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14、しばしの別れと新たな出会い
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雪が路肩に残る寒い日、和樹がおばあさんと一緒に神社にきた。和樹は退院後はおばあさんの家に戻ったが、父親が周りをうろつくようになったのと周りの目を気にして遠くへ引っ越すことになったのだ。
「あのね、ぼく、大きくなったらまたここに帰ってくるから。神様はずっとここにいるでしょ?」
和樹の言葉に神様は寂しそうにうなずいて優しく頭を撫でていた。
「和樹、何かあったら頼っていいからな?」
「うん。ありがとう」
俺は和樹にスマホの番号をメモって渡した。
和樹とおばあさんが帰って行っても神様は鳥居の上でずっと和樹たちが歩いていたほうを眺めていた。
和樹が引っ越してから、神様は俺の周りにいることが多くなった。隆幸さんの住居や社務所の中には入ってこないが、境内にいる時はだいたい視界に入る位置にいた。俺はきっと寂しいんだろうと思って放っておいた。
そんなある日、いつものように境内の掃除をしていると、社殿の上から何やら言い争う声が聞こえた。俺が上を見ると、そこには神様がもうひとりいた。
長い銀髪の綺麗な神様は、背中に大きな白い羽根があった。
『お!きみがこいつの気に入りかい?』
見上げていた俺に気づいた銀髪の神様がふわりと俺の前に舞い降りる。それに続いて神社の神様も舞い降りてきた。
『なるほど。私たちを見る良い目を持っているな』
『これに触れるな!関わるな!』
俺の顔をしげしげと見る銀髪の神様に神社の神様が怒鳴る。俺が混乱して返事もできずにいると、銀髪の神様はクスクス笑った。
『驚かせたか?昔からこいつとは顔見知りでね。珍しく気に入りの人間がいるらしいと風の噂に聞いて様子を見に来たのさ』
「はあ…」
俺が曖昧にうなずくと、神社の神様が俺の前に立って銀髪の神様から俺を隠した。
『もう良いだろう!さっさの帰れ!』
『おぬしがそこまで声を荒らげるとは、よほどに気に入りとみえる』
銀髪の神様が楽しげに笑いながら袖で口元を隠す。その様子に神社の神様はますます不機嫌そうな顔になった。
『まあ良い。今日のところはこれで帰ろう。気に入りの顔も見れたしの。次は美味い酒でも持ってくるとしよう』
銀髪の神様はそう言うと白い羽根をふわりと羽ばたかせて舞い上がり、あっという間に飛んでいってしまった。
「なんだったんだ?」
何がなんだかわからないで呆然と呟くと、神社の神様がすまなそうに俺の頭を撫でた。
『すまぬ。驚かせたな。あれは確かに昔からの知己だが、どうにも悪戯が過ぎていかん。また来ると言うていたが、今度は驚かせぬよう釘を刺しておく』
「はあ。神様にも友達いるんですね」
あれだけ怒っても来たら追い返すとは言わない辺り、神様も嫌いなわけじゃないんだろうと思って言うと、神様はかなり驚いた顔をしていた。
『友達?あれが?』
「あれ、違いました?まあ、どこまでが知り合いでどこからが友達かって聞かれたら俺も困るけど」
友達の定義は曖昧だと苦笑すると、神様は『なるほどな』と言って笑った。
きっと長い年月生きてきた神様が一人ぼっちじゃなかったと知れて、俺は少しだか安心した。
「あのね、ぼく、大きくなったらまたここに帰ってくるから。神様はずっとここにいるでしょ?」
和樹の言葉に神様は寂しそうにうなずいて優しく頭を撫でていた。
「和樹、何かあったら頼っていいからな?」
「うん。ありがとう」
俺は和樹にスマホの番号をメモって渡した。
和樹とおばあさんが帰って行っても神様は鳥居の上でずっと和樹たちが歩いていたほうを眺めていた。
和樹が引っ越してから、神様は俺の周りにいることが多くなった。隆幸さんの住居や社務所の中には入ってこないが、境内にいる時はだいたい視界に入る位置にいた。俺はきっと寂しいんだろうと思って放っておいた。
そんなある日、いつものように境内の掃除をしていると、社殿の上から何やら言い争う声が聞こえた。俺が上を見ると、そこには神様がもうひとりいた。
長い銀髪の綺麗な神様は、背中に大きな白い羽根があった。
『お!きみがこいつの気に入りかい?』
見上げていた俺に気づいた銀髪の神様がふわりと俺の前に舞い降りる。それに続いて神社の神様も舞い降りてきた。
『なるほど。私たちを見る良い目を持っているな』
『これに触れるな!関わるな!』
俺の顔をしげしげと見る銀髪の神様に神社の神様が怒鳴る。俺が混乱して返事もできずにいると、銀髪の神様はクスクス笑った。
『驚かせたか?昔からこいつとは顔見知りでね。珍しく気に入りの人間がいるらしいと風の噂に聞いて様子を見に来たのさ』
「はあ…」
俺が曖昧にうなずくと、神社の神様が俺の前に立って銀髪の神様から俺を隠した。
『もう良いだろう!さっさの帰れ!』
『おぬしがそこまで声を荒らげるとは、よほどに気に入りとみえる』
銀髪の神様が楽しげに笑いながら袖で口元を隠す。その様子に神社の神様はますます不機嫌そうな顔になった。
『まあ良い。今日のところはこれで帰ろう。気に入りの顔も見れたしの。次は美味い酒でも持ってくるとしよう』
銀髪の神様はそう言うと白い羽根をふわりと羽ばたかせて舞い上がり、あっという間に飛んでいってしまった。
「なんだったんだ?」
何がなんだかわからないで呆然と呟くと、神社の神様がすまなそうに俺の頭を撫でた。
『すまぬ。驚かせたな。あれは確かに昔からの知己だが、どうにも悪戯が過ぎていかん。また来ると言うていたが、今度は驚かせぬよう釘を刺しておく』
「はあ。神様にも友達いるんですね」
あれだけ怒っても来たら追い返すとは言わない辺り、神様も嫌いなわけじゃないんだろうと思って言うと、神様はかなり驚いた顔をしていた。
『友達?あれが?』
「あれ、違いました?まあ、どこまでが知り合いでどこからが友達かって聞かれたら俺も困るけど」
友達の定義は曖昧だと苦笑すると、神様は『なるほどな』と言って笑った。
きっと長い年月生きてきた神様が一人ぼっちじゃなかったと知れて、俺は少しだか安心した。
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