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1章「運命の幕開け」
5話 男爵嬢の領地偵察
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――レーヴェ領。
オーカ国内で現在最強の冒険者と謳われているお父様が所有する領地は広大だった。
領地には領民が拓いた小麦畑や果樹園が広がっている。穏やかで美しい領地だ。
さらにお父様は冒険者クラン「ドラーグ」のマスター。クランメンバーもこのレーヴェ領の中に住んでおり、領地を守ってくれている。
「すごい、たくさんリンゴがなってる!」
「今が収穫期だからね。レーヴェ領で採れるリンゴは美味しいと結構有名なんだよ」
リオンと手をつなぎながら、果樹園の近くを歩いていると、たくさんの木々に真っ赤なリンゴがたくさんなっていた。
「リラお嬢様! お体良くなったんですね!」
「これ、今日採れたリンゴです。ノエル様と一緒に食べてください!」
「ありがとう…!」
リオンと農園の近くを歩いていると農作業中の領民さんたちが声をかけてくれた。
わたしが寝込んでいたことは領地内に知れわたっていたらしい。農園だけではない。行く先々で通りがかりの領民さんがお見舞いの品をくれた。
お陰でわたしでは持ちきれない量の果物や野菜をリオンが持ってくれている。
「こんなにもらっていいのかな?」
「皆、リラを心配していたんだよ。ノエルは領民にとても好かれている領主だからね」
お父様を誉められてわたしは嬉しくなって笑った。
ノエルお父様は信頼が厚い、よき領主のようだ。
強い冒険者、頼れる領主――まさにわたしの理想の冒険者の姿だ。
「やっぱり悪い領主さんとかもいるの?」
「……まぁ、いない、とはいいきれないね」
リオンは苦笑を浮かべて誤魔化すようにわたしの頭に手を乗せた。
あ、これは確実に悪い領主を知っている顔だ。
でも、自分の父がそのような悪い人ではなくて本当によかった。
見送ってくれる領民たちに手を振りながら、わたしたちは別の場所へ移動した。
「ねぇ、リオン。ここは?」
「ここは工房区だよ。装備品を作ったり、錬金とかの工房があるんだ」
「錬金工房!?」
わたしはぱっと目を輝かせた。
そう。ここは剣と魔法のファンタジー世界。冒険者がいるのであれば武器工房なども存在する。
おまけに巨大なクランであれば自分達の領地内に工房があってもおかしくないだろう。
前世の私がやっていたオンラインゲーム「ドラゴンズ・サーガ」にも領地経営システムがあった。
なにもない場所から地道に領民を増やし、施設を増やし、屋敷を増築し……立派な領地を作り上げた。だが、もうあのゲームをすることは叶わない。
だけど、今世なら――。
(早く冒険者になって領地経営したい……)
いつかリアルで領地経営をしてみたい、とリラは拳を握りしめ固く誓うのであった。
「リラ……疲れたならそろそろ屋敷に戻ろうか?」
黙って自問自答を繰り返しているわたしを見て、リオンは心配そうに声をかける。
大体領地の主要なところは見終わっただろうと、頷こうとしたときわたしはふとあるものを見つける。
「ねぇ、リオンあれはなぁに?」
工房区の奥に見える、大きな格子戸で仕切られた場所。
まるで闘技場の入り口のようにも見えるが。
「あれは訓練場。クランメンバーたちが鍛錬している場所だよ」
その言葉を聞いた瞬間、わたしはぱっと目を輝かせた。
「見てみたい!」
「幼い女の子が見るには楽しいものではないとおもうけど」
苦笑を浮かべながらどうにか話題を逸らそうとするリオンの手をぎゅっと握った。
あの先にはたくさんの冒険者たちがいる。彼らが武器を持っているところが見たかった。
この世界にはどんなジョブがあって、スキルがあって、どんな風に戦っているのが見たくて見たくてたまらない。
「リオン! おねがい!」
