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彼女の世界線
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「リリィベル」
「お父様!」
庭園の花々に包まれた中で、名を呼ばれた彼女は振り向いた。
穏やかな風に吹かれて金髪の髪が靡いた。まだ幼い彼女の瞳はぱっちりとした夜空のような濃紺の色をしていた。妖精の様な愛らしい少女だった。そのリリィベルと呼ばれた彼女は父親に駆け寄って行った。
「またここにいたか。私の可愛いリリィは・・・・」
「ふふっだってここ好きなの!だってお母様の好きだった場所だったのでしょ?
まるでお母様がいるみたいに思うの!だからここにくるのよ?」
「本当・・・お前はますますアナベルそっくりになってきたな。でも、今日はここまでだ。
また身体を壊してしまったら・・・」
「大丈夫よお父様、最近はすごく身体が元気なの!」
「そう言って、こないだも倒れてしまったじゃないか…私の寿命が縮んでしまう…」
「ふふっごめんなさい。お父様になにかあったら、帝国は大騒ぎになってしまうものね。」
「あぁ、お前も知っているだろう?アレキサンドライトの第一王子殿下がもうすぐ8歳を迎えるそうだ。
誕生祭に行かなければならない。だから身体を大切にするんだ。」
「そうね!初めて王都に行けるの!私すっごく楽しみなの!」
彼女の笑顔は眩しかった。娘を抱いた父はとても穏やかな笑みを浮かべた。
そして、高い城壁に包まれた中の庭園から要塞のような屋敷へ戻っていった。
リリィベル・ブラックウォール
アレキサンドライト北部の国防の要、ブラックウォール辺境伯が治める地。
ダニエル・ブラックウォールとその妻、アナベルの一人娘としてリリィベルは生を受けた。
母のアナベルはリリィベルの産後、肥立ちが悪くリリィベルが4歳の時、天に召された。
彼女は、7歳を迎えた頃になり、時々倒れては数日寝込むことがあった。
それは不定期に前触れもなく訪れる。
けれど、時が経つとまた元気を取り戻す。原因はわからず対症療法しか手はなかった。
帝国の第一王子の誕生祭に向けて、ブラックウォール家も王都へ向かった。。
王都へは馬車で10日ほどかかる。10日掛けてたどり着いた王都のブラックウォール家のタウンハウスでそれは訪れた。
彼女の発作は、その身を切り刻まれるような痛みが突然起こり、叫び苦しいものだった。
高熱と痛みで意識を保てないほどに・・・・。
ベッドに横たわる娘にすがるようにその手を握るダニエル。
「リリィ・・・・疲れが溜まってしまったのだろか・・・。早く良くなってくれ・・・・」
祈りを込めるように、掴まえておけるように、ダニエルは彼女の側を離れなかった。
そんな数日経った後、彼女はゆっくり目を覚ました。
「あぁ・・・やっと目を覚ましてくれた。私のリリィ具合は大丈夫か?」
「お父様・・・・私、また・・・・」
「あぁ・・・何もしてやれなくてすまない・・・・」
「・・・謝らないでお父様・・・・」
弱々しく笑う娘を痛ましく思うダニエルだった。
「お父様・・・今日は・・・・」
「リリィ、誕生祭はもう終わってしまって・・・。私は挨拶だけしてすぐ戻った。
側を離れてすまなかった・・・。」
「ふふっ・・・大丈夫ですお父様。お父様はこの国の要、顔を出さないわけにはいかないでしょう?」
「だが・・・」
「お父様がいて、アレキサンドライトの北部は守れていると私はアピールしたかったのですよ?
行ってくださってよかった。ねぇお父様、第一王子殿下はどんな方でしたか?」
「あぁ、皇太子妃のマーガレット様と同じ銀髪で、皇太子殿下とそっくりなお顔立ちだった。」
「へぇ・・・銀髪って珍しいですね?」
「あぁ、マーガレット様の生家グランディール家の者は銀髪で産まれることが多いんだ。」
「すごーい・・・」
絵本の物語を聞くように、彼女は笑っていた。
そんな娘の身体をゆっくりと起こしてあげた。
「さぁ、リリィ、お腹は減っていないか?」
「えへへ・・・お腹減ってます。」
「では、身体によい食べ物を持ってこさせよう。あぁ・・・目を覚ましてくれて本当に良かった。」
「心配かけてごめんなさい。お父様。」
ダニエルはぎゅっと小さな愛しい娘を抱きしめた。
妻のアナベルも天に召され、リリィベルが不思議な発作を起こす様になった。
数日経てば元気にはなるが、その苦しみに歪む姿は、心臓を引き裂かれるような思いだった。
「あっ、でもね?お父様」
「どうした?」
「私夢を見ていたのです…」
「なに?」
「とても…なんだか幸せな夢でした。今は良く思い出せないのですが…」
「それなのに、幸せだったと?」
「不思議ですよね?覚えてないのに、幸せだなんて・・・」
「そう・・・・だな・・・。」
ダニエルは何度も聞いていた。苦しむ娘はいつもこう言うのだ。
『たすけてあげて』
『泣かないで』
と、苦しみもがきながら
誰を?自分に向けての言葉ではない・・・・。
泣かないでと、自分はその閉じた目から溢れる涙を流し苦しんでいる。
そして、娘が苦しむ夜に限って
・・・・月が雲に隠れている。
「お父様!」
庭園の花々に包まれた中で、名を呼ばれた彼女は振り向いた。
穏やかな風に吹かれて金髪の髪が靡いた。まだ幼い彼女の瞳はぱっちりとした夜空のような濃紺の色をしていた。妖精の様な愛らしい少女だった。そのリリィベルと呼ばれた彼女は父親に駆け寄って行った。
「またここにいたか。私の可愛いリリィは・・・・」
「ふふっだってここ好きなの!だってお母様の好きだった場所だったのでしょ?
