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故郷と集結する同志
新しい故郷
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香港を出発して大体1週間が経った。潜水艦の蒸し暑さには大体慣れた。
今は空気の入れ替えを兼ねて、一時的に浮上している。
東京コロニーより、南へ100キロほどの海上で休息を取っている。一度に多くの距離は進めないらしい。
最大潜水時間は24時間らしい。それ以上は空気とエンジンが稼働量で過熱しすぎるらしい。
香港からここまで来るのに5日ほど掛かっている。
兵士達は冴島の元に水泳をしていた。
私は泳いでいる姿を見ながら、足先だけを海面に漬けて長旅の疲れ癒している。
程よい冷たさが、体の芯へと伝えてくれる。
イヤホンを付けて、手持ちの端末で遥か昔の日本人歌手の歌を聴いていた。
リュウは倉庫でフェンリルをパーツごとに分解していた。
修理する際に交換するパーツを調べておきたいという事らしい。
「今日は平和だ……」
空と海が重なる水平線。雲一つない空の下で私は甲板の上に大の字で寝転がった。
海鳥が数匹飛んでいた。餌でももらえるとでも思っているのだろうか。
くるくるといびつな円を描きながら、飛んでいる。
「ユリ姉、泳がない?」
私は静かに首を左右にふる。
今は静かな時間を過ごして居たい。
支給品の水を飲みながら穏やかなこの時間を。
「よーユリ。ここにいたか」
いきなり首に腕を掛けられた。水をこぼさない様にバランスを取る。
この声は間違いない。
「アスナさん久しぶり……」
私は苦笑いしながら、腕組してきた方に顔を向けた。
彼女は棒が着いた飴を口に加えていた。サラサラした短い黒髪が頬に当たってくすぐったい。
軍服を着て、胸元には東雲アスナと金属のネームプレートが彫られていた。
彼女は私達が東京コロニーの幼少期にサクラやリュウ達の面倒を見てくれていた。
今は草薙号での火器管制の管理者として搭乗しているとのことだ。
訓練を終えた兵士達が潜水艦の甲板へ上がってくる。
搭乗員には少数ながら、女性は乗っているがアスナさんのような美形は少ないような気がする。
「それで、あたしに挨拶なしとは驚いたよ。まっそれよりさ、リュウとはどうなのよ」
ニヤニヤと笑いながら、私に声を掛ける。
私は適当な返事を返した。そもそも、この人からは何かといろいろと昔からされていたような気がする。
数年経ったのに何もしていないのかとか、いろいろ聞かれた。
本当にめんどくさいとしか、思えない。
「私達はパートナーですから、恋人とかそういうのじゃありませんから!」
私は立ち上がって大声で答えた。
正気に戻ると兵士達からの視線が突き刺さる。
そひそひ小さい声で、やっぱり出来ていたのかとかお似合いだよなとか聞こえた。
この人にはついていない。
この潜水艦に乗っているとは知らなかった。
外付けのスピーカーから声が流れた。
「あーあー聞こえますか~?草薙号を動かすぞ。潜水はしないが海水浴している連中は甲板に乗っておけよ?」
ハジメさんの声だ。半分浮上した状態で航行するという
「あたしは中に戻るけど、どうする?」
私は首を横に振った。まだ波風に当たっていたい。
彼女はそっかと言って中へ戻っていった。
数人の兵士は中に戻り、残りは後部座っていた。数分後には潜水艦は加速を始めた。
2時間後には陸地と崩れ落ちている巨大な外壁が見えてきた。
私達の故郷、東京コロニーの残骸。
ほとんどの機能は戦争によって失われたが、最低限度のライフラインは復興させたという。
神羅の駐在軍は残党を殲滅したのち撤退した。
ここまで破壊されたら、脅威はないと判断されたのだろう。
小さい島に近づくと扉が見えてくると、潜水艦は発行信号を発するとコンクリートの門が開く。