「……しかた、ないなぁ。じゃあちょっとだけだよ?」
そうしてリオンは呆れたように頷いて、訓練場へ向かう扉を開けてくれた。
オーカ国内で現在最強の冒険者と謳われているお父様が所有する領地は広大だった。
領地には領民が拓いた小麦畑や果樹園が広がっている。穏やかで美しい領地だ。
さらにお父様は冒険者クラン「ドラーグ」のマスター。クランメンバーもこのレーヴェ領の中に住んでおり、領地を守ってくれている。
「すごい、たくさんリンゴがなってる!」
「今が収穫期だからね。レーヴェ領で採れるリンゴは美味しいと結構有名なんだよ」
リオンと手をつなぎながら、果樹園の近くを歩いていると、たくさんの木々に真っ赤なリンゴがたくさんなっていた。
「リラお嬢様! お体良くなったんですね!」
「これ、今日採れたリンゴです。ノエル様と一緒に食べてください!」
「ありがとう…!」
リオンと農園の近くを歩いていると農作業中の領民さんたちが声をかけてくれた。
わたしが寝込んでいたことは領地内に知れわたっていたらしい。農園だけではない。行く先々で通りがかりの領民さんがお見舞いの品をくれた。
お陰でわたしでは持ちきれない量の果物や野菜をリオンが持ってくれている。
「こんなにもらっていいのかな?」
「皆、リラを心配していたんだよ。ノエルは領民にとても好かれている領主だからね」
お父様を誉められてわたしは嬉しくなって笑った。
ノエルお父様は信頼が厚い、よき領主のようだ。
強い冒険者、頼れる領主――まさにわたしの理想の冒険者の姿だ。
「やっぱり悪い領主さんとかもいるの?」
「……まぁ、いない、とはいいきれないね」
リオンは苦笑を浮かべて誤魔化すようにわたしの頭に手を乗せた。
あ、これは確実に悪い領主を知っている顔だ。
でも、自分の父がそのような悪い人ではなくて本当によかった。
見送ってくれる領民たちに手を振りながら、わたしたちは別の場所へ移動した。
「ねぇ、リオン。ここは?」
「ここは工房区だよ。装備品を作ったり、錬金とかの工房があるんだ」
「錬金工房!?」
わたしはぱっと目を輝かせた。
そう。ここは剣と魔法のファンタジー世界。冒険者がいるのであれば武器工房なども存在する。
おまけに巨大なクランであれば自分達の領地内に工房があってもおかしくないだろう。
前世の私がやっていたオンラインゲーム「ドラゴンズ・サーガ」にも領地経営システムがあった。
なにもない場所から地道に領民を増やし、施設を増やし、屋敷を増築し……立派な領地を作り上げた。だが、もうあのゲームをすることは叶わない。
だけど、今世なら――。
(早く冒険者になって領地経営したい……)
いつかリアルで領地経営をしてみたい、とリラは拳を握りしめ固く誓うのであった。
「リラ……疲れたならそろそろ屋敷に戻ろうか?」
黙って自問自答を繰り返しているわたしを見て、リオンは心配そうに声をかける。
大体領地の主要なところは見終わっただろうと、頷こうとしたときわたしはふとあるものを見つける。
「ねぇ、リオンあれはなぁに?」
工房区の奥に見える、大きな格子戸で仕切られた場所。
まるで闘技場の入り口のようにも見えるが。
「あれは訓練場。クランメンバーたちが鍛錬している場所だよ」
その言葉を聞いた瞬間、わたしはぱっと目を輝かせた。
「見てみたい!」
「幼い女の子が見るには楽しいものではないとおもうけど」
苦笑を浮かべながらどうにか話題を逸らそうとするリオンの手をぎゅっと握った。
あの先にはたくさんの冒険者たちがいる。彼らが武器を持っているところが見たかった。
この世界にはどんなジョブがあって、スキルがあって、どんな風に戦っているのが見たくて見たくてたまらない。
「リオン! おねがい!」
「……しかた、ないなぁ。じゃあちょっとだけだよ?」
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