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⑩甘やかされてます
しおりを挟むあの後ミカはお父様に訳を説明して、私を守れなかったことを謝っていたけれど、お父様は身の丈に合わない高いヒールを履いていたわたくしも悪いと言って、そんなにミカを攻めなかったのでほっとした。
けれど、ミカは自分の気が治まらないのか、わたくしの足が治るまで甘々に甘やかしてくれた。
朝起きると、お着替えはベッドの上で腰かけたまま、そのまま洗顔して、朝食はミカにお姫様抱っこでお父様達の待つ部屋まで連れていってくれる。
食べ終わると、またミカにお姫様抱っこで部屋まで戻ってきて、ベッドに降ろされるとそのままミカが足を冷やしたり、マッサージをしたりしてくれる。午前中はベッドの上で過ごして、昼食後はお庭にミカにお姫様抱っこで連れてってもらったり、読書をしたりして過ごして、夜はまた寝る前にミカが足を冷やしてくれる。
一生分のお姫様抱っこをしてもらったんじゃないかしら。
わたくしの足はかなり酷かったらしく、二週間は歩くことが出来なかった。二週間経ったくらいから少しずつ歩けるようになったけれど、まだ痛い。ミカは常にわたくしの手を取り、わたくしを支えて負担がかからないよう歩いてくれる。
本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
ミカはとてもいいお嫁さんになるんじゃないかしら。
顔はとても綺麗だし、身長は確か183って言ってたかしら。お嫁さんにしては高すぎるわね・・・
わたくしが152センチなので約三十センチも身長差があるのね・・・
スラリとしていて綺麗なミカは目立つのよ。気位の高いご令嬢方は気にはなっても、使用人でしかないミカに興味は無いようだけれど、大半のご令嬢方はチラチラと見ているのを知っている。
ミカは時々眼鏡をかけたりして、出来るだけ目立たないようにしているけれど、敏感なご令嬢は気がついているし、おじ様達からも狙われているのを知っているわ。
わたくしのミカに変な事しようとしたらわたくしが許さないんだから!
「レイラお嬢様、どうかなさいましたか?」
庭園でお茶をしながらぼーっとしていたわたくしに、ミカが話しかけてくる。
変な事考えてたのがバレたのかしら?
「な、なんでもないわよ。」
慌てて答えたけれど、ミカが怪訝な顔で見ている。
「疲れましたか?」
ミカはどうやらわたくしが疲れてしまったと勘違いしているようで、心配そうに顔を覗き込んでくる。
これは、そういうことにしておいた方がいいわね。
「そうね、少し疲れちゃったわ。」
「では、お部屋に戻りましょうか。」
そう言ってわたくしを抱っこしようとする。
「ミカ、わたくし歩けるわよっ、」
「お疲れなのにご無理なさってはいけません。」
そう言ってまたお姫様抱っこされてしまった。
ミカの首に捕まりながらミカの顔をすぐ近くで見るのは恥ずかしいのだけれど、とても好きな事に最近気が付ついた。
グレーの髪の間から除くサファイアブルーの瞳は本当に綺麗で、その瞳を覆い隠すような黒く長い睫毛も色っぽくて、ずっと見ていたくなるくらい美しいの。
ヘンリー王子のコバルトブルーの瞳も綺麗だけれど、ミカの瞳の方が引き込まれそうな感じがする。
「私の顔になにか付いていますか?」
わたくしがマジマジと見ていると、不意にミカがわたくしの方を向いて言った。
顔がとても近くて、わたくしは顔が赤くなるのを感じて、隠そうと俯いて目をそらす。
「ん?どうしました?」
「なんでもないわ。」
「そうですか?」
ミカは何か気がついているのかもしれないけれど、その後は何も聞かなかったので、ほっと胸を撫で下ろす。
なんだかいけない事をしていた気分だわ。
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