ここは横須賀基地。
数百年前の自衛隊と呼ばれる自己防衛軍が作った施設をこの潜水艦の基地として利用している。
基地と言っても補給用のコンテナと整備施設があるだけに見えるが、地下には秘密裏に購入した武装を隠している。
開いた扉の先に艦体がすべて入ると自動で閉じた。
潜水艦は停止して着岸した。作業員が出てきて整備と点検を始めた。
私は岸へ飛び降りると、大きく背伸びをした。
貨物部分が開いて内部に置いてあった荷物と私達のトレーラーを降ろし始めた。
「ボロボロになったと聞いたぞ。今度はどんな無茶をしたんだ?」
独特の酒焼けした声。この声はフェンリルの制作者の声だ。
「井沢さん、久しぶり……」
作業着でゴーグルを首から下げている。
そして、いろいろな工具がはみ出たバックを腰からぶら下げている。
前頭部は太陽の光を照り返している。残っている髪の毛は真っ白だ。
この人の腕は一流だが、戦い方や操作にあれこれ言われて苦手だ。
「そんなところだ。師匠しか直せないと思ってな」
貨物室の扉から飛び降りてきた。
貨物室にはきれいにパーツごとに分けられ、丸裸にされたフェンリルがいた。
クレーン車で降ろされると奥のガレージへと運ばれていく。
リュウが井沢さんに近づくと頭を叩かれた。
「いてっ!なにすんだよ!」
「俺を師匠と呼ぶなら、きちんと敬語を使えと言っているだろ。このバカ弟子が!」
リュウはめんどくさそうに頭を掻きながらしばらく説教をされていた。
そのあとは、奥のガレージへと姿を消した。
詳しく説明をした後にフェンリルの修理を始めるのだろう。
「ユリ姉、こっちこっち」
大きなバックを背負ったサクラが、私の元へ走ってきた。
スナイパーライフルのバレルが顔をのぞかせていた。
「しばらく暮らす家にいこっ。案内するよ」
私は頷いてサクラの後ろを歩いていく。
私とリュウの荷物は後から送ってくれるという。
コンテナだらけの基地の中を進むと、下へと続くトンネルの中へと進む。
構造は三台のトラックが横に並べる事が出来るほど広い。
両端には歩道があり、ガードレールが車道を分け隔てている。
一定間隔ごとにオレンジの灯が灰色の地面を照らしている。
「私達の実家は焼けちゃってるから……隊長とハジメ艦長にお願いして家を用意してもらったんだ」
私達の家、孤児院の事だ。サクラと私は孤児院で育った。
だから、親の顔は知らない。
リュウ達ともそこで知り合った。
運営していたおばさんたちはどうなったのだろうか。
「ふーん。あっこんな風になったんだ」
トンネルを抜けると人達が行き交う通路。
ここは去年まではまだ瓦礫の山で、片付けと住居の建設に追われていた。
今では簡単なテントで商店や診療所が出来ている。
そんな人の中を針で縫うように進む。
「ユリ姉が戦場を走り抜けている間に色々変わったからね」
輸送トラックから小型バイクまでいろいろ集まった駐車場へ向かう。
レンタカーとしてのビジネスか。
確かにある程度立て直しているとはいえ、人が住んでいるが廃墟とほどんど変わらない。
人の足となる車の貸し出しは繁盛してる。
その証拠に受付には行列ができていた。
サクラは近くのスタッフに声を掛けて、6人乗りのバンを指さした。
「いいの?私達は並ばなくて」
「顔パスって感じかな。私達がスフィアとか光鉱を運んできているからね」
私はふーんと興味なさそうに聞こえる返事で返した。
てっきり、戦争に備えて武器とかばかり集めているとばかり思っていた。
スタッフが車のキーを持ってきて、サクラに渡した。
「少し遠いけど、広い家だよ。さあ乗って」
サクラが運転席に乗ってキーを挿して回す。
フェンリルと比べてかなり静かなエンジン音だ。
私は助手席側のドアを開けて、中に乗り込む。
安全装置のエアークッションの部分は無しで窓を開閉するスイッチは潰れていた。
黒のガムテープで補強された座席に座る。
