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夢から覚めても永遠に

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 宝石店を出た時には、日が暮れていた。

「レイ?夕食はどこで食べる?」
「城に・・戻らないのです・・・ぁ、もどら・・・ないの?」

 咄嗟にでる敬語に、リリィベルは言葉を改めた。
 その様子がおかしくて、テオドールはふっと笑った。

「たまには、外で食べるのもいいだろ?確か・・・有名なところがあったような。」
 考え込むテオドールに、リリィベルは少しムッとした。


「アキ・・・どこでそんな事・・知るの?誰かと・・・行ったの?」
 リリィベルの顔を見て、テオドールはすぐにわかった。

「お前、何考えてんだ?騎士団の奴らが言ってたの思い出してるだけだ。
 俺がお前以外誰連れてくってんだよ。」

 その可愛い額に軽く指で弾いた。
「たぁ・・・」
 額を押さえてリリィベルはその膨れた頬を元に戻した。

「連れてって・・・くれるの?」

「だからそーだって。ほら、行くぞ?」
 リリィベルの手を引いてテオドールは歩き出した。


 テオドールの記憶力は発揮された。騎士団の騎士たちが女性とデートする時に使いところと
 言っていた場所。【ブリリアント】

「結構有名らしいから・・・入れるかな・・・・。」
「アキ・・・どんな雰囲気のお店なのかしら・・・。ドレスコードが・・・。」
「まー・・・なんとかなるだろ。俺、運強いから。」

 ブリリアントにたどり着き、店に入った。

 丁寧に店員が出迎えてくれる。
「二人だが、席はあるか?」
「失礼ですが、ご予約は・・・?」
「あぁ予約制か?」
「本来はご予約をいただいております。」

「そっかぁ・・・じゃあ無理だな。」
 テオドールが店を出ようとしたその時。

「お客様、予約のお客様が2時間以上来ておらず空いてる席が御座います。
 そちらにご案内いたしましょうか?」

 なるほど、商売上手だな。

「あぁ、それはありがたいな。」
「では・・・席へご案内いたします。」
 丁寧に席に通された。

 テオドールはリリィベルを見て、どや顔で言った。
「ほらな?俺は運がいいだろ?」
「ふふっ・・・そうみたいっ・・・楽しみ!」

 店内は清潔で、少し照明の暗い良い雰囲気の店だった。
 周りの客も、カップルが多かった。
 料理も文句なく美味しくて、会話も弾み、時間を忘れさせてくれる程だった。


「・・・・・・・」
 最後のデザートを食べるリリィベルに、テオドールは手を伸ばした。
「?」
 きょとんとするリリィベルに、テオドールは笑う。
「手・・・片方くれよ。触れたいんだ。」

 率直なテオドールに、リリィベルは少し辺りを見渡して、こっそり手を伸ばした。

「・・・・・・ちっさい手・・・・・・。」

 手を握り、絡める。

 俺はよく・・・こうして、手を絡めるのが好きだった。
 今も、これはやりたくなる。

「アキ・・・・まだ食べてるのに・・・。」
「ふっ・・・口ちいせぇもんな。」
「大きさは関係ないっ・・・」
「いいや?覆い被せそうだ。」


 そう言って、テオドールは口を大きく開いた。

「がおー・・・・ってな?」


 昔の俺が、騒がしく求めている。

 懐かしくて、愛しくて・・・切なくて・・・・。

 出来れば・・・・共有したい事ばかりだ・・・・・。


 この情熱を・・・



 食事をして外に出れば、人通りは少なくなっていた。

 2人は手を繋いで、街の中央にある大きな噴水にやってきた。

「わぁ・・・・大きい・・・・。」
 リリィベルはその大きな噴水を見上げた。

 夜のこの噴水はライトアップされていて、神聖な雰囲気を出している。


 どっかの王女が言っていたっけ。ここに来たいと。

 そして母が言った。この噴水には、カップルが永遠に一緒に居られるジンクスがあるのだと。


 けれど、あれは、昼間じゃダメなんだ。

「レイ・・・。あの噴水の話知ってるか?」
「え・・・?どんな話ですか・・?」

 リリィベルには話していなかったようだ。

 テオドールは、リリィベルと向き合って、その唇を塞いだ。

 噴水のライトアップはピンク色になった。

 20時になると、ライトはピンク色になる。


 その時に口付けを交わすカップルは、永遠に一緒に居られる。


「・・・・アキ・・・・」
 頬を染めてびっくりしたリリィベルの顔をみて、テオドールは笑みを浮かべる。

「・・・・これで・・・・俺たちは、もうずーっと・・・・・

 永遠に・・・一緒に居られるぞ・・・・。」


「え・・・・・?」

「この噴水のジンクスだ・・・。このピンク色の時間に口付けをすると、
永遠に一緒に居られるんだ・・・。信じるか?」


リリィベルは、クスクスと笑って、テオドールの肩に抱き着いた。

「・・・・・信じるっ!」
「ははっ・・・そっか。俺も信じるっ・・・・・・。」

抱きしめ合いながら、身体を少し揺らして笑い合った。

「レイ・・・・永遠だ・・・・・。」

「うん・・・・・。」


幸せそうに瞳を閉じたリリィベル。
テオドールは、リリィベルの頭に顎を乗せて、月を見上げた。




「ずーっと・・・・・・・一緒だ・・・・・・。リリィ・・・・・」


夢から覚めても・・・・変わらない。


生まれ変わっても・・・名前が変わっても、髪の色が変わっても・・・
俺たちは、ずっと一緒だ・・・・。


俺たちの魂は・・・・永遠に・・・・・・。
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