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11、大晦日

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 大晦日。この日は朝から大忙しだった。といっても隆幸さんや巫女さんたちが忙しそうだっただけで、神職でもない俺の仕事はほぼいつも通りだったが。
 日が落ちるとポツポツと参拝者が増え始めた。
「冬馬くん、お疲れさま」
日付が変わるのを待っている人たちを社務所のそばで眺めていると、隆幸さんが温かい缶コーヒーを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「今年は色々あった1年だったけど、きみと出会えてよかったよ。来年もよろしくね?」
「っ、こっちこそ、ありがとうございます。また、よろしくお願いします」
突然言われて俺はどぎまぎしながら頭を下げた。
「日付が変わるともっと人がくるよ。落ち着くまで少し大変だけど頑張ってね」
「はい」
俺がうなずくと隆幸さんはいそいそと社殿に戻っていった。正月というのはやはり特別なようで、やることが色々あるのだそうだ。
 神様はいつものようにように社殿の屋根に座ってにこにこしていたが、着ているものはいつもより豪華でキラキラしているように見えた。神様にも正月用の服があるのかと驚いたのは内緒だ。
 ゴーン!
 近くの寺から除夜の鐘が聞こえてくる。空からは雪がチラチラと降り始め、ますます冷え込んでくる。新年と同時に振る舞う甘酒を社務所の横に準備していると「お兄ちゃーん!」と覚えのある声が聞こえてきた。
「和樹。おばあさんと来たのか」
「うん!」
そばに駆け寄ってきた和樹の頭を撫でると、おばあさんが少し遅れてやってきて頭を下げた。俺もそれに頭を下げる。和樹は笑顔で元気そうに見えた。
「そろそろ年が明ける。初詣しておいで。そしたら甘酒あげるから」
「わかった!」
和樹はうなずくとおばあさんの手を引いて参拝の列に並んだ。
「10!9!8!7!」
参拝の列から自然とカウントダウンが始まった。
「3!2!1!ハッピーニューイヤー!」
年が明けると歓声と共に参拝の列が動き出す。俺は参拝を終えた人たちに甘酒が入った紙コップを渡していった。
 和樹とおばあさんにも甘酒を渡す。2人は温かい甘酒を美味しそうに飲んでいた。

 明け方、やっと参拝者が落ち着いた頃、俺もそっと初詣をすませた。お賽銭を入れて隆幸さんに前教えてもらったように二礼二拍手一礼する。目を閉じて頭を下げながら俺の周りの人たちの健康を祈った。
 目を開けると目の前にキラキラと光の粒が見える。不思議に思って上を見ると、その光の粒は神様の手から出ていた。
『そたなに祝福を』
優しく微笑んだ神様の言葉に俺は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「今年もよろしくお願いします」
そう言うと神様は嬉しそうに笑っていた。
 参拝を終えて社務所に戻ろうとしたとき、ちょうど朝日が昇ってきた。
「冬馬くん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「あ、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
綺麗な朝日に目を奪われていたから隆幸さんに声をかけれて一瞬反応が遅れる。隆幸さんはそんな俺を見るとにこりと笑った。
「神様から祝福をいただいたんだね」
その言葉に俺が首を傾げると、隆幸さんは「気づいてないの?」と笑った。
「冬馬くんの周り、キラキラ光ってるよ?」
「あ、そういえば参拝したときなんかキラキラしたのかけられました」
「それが神様の祝福。お守りみたいなものだよ」
「へえ。なら、今年も良いことあるといいな」
俺が小さく笑って言うと、隆幸さんも「そうだね」と言って笑っていた。
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