乗り心地は最悪だ。
「じゃっ、動かすね」
サクラはゆっくりとアクセルを踏んで、加速させた。
あっという間に繁華外を抜けて、郊外へと進んだ。
右側には木々が生い茂り、田畑が並んでいた。人々が工具を持って作業をしている。
東京コロニーの自動栽培施設が無くなったからしょうがないか。
右側には広く青い揺れ、白い波を立てて動く大地、大海原が広がっている。
ここは私が知っている世界とはまるで違う。
血も硝煙の匂いもしない。平和という意味を象徴しているようだった。
銃声の代わりに聞こえるのは蝉の鳴き声。
異世界に来た気分だった。
「どう?東京コロニー襲撃からここまで復活したんだよ」
片手でハンドルを握って、窓に頬杖をして私に話しかけた。
「正直、こんな穏やかな世界が戦闘後の戦場以外は知らなかったよ」
窓を開けると夏独特の湿気と熱さが流れ込んでくる。
香港とそんなに変わらない気候かも。
海外線沿いに一つの家に到着した。ブレーキ音を鳴らして車が停止する。
サクラと同じタイミングで車を降りた。
コンクリートで出来た二階建ての家。横にはガレージがあり、フェンリルを置いておくにはちょうどいいかな。
外壁のコンクリートは所々、ひび割れて蔓草が生えている。
紫と白の混ざった花が咲いていた。朝顔が私達をみていた。
「リュウ兄も後で来るよ。それまで私達は掃除だね」
サクラは荷物を持って玄関を開けた。
中はフローリングで埃で白い廊下が伸びていた。
廊下の一番奥には階段がある。部屋はリビングとか寝室を含めて6室だ。
和洋折衷の作りで、玄関の右隣りの部屋は和室。左側はフローリングのリビングだ。
「わっ、埃まみれ……電気製品はもう使えるみたいだね」
サクラは電気をつけて、廊下がちかちかと点滅した白い球で明るくなる。
壁を見るとゆうととあきらとひらがなで文字と線が書かれている。
よく見ると、ここの家で生活していた家族の軌跡が残っていた。
壁の落書き、部屋の扉傷、壁の弾痕周りの薄い赤黒いシミ。
しばらくお世話になっております。
私は心でつぶやいた。
今は空気の入れ替えを兼ねて、一時的に浮上している。
東京コロニーより、南へ100キロほどの海上で休息を取っている。一度に多くの距離は進めないらしい。
最大潜水時間は24時間らしい。それ以上は空気とエンジンが稼働量で過熱しすぎるらしい。
香港からここまで来るのに5日ほど掛かっている。
兵士達は冴島の元に水泳をしていた。
私は泳いでいる姿を見ながら、足先だけを海面に漬けて長旅の疲れ癒している。
程よい冷たさが、体の芯へと伝えてくれる。
イヤホンを付けて、手持ちの端末で遥か昔の日本人歌手の歌を聴いていた。
リュウは倉庫でフェンリルをパーツごとに分解していた。
修理する際に交換するパーツを調べておきたいという事らしい。
「今日は平和だ……」
空と海が重なる水平線。雲一つない空の下で私は甲板の上に大の字で寝転がった。
海鳥が数匹飛んでいた。餌でももらえるとでも思っているのだろうか。
くるくるといびつな円を描きながら、飛んでいる。
「ユリ姉、泳がない?」
私は静かに首を左右にふる。
今は静かな時間を過ごして居たい。
支給品の水を飲みながら穏やかなこの時間を。
「よーユリ。ここにいたか」
いきなり首に腕を掛けられた。水をこぼさない様にバランスを取る。
この声は間違いない。
「アスナさん久しぶり……」
私は苦笑いしながら、腕組してきた方に顔を向けた。
彼女は棒が着いた飴を口に加えていた。サラサラした短い黒髪が頬に当たってくすぐったい。
軍服を着て、胸元には東雲アスナと金属のネームプレートが彫られていた。
彼女は私達が東京コロニーの幼少期にサクラやリュウ達の面倒を見てくれていた。
今は草薙号での火器管制の管理者として搭乗しているとのことだ。
訓練を終えた兵士達が潜水艦の甲板へ上がってくる。
