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魔術師のヒミツ

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「あぁぁぁ~~~ちょっと待って!
1、2、3!の3でやれよ!!!


うぅぅううううううーーーーやだ!

あぁぁあーーーーーーーやれっっ!!!!」

俺は注射的な存在が嫌いだ。好きなやつは少ないかもしれないが。

まさか剣山に刺されるなんて!

「殿下ちょっと、暴れないで下さい!
ブレますので!!」
リコーとドラに俺は手を押さえられている。

「わぁぁーってる!わかってる!さっさとしろ!!!
くそがっ!!!」

「相変わらずの口の悪さですね、殿下、みっともな」
ハリーがぼそりと呟いた。
そんなハリーを俺はギロリと睨んだ。

「お前ぇ‥‥‥‥この拷問器具を涼しい顔でやれと言うのかっ、不敬だ。死刑!!!!!」
くわっとハリーを怒鳴りつける。

「はいはい、ほら手の甲ですよ。」
ハリーはシラっと俺の指を押さえていく。


もう腕も肘も体も手首も指先も5人の魔術師に捕らえられた。これはピアの言う通り捕獲だった。


「さぁ、殿下、いきますよ?」
構えているのがロスウェルってだけでも妙な恐怖心がある。

「ロスウェルっ?ロスウェル???
わかってるな????1に2の3だぞっ?
3で打てよ?!いいな?!分かってるな?!」

「はい、殿下。さぁ、お覚悟を。」
ニコニコしてるロスウェル。


「‥‥ふぅーーーー」
俺は覚悟を決めて深呼吸した。
もう額に冷や汗も浮かんでいる。

ニコリと笑ったロスウェルと目を合わせた。
「せーので数えるぞ。せーの!」

「せーのっっ‥‥」






「1っ!」《グサッッッッ》





俺の手の甲に剣山がブッ刺さる。

「ぉぉおおーーーまーーーえぇぇーーー!!!!!」


「ほら殿下!思い掛けず打つとそうでもないでしょう?
はい、ほらほらそんなに頭に血を上げるとブシャーっと血が噴き出しますよ?」

もうその笑顔はデフォ‥‥


ゼェゼェと肩で息をした。手の甲がジンジン痛みを訴えている。顔はもう青ざめていた俺だった。そして


「‥‥‥父上、いえ‥‥陛下‥‥‥」

「あぁ、わかっている。」

陛下は言わずとも察してくれていた。
そして、冷ややかに告げる。

「ロスウェル、火炙りの刑に処す。」

「うぉふっ‥‥‥陛下まったく親バカなんだからっ!」

今度はロスウェルが青褪める番だった。

「陛下、御言葉ですがバカにも限度がありますよ!」
「御言葉すぎてるんだ。火炙りだ」

「もぉー陛下!!!これは我らと皇族の契約ですよ!
これをしないと我らとつながらないでしょう!
勘弁してくださいよ、もぉ!鬼畜!!」

「ひ、あ、ぶ、り」

「あぁぁぁ~~~~もぉ!はい!終わりです!」

ロスウェルが俺の手に刺さった剣山を抜く。

「ってぇーーーー‥‥‥なんなんだよもぉぉ!」

俺は血まみれの手を押さえたかった、
だが、まだ解放されない‥

「‥‥‥君達?」

纏まりついている魔術師。
「まだです!殿下!」
ドラが告げる。
「なんだと?!」

すると、ロスウェルが俺の手に自身の手を重ねた。

「きもっっ!!!」

考る間もなく言ってしまった。


だが、ロスウェルはそれを無視、いや自身の魔術に集中していた。

やがて重ねた手から金色の光が溢れ出す。
その不思議な光景に俺は息を呑んだ。

「‥‥‥‥‥」

小さな声でロスウェルが何か唱えているようだ。


腕を掴んでいるピアに問いかけた。
「なんて言ってるんだ?」
そうするとピアが笑った。

「聞いちゃダメって言ってます!」

「なんでだよ!!!」

いつかだったか、こんなやり取りあったな。

やがて、その金色の光は収まって行く。
そして、ロスウェルの手の甲に俺の血の跡と同じ位置に紋様が刻まれた。

「はい、これでいいですよ。これで我々はお陰様で殿下の犬です。」

「言い方なんとかなんねぇのかよ。」

あははとロスウェルが笑う。そうしてやっと俺は魔術師共から解放された。

「御苦労だったテオ、もうないからな、
あとは何かする時針で刺して血をやればいい。」

それは幼い時に見たものだ。

「こんな事してたんですね‥陛下も」
フルーが俺の手に包帯を巻いてくれていた。

「あぁ‥そしてこれは想像以上に痛いんだ。焼かれる様にな。なにより最後のあれが気持ち悪いだろう?」
真顔で陛下は言った。

「そうですね。最後気持ち悪いです。」

野郎に重ねられる手が‥‥‥

「はぁぁーー尽くし甲斐のない失礼な親子ですね!
そっくりです!」

もぉっとロスウェルは頬を膨らませていた。


そんな時、ピアが無邪気に陛下に近づいた。
「ねぇねぇ陛下ぁ!」
「どうした?ピア」
「あのね?陛下のお知らせの音変わったんだよ!」
「そうなのか?」
「そう!」
「‥今までは?」
「前皇帝陛下の音はピーピーって鳴るだけだったんだけどね!陛下のはっ」

