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開戦 1

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【イシニス王国へ告ぐ。そちらの提案は断固拒否する。どんな理由があろうとも、

 帝国アレキサンドライトが、イシニス王国と友好を築くことはあり得ないだろう。

 今ここに、イシニス王国へ宣戦布告する。】


 その書状は、イシニス王国に届いた。イシニスの奇襲から8日目の朝だった。

「くっ・・・皇帝め・・・・宣戦布告だとぉっ・・・・?」

 ライディン王太子はその書状をぐしゃりと握りつぶした。

「友好をっ・・・こちらから言ってるだろうがぁっ・・・・・・
 てめぇの首を撥ねる思いでなぁっ!!」
 身体が震えるほどの怒りを露わにして、その書状を破り捨てる。

「おい!!国境へ騎士団を送れ!!!全面戦争だ!!!
 必ず皇太子を打ち破り!城に押し入り皇帝の首を撥ねろ!!!!」

 従者に勢いよく告げた。


「王太子様っ・・・・・」
 従者は震えながら声を絞り出す。

「グズグズしてんじゃねぇよ!!さっさとしろ!!!!」
「そっ・・・・それがっ・・・・・」

「あぁん!?」
 ギロリと睨みつける王太子に従者は・・・・・

「すでにっ・・・・帝国アレキサンドライトの皇太子がっ・・・・・
 カドマンに送った兵士も引き連れてっ・・・王国の城門前にっ・・・・・・・」

「!!!なっ・・・・・なんだとぉっ!?」




 リリィベルとの一件があり、皇帝は速やかに動いた。
 リリィベルがテオドールと水晶玉で会話をしている間の出来事だった。

「ハリー、ロスウェルと連絡を、後でテオドールにも伝えるように・・・・・。」
 皇帝は普段の優しい目ではなく、怒りに満ちた目をしていた。
 その面持ちに、ハリーですら背筋が凍る思いだった。

「はい・・・陛下・・・。」



 リリィベルとのやり取りを終え、テオドールは、ロスウェルから告げられる。

「・・・イシニスに突入すると?」
「はい、殿下。イシニスへ宣戦布告する故、王国の王太子を捕らえる様にと。」

「・・・はっ・・・」
 皇太子はニヤッと笑った。

「・・・事が早くて助かるなぁ。」
「そして、イシニスと繋がりある人物。ブラックウォールへの奇襲。皇后陛下の毒殺未遂。
 すべての罪を明かし、処罰するとの事です。」

「では・・・疑うすべてを拘束すると・・・おっしゃったのだな?」
「はい殿下。厳しく尋問し、そのすべてを根絶やしにするとの事です。」


「そうか・・・。では皇太后陛下も・・・だな?」

 ロスウェルは少し俯いた。
「はい・・・。皇太后陛下は逃れられません。あの日記が、こちらにありますので。
 もう十分だと。おっしゃっております。」

「オリバンダーも・・・」
「はい・・・イシニスの奇襲と関わりがあると疑われるため、拘束すると。」

 テオドールは、真剣な面持ちで、ロスウェルを見つめた。
「・・・俺は必ず、イシニスを潰して、陛下に王太子を土産に持って帰るとしよう・・・。
 ロスウェル、魔術はお前が。俺は刀一本で十分だ。あとで俺の勝負服、持ってきてくれよ。」

 その言葉にロスウェルは固まった。

「・・・あ・・・・アレですか・・・・。」


 ニヤリと皇太子は笑う。

「あぁ・・・・そのアレだ。」


 イシニスの城門前、皇太子は凛々しくそこに立っていた。

「へぇ・・・初めて来たが、でけぇ国じゃねぇか。主がバカじゃなけりゃぁさぞいい国になったろうにな。」

 第二騎士団と、イシニスの兵士を連れてそこへ来た。
 イシニスの兵士たちは、皇太子の姿を見て驚いていた。

 なんとも奇妙で、防御力の低そうなその姿。
 なのに、とても威風堂々とした風貌。その姿に勝ち目など見いだせない。

「王国民には傷一つ付けないが、城は取るぞ。ロスウェルは注意していろ。」
「サーーーー!!」
 騎士団の服を着たロスウェルが嬉しそうに返事をする。
「るせぇな・・・」
 元気のいいロスウェルの声に、皇太子は耳を塞いだ。


「さぁ行くぞ。てめぇらも、気抜くんじゃねぇぞ。」
 後方に控える第二騎士団に声を掛け、その足を進めた。
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