搭乗員には少数ながら、女性は乗っているがアスナさんのような美形は少ないような気がする。
「それで、あたしに挨拶なしとは驚いたよ。まっそれよりさ、リュウとはどうなのよ」
ニヤニヤと笑いながら、私に声を掛ける。
私は適当な返事を返した。そもそも、この人からは何かといろいろと昔からされていたような気がする。
数年経ったのに何もしていないのかとか、いろいろ聞かれた。
本当にめんどくさいとしか、思えない。
「私達はパートナーですから、恋人とかそういうのじゃありませんから!」
私は立ち上がって大声で答えた。
正気に戻ると兵士達からの視線が突き刺さる。
そひそひ小さい声で、やっぱり出来ていたのかとかお似合いだよなとか聞こえた。
この人にはついていない。
この潜水艦に乗っているとは知らなかった。
外付けのスピーカーから声が流れた。
「あーあー聞こえますか~?草薙号を動かすぞ。潜水はしないが海水浴している連中は甲板に乗っておけよ?」
ハジメさんの声だ。半分浮上した状態で航行するという
「あたしは中に戻るけど、どうする?」
私は首を横に振った。まだ波風に当たっていたい。
彼女はそっかと言って中へ戻っていった。
数人の兵士は中に戻り、残りは後部座っていた。数分後には潜水艦は加速を始めた。
2時間後には陸地と崩れ落ちている巨大な外壁が見えてきた。
私達の故郷、東京コロニーの残骸。
ほとんどの機能は戦争によって失われたが、最低限度のライフラインは復興させたという。
神羅の駐在軍は残党を殲滅したのち撤退した。
ここまで破壊されたら、脅威はないと判断されたのだろう。
小さい島に近づくと扉が見えてくると、潜水艦は発行信号を発するとコンクリートの門が開く。
ここは横須賀基地。
数百年前の自衛隊と呼ばれる自己防衛軍が作った施設をこの潜水艦の基地として利用している。
基地と言っても補給用のコンテナと整備施設があるだけに見えるが、地下には秘密裏に購入した武装を隠している。
開いた扉の先に艦体がすべて入ると自動で閉じた。
潜水艦は停止して着岸した。作業員が出てきて整備と点検を始めた。
私は岸へ飛び降りると、大きく背伸びをした。
貨物部分が開いて内部に置いてあった荷物と私達のトレーラーを降ろし始めた。
「ボロボロになったと聞いたぞ。今度はどんな無茶をしたんだ?」
独特の酒焼けした声。この声はフェンリルの制作者の声だ。
「井沢さん、久しぶり……」
作業着でゴーグルを首から下げている。
そして、いろいろな工具がはみ出たバックを腰からぶら下げている。
前頭部は太陽の光を照り返している。残っている髪の毛は真っ白だ。
この人の腕は一流だが、戦い方や操作にあれこれ言われて苦手だ。
「そんなところだ。師匠しか直せないと思ってな」
貨物室の扉から飛び降りてきた。
貨物室にはきれいにパーツごとに分けられ、丸裸にされたフェンリルがいた。
クレーン車で降ろされると奥のガレージへと運ばれていく。
リュウが井沢さんに近づくと頭を叩かれた。
「いてっ!なにすんだよ!」
「俺を師匠と呼ぶなら、きちんと敬語を使えと言っているだろ。このバカ弟子が!」
リュウはめんどくさそうに頭を掻きながらしばらく説教をされていた。
そのあとは、奥のガレージへと姿を消した。
詳しく説明をした後にフェンリルの修理を始めるのだろう。
「ユリ姉、こっちこっち」
大きなバックを背負ったサクラが、私の元へ走ってきた。
スナイパーライフルのバレルが顔をのぞかせていた。
「しばらく暮らす家にいこっ。案内するよ」
私は頷いてサクラの後ろを歩いていく。
私とリュウの荷物は後から送ってくれるという。
コンテナだらけの基地の中を進むと、下へと続くトンネルの中へと進む。
構造は三台のトラックが横に並べる事が出来るほど広い。
両端には歩道があり、ガードレールが車道を分け隔てている。
一定間隔ごとにオレンジの灯が灰色の地面を照らしている。
