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繋いで、心 4

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 レティーシャとレオンが住んでいた家の中、2人は作戦を立てる事にした。


「‥‥‥で?どうすんだよ。」
「まずは、公爵邸を潰してしまいましょう。
 どうせ当主は居ませんし!」
「なんだ?皆殺しか?今の俺にさせたら全滅させるぞ?」
「ははっ」
「ははっ、じゃねえーよ。まず王妃はどうして欲しいんだよ。探し出して運良く見つけたとして、城に入れるのか?
 国王はどうしてんだよ。公爵家に手を出したら国王だって黙ってねぇだろ?」

「もう一思いに‥‥。」
「待て待て待て!お前‥‥ロスウェル、いいか?俺達は殺し屋じゃねぇんだ。たくっ‥‥王妃と連絡取れねぇのか?

 そのままじゃ埒があかねぇ。むしろ怖えよお前。」
「殿下にそう言われるなんて侵害です。‥‥1番の殺し屋みたいな事しておいて‥‥。」
「否定はしねぇけど、とりあえずレオンの命を確保したのち、王妃は国王をどうするのかに寄って動きは変わるだろ。

 俺の好きにしていいなら俺はただ王女の悪事を明かして責任取らせて首を切るがな。」

「ほらっ、やっぱり、殿下は素質ありますよ。」
「やかましいわ!」

 ロスウェルは、パチンと指を鳴らした。
 すると、ロスウェルの両手には水晶玉が現れた。

「殿下、王妃様と対策を練りましょう。どこまで王国に干渉できるか、国王はこの事をちゃんと知っているのか。

 聞かなきゃならない事は山程あります‥。」

 ロスウェルは瞳を閉じた。
 ブツブツと何か唱えると、ロスウェルの身体が青白く光った。その姿をぼーっと見ていた。


 次第に水晶玉にレティーシャ王妃の姿が現れた。

「よお、レティーシャ・ポリセイオ。」
「テオドール皇太子殿下にご挨拶申し上げます‥。」
 悲痛な面持ちで挨拶を返した。

 顔を見るのは、先日以来だ。
 まだ、あの時の怒りは静まっていない‥‥

 だが、この人の願いは俺に託された‥‥。

 絶対に‥‥助けなければならない‥‥。



 テオドールはだらけていた身体を正して王妃と向き合った。

「モンターリュ公爵邸を捜索する前に、国王がこれまでのことを知っているのか聞きたい。」

「‥‥国王は‥‥ライリーのことはもちろん、知っていて王女として受け入れました。私達には子はできません。

 ですから、私が作りだした魔術師であること、‥‥不愉快な事に私の血を継いでいる子と認識して居ます‥。

 ただ、テオドール皇太子殿下の元へ行きたいという願いは知りません。」

「じゃ、国王はライカンスが連れてきた者が王妃の力を引き継げればそれでいいと言う事か?」

 レティーシャ王妃は顔を顰めた。心底憎悪しているようだ。
 テオドールはニヤリと笑った。

「じゃあ話は早いな。何をしでかすかも知らずに国王が直々に帝国に行く事を許可したのなら、片付けるのが早い。
 王妃もそれがいいだろ?俺が、国王を片付けてやろう。」

「‥‥ですが、国王にも保護魔法が掛けられています‥‥
 それはレオンが掛けたもの‥‥撃ち破ることが出来るか‥‥。」

「そうか、とりあえずそれが分かっていれば十分だ。

 あとは、王妃は‥‥その地位を降りたいか?レオンを救い出し、この地を去るつもりか?」
「それは‥‥‥‥。」

 レティーシャ王妃の迷いのある瞳に、テオドールは目を細めた。

「何年その座についていたかは知らないが、王妃になったのならばそう簡単に捨てられるものではないだろう?

 俺に撃たれた国王、王妃が男と逃避行‥‥ポリセイオの国民をどうする?これまでの政治は?国民達の生活は?