パシッ‥と、そこでピアの口はロスウェルに塞がれた。

「ピアよ‥お喋りが過ぎるぞ?」
ニコニコ笑って誤魔化す。

「‥‥‥フルー」

「はい、陛下。」

「音は?」

フルーの代わりにドラが答えてくれた。

「ベーーー!って鳴ります。」
あっさりと、しっかりのドラは答えた。

「べーーっべーーっベーーって鳴るんだ。」
ハリーも何気なく言った。

「ほぉ‥‥‥」

「えぇ、ちょっと、なんとなく、感じるんです不敬だと言う事が」リコーが迷惑そうに言う。

「あぁ、こりゃ火炙りですね陛下、音で我々を侮辱していますね。」
俺にはかつての世界、自動車の盗難防止用セキュリティアラームの音に聞こえてた。

「そのようだ、フルー、そなたは魔術も見事だったな。
次の筆頭魔術師はそなただ。真面目そうだし、信頼できそうだ。あのボンクラの権限をそなたにやろう。」
陛下は満面の笑顔でフルーの肩を叩いた。

「分かりやすくしただけです!」
断固まじめにそう言い張るロスウェルだった。

「お前はもう引退だ。火炙りになる前に、魔の森に帰るがよいぞ?」
陛下は引き攣った笑顔をロスウェルに向けた。
「短気!短気短気短気短気!!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐロスウェル。


俺はふと疑問を浮かべハリーに問いかけた。
「魔の森‥なんてあるのか?」

「あぁ、殿下、ここからが魔術師の秘密なんですよ。」
「秘密?」

ふと我に帰った陛下が俺に顔を向けた。
「そうだ。その事をお前に引き継がなければならない。
魔の森には、魔術師の才を持つ者が現れる村が存在する。
筆頭魔術師は、新しく魔術の才を発揮した者を、保護し、代々城の中で魔術師として知識と術のコンロトールを指導して育てるのだ。
何故か、魔術の才を持つ者は皆、親が居ない。亡くしたのか消えたのか定かではない。だから引き取り役でもあり親でもあるのだ。」

「それは‥では、皆親が居ないのですか?」
俺は5人の魔術師達を一人一人見つめた。

「昔のことだが、魔術の才を持った子供が、悪しき者に捕まった事があってな‥その村に住む者だったが‥その不思議な力を欲して虐待し、子供は殺されてしまった。魔術の才を持つ者は多くはないが、密かに隠れて大人になった魔術師が、当時の皇帝に秘密裏に直訴した。皇帝は幼い子が亡くなった事を知り、その直訴してきた者を筆頭に城で保護する事にした。それから魔術師達は城の中で自身らで研究を重ね魔術をコントロール出来る様になると、皇族に忠誠を誓った。そして皇帝陛下と継承者にだけ、その魔術を提供する事になった。そして契約した。魔術師は決して皇族を傷つけず、悪意を持ってその魔術を行ってはならない。そして、皇族は魔術師の存在を保護し、決して外部に漏らしてはいけない。それが互いの契約である‥。」

「そして、ここからが魔術師と契約した皇族への注意事項です。」

ロスウェルが話し始めた。

「1つ、魔術師に人を殺す命令は出来ません。そもそも我々の魔術で人は殺せません。
2つ、死んだ者を蘇らせる事は出来ません。
3つ、時間を巻き戻すことは出来ません。
4つ、魔術師と皇族は互いの血で契約されているため、
互いに傷を負わせる事は出来ません。
5つ、皇族が契約を破った場合、その後魔術師には永遠に近づくことが出来ません。つまりこの部屋にたどり着く事も姿を見る事も出来なくなります。
6つ、魔術師が契約を破った場合、その命を持って償うというものです。」


「あれ、ロスウェル、お前お母様会ってるな?」
「そう、ですので陛下にバレたら火炙りなのです。
殿下はギリ継承者でしたこで、ギリセーフですね。」

「お前秘密知ったやつは消すとか言ってなかったか?」

「殺す事だけが、消すという事ではありません。」

白々しくロスウェルは言ってのけた。

「こいつは口答えが多い上に、違反ギリギリな振る舞いをするのだ。まぁ、私も容認していた事もあるがな‥」
ふぅ‥とそれは陛下のため息だった。


「殿下、これからどうぞ、宜しくお願いいたしますね。」
笑顔の魔術師達が俺と向き合う。

今この時から、
ロスウェルと5人の魔術師達との契約が始まった。
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