「私達の実家は焼けちゃってるから……隊長とハジメ艦長にお願いして家を用意してもらったんだ」
私達の家、孤児院の事だ。サクラと私は孤児院で育った。
だから、親の顔は知らない。
リュウ達ともそこで知り合った。
運営していたおばさんたちはどうなったのだろうか。
「ふーん。あっこんな風になったんだ」
トンネルを抜けると人達が行き交う通路。
ここは去年まではまだ瓦礫の山で、片付けと住居の建設に追われていた。
今では簡単なテントで商店や診療所が出来ている。
そんな人の中を針で縫うように進む。
「ユリ姉が戦場を走り抜けている間に色々変わったからね」
輸送トラックから小型バイクまでいろいろ集まった駐車場へ向かう。
レンタカーとしてのビジネスか。
確かにある程度立て直しているとはいえ、人が住んでいるが廃墟とほどんど変わらない。
人の足となる車の貸し出しは繁盛してる。
その証拠に受付には行列ができていた。
サクラは近くのスタッフに声を掛けて、6人乗りのバンを指さした。
「いいの?私達は並ばなくて」
「顔パスって感じかな。私達がスフィアとか光鉱を運んできているからね」
私はふーんと興味なさそうに聞こえる返事で返した。
てっきり、戦争に備えて武器とかばかり集めているとばかり思っていた。
スタッフが車のキーを持ってきて、サクラに渡した。
「少し遠いけど、広い家だよ。さあ乗って」
サクラが運転席に乗ってキーを挿して回す。
フェンリルと比べてかなり静かなエンジン音だ。
私は助手席側のドアを開けて、中に乗り込む。
安全装置のエアークッションの部分は無しで窓を開閉するスイッチは潰れていた。
黒のガムテープで補強された座席に座る。
乗り心地は最悪だ。
「じゃっ、動かすね」
サクラはゆっくりとアクセルを踏んで、加速させた。
あっという間に繁華外を抜けて、郊外へと進んだ。
右側には木々が生い茂り、田畑が並んでいた。人々が工具を持って作業をしている。
東京コロニーの自動栽培施設が無くなったからしょうがないか。
右側には広く青い揺れ、白い波を立てて動く大地、大海原が広がっている。
ここは私が知っている世界とはまるで違う。
血も硝煙の匂いもしない。平和という意味を象徴しているようだった。
銃声の代わりに聞こえるのは蝉の鳴き声。
異世界に来た気分だった。
「どう?東京コロニー襲撃からここまで復活したんだよ」
片手でハンドルを握って、窓に頬杖をして私に話しかけた。
「正直、こんな穏やかな世界が戦闘後の戦場以外は知らなかったよ」
窓を開けると夏独特の湿気と熱さが流れ込んでくる。
香港とそんなに変わらない気候かも。
海外線沿いに一つの家に到着した。ブレーキ音を鳴らして車が停止する。
サクラと同じタイミングで車を降りた。
コンクリートで出来た二階建ての家。横にはガレージがあり、フェンリルを置いておくにはちょうどいいかな。
外壁のコンクリートは所々、ひび割れて蔓草が生えている。
紫と白の混ざった花が咲いていた。朝顔が私達をみていた。
「リュウ兄も後で来るよ。それまで私達は掃除だね」
サクラは荷物を持って玄関を開けた。
中はフローリングで埃で白い廊下が伸びていた。
廊下の一番奥には階段がある。部屋はリビングとか寝室を含めて6室だ。
和洋折衷の作りで、玄関の右隣りの部屋は和室。左側はフローリングのリビングだ。
「わっ、埃まみれ……電気製品はもう使えるみたいだね」
サクラは電気をつけて、廊下がちかちかと点滅した白い球で明るくなる。
壁を見るとゆうととあきらとひらがなで文字と線が書かれている。
よく見ると、ここの家で生活していた家族の軌跡が残っていた。
壁の落書き、部屋の扉傷、壁の弾痕周りの薄い赤黒いシミ。
しばらくお世話になっております。
私は心でつぶやいた。
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