 あなたが、嫌々ながら就いたその座でも、長い間王妃として務めてきた事だろう。俺は‥‥皇太子が故に愛する女を置いてこの地へ来た。あなたはどうだ?ポリセイオを憎んでいるか?」

「‥‥っ‥‥‥国民に‥‥罪も恨みもありません‥‥‥。」

 それは、王族となった者の答えだ。
 愛しい夫を救うためについた座であっても、
 国民に情が湧かない様な人ではない。


「‥‥‥よし、王妃の気持ちは理解した。

 ならば、本当の悪を滅しよう。俺達は、公爵邸に入り
 あなたの探し物を持ってそちらに参る。

 俺はコソコソするのは好きじゃない。

 堂々と正面から行くから、あなたは宝物を渡したらすぐにあなたの大切な人に命を灯せ。わかったな?」


 テオドールの自信に満ちた顔と言葉に、レティーシャ王妃は目を見開いた。

 何故こんなにも光り輝いて見えるのか。
 何故そんなに自信に満ちているのか‥‥。


 だが、心強いという言葉では表せない程、
 希望に溢れて居た。


「俺達は、モンターリュ公爵邸へ行く。
 後は、任せておけ‥‥。きっと、うまく行く。」


「っ‥‥ありがとうっ‥‥ございっ‥ます‥‥殿下‥‥。」
「もう肩の力を抜いていろ。‥‥これまでよく耐え抜いた。

 愛する者を守るのは‥‥簡単な様で簡単じゃない。

 想いだけでは守れない‥‥。俺もよく、そう思うんだ‥。」


「うっ‥‥‥。」

 テオドールの優しい表情が胸に沁みた。
 オリヴァーに打ち明けた時、その時のオリヴァーと同じ様に、テオドールが微笑んだ。


 本当に‥‥‥取り返しのつかない事をしたのに‥‥


 話を聞いて‥‥ここまで来てくれた‥‥‥。


 こんなに優しい皇帝と皇太子など、夢物語だと思って居た。



「俺が行くまで‥‥耐えていろ‥‥レティーシャ王妃。

 俺は、探し物が得意なんだ。まぁ、偶然も、運だろう?」

 テオドールの言葉にレティーシャ王妃は涙を浮かべて微笑んだ。

「殿下‥公爵邸の見取り図を見てください‥‥。」
「ああ、ありがとう。参考にしよう。」

「はい‥‥‥どうか、レオンの心臓を‥‥‥。」
「ああ‥良い知らせをする。では、何かあればまた連絡する。それまで待っててくれ。」

「はい‥‥感謝致します‥‥皇太子殿下‥‥。」


 眩しすぎて、思いが詰まって胸が苦しかった。


 この人は、愛を知っている‥‥‥。



 羨ましがられるのも無理はない‥‥。

 あの女が執着するのも頷ける‥‥‥。



 この美しい愛は、たった1人に注がれるから輝いて見える。



 レティーシャ王妃は、地下のレオンの元へ駆けて行った。

「‥‥‥っ‥‥‥もうすぐよっ‥‥‥もうすぐ‥‥‥。」

 バタンと勢いよく開けた扉、いつもの鉄格子、
 愛する人の姿。

「‥‥レティーシャ‥?」

 鉄格子を背にして居たレオンが振り返った。
 レティーシャは、涙を流しながらレオンに駆け寄った。
 そして、2人は遮られる鉄格子の隙間から手を握った。


「どうして泣いてるの‥‥?レティーシャ‥‥。」
 少し慌てたレオンの顔を見て、レティーシャは涙を流しつつも少しだけ微笑んだ。

「愛してるわ‥‥レオンっ‥‥‥愛してるっ‥‥。」

 泣き顔と愛の言葉。レオンは驚いたが、その言葉を聞いてレティーシャへ、愛を返す。

「俺も愛している‥‥。同じ血を通わせて生まれるほどに‥‥。」


 同じ腹からこの世に産まれ落ちた。
 世間でどう思われようと関係なかった。


 自分達は、一滴の血も同じ様に通わせていたいほど‥‥

 互いを愛するために、生まれたのだと‥‥。
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