で侯爵令嬢らしく凛とした姿でヘンリー王子の手を取った。

ヘンリー王子と婚約者のわたくしとのダンスは注目となり、わたくし達の周りに空間ができる。
普段高いヒールで踊るのも怖いのだけれど、足にまだ少し違和感があるので本当に怖い。
空間が出来たことで、ヘンリー王子がさらに大きく動くので合わせるのが大変、でも悪役令嬢が転ぶわけにはいかないわ。

わたくしは何とか根性で踊りきった。足はかなりガクガクだけど。

「とても楽しかったですわ。ありがとうございます。」

曲が終わるとわたくしはヘンリー王子に淑女の礼をして挨拶をする。

「うん、楽しかったね、」

わたくし達はリサ様がいるところまで戻ると、ヘンリー王子はリサ様に手を差し出す。

「リサ嬢、僕と踊って下さい。」

「喜んで。」

リサ様はその手に自分の手を重ねる。
2人の様子を見てやっと座れるとほっとする。

「レイラ様も見ていてくださいね!」

リサ様が無邪気そうに話しかけてくる。

「ええ、分かりましたわ。」

にっこり笑って答えたけれど、座れない!
とてもキツいです・・・これは試練でしょうか・・・
笑顔を絶やさず立っているけれど、正直限界です。
そう思っていると、「失礼します」と小さな声がして、わたくしの腰を支えてくれる手が現れた。
ミカがわたくしの斜め後ろで周りに気づかれないように手で支えてくれている。

「レイラお嬢様、後ろにもたれ掛かって頂いて大丈夫です。」

ミカがこっそり言う。

「ありがとう。」

ほっとして少しミカの手に頼る。

わたくしはしばらくしてお二人が戻っていらっしゃると、すかさず話しかける。

「とても素晴らしかったですわ。わたくしは失礼しますわね、ごゆっくりなさって下さいませ。」

言い終わると淑女の礼をして、見た目は優雅に見えるようにさっそうと立ち去った。















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