まるでお母様がいるみたいに思うの!だからここにくるのよ?」
「本当・・・お前はますますアナベルそっくりになってきたな。でも、今日はここまでだ。
また身体を壊してしまったら・・・」
「大丈夫よお父様、最近はすごく身体が元気なの!」
「そう言って、こないだも倒れてしまったじゃないか…私の寿命が縮んでしまう…」
「ふふっごめんなさい。お父様になにかあったら、帝国は大騒ぎになってしまうものね。」
「あぁ、お前も知っているだろう?アレキサンドライトの第一王子殿下がもうすぐ8歳を迎えるそうだ。
誕生祭に行かなければならない。だから身体を大切にするんだ。」
「そうね!初めて王都に行けるの!私すっごく楽しみなの!」
彼女の笑顔は眩しかった。娘を抱いた父はとても穏やかな笑みを浮かべた。
そして、高い城壁に包まれた中の庭園から要塞のような屋敷へ戻っていった。
リリィベル・ブラックウォール
アレキサンドライト北部の国防の要、ブラックウォール辺境伯が治める地。
ダニエル・ブラックウォールとその妻、アナベルの一人娘としてリリィベルは生を受けた。
母のアナベルはリリィベルの産後、肥立ちが悪くリリィベルが4歳の時、天に召された。
彼女は、7歳を迎えた頃になり、時々倒れては数日寝込むことがあった。
それは不定期に前触れもなく訪れる。
けれど、時が経つとまた元気を取り戻す。原因はわからず対症療法しか手はなかった。
帝国の第一王子の誕生祭に向けて、ブラックウォール家も王都へ向かった。。
王都へは馬車で10日ほどかかる。10日掛けてたどり着いた王都のブラックウォール家のタウンハウスでそれは訪れた。
彼女の発作は、その身を切り刻まれるような痛みが突然起こり、叫び苦しいものだった。
高熱と痛みで意識を保てないほどに・・・・。
ベッドに横たわる娘にすがるようにその手を握るダニエル。
「リリィ・・・・疲れが溜まってしまったのだろか・・・。早く良くなってくれ・・・・」
祈りを込めるように、掴まえておけるように、ダニエルは彼女の側を離れなかった。
そんな数日経った後、彼女はゆっくり目を覚ました。
「あぁ・・・やっと目を覚ましてくれた。私のリリィ具合は大丈夫か?」
「お父様・・・・私、また・・・・」
「あぁ・・・何もしてやれなくてすまない・・・・」
「・・・謝らないでお父様・・・・」
弱々しく笑う娘を痛ましく思うダニエルだった。
「お父様・・・今日は・・・・」
「リリィ、誕生祭はもう終わってしまって・・・。私は挨拶だけしてすぐ戻った。
側を離れてすまなかった・・・。」
「ふふっ・・・大丈夫ですお父様。お父様はこの国の要、顔を出さないわけにはいかないでしょう?」
「だが・・・」
「お父様がいて、アレキサンドライトの北部は守れていると私はアピールしたかったのですよ?
行ってくださってよかった。ねぇお父様、第一王子殿下はどんな方でしたか?」
「あぁ、皇太子妃のマーガレット様と同じ銀髪で、皇太子殿下とそっくりなお顔立ちだった。」
「へぇ・・・銀髪って珍しいですね?」
「あぁ、マーガレット様の生家グランディール家の者は銀髪で産まれることが多いんだ。」
「すごーい・・・」
絵本の物語を聞くように、彼女は笑っていた。
そんな娘の身体をゆっくりと起こしてあげた。
「さぁ、リリィ、お腹は減っていないか?」
「えへへ・・・お腹減ってます。」
「では、身体によい食べ物を持ってこさせよう。あぁ・・・目を覚ましてくれて本当に良かった。」
「心配かけてごめんなさい。お父様。」
ダニエルはぎゅっと小さな愛しい娘を抱きしめた。
妻のアナベルも天に召され、リリィベルが不思議な発作を起こす様になった。
数日経てば元気にはなるが、その苦しみに歪む姿は、心臓を引き裂かれるような思いだった。
「あっ、でもね?お父様」
「どうした?」
「私夢を見ていたのです…」
「なに?」
「とても…なんだか幸せな夢でした。今は良く思い出せないのですが…」
「それなのに、幸せだったと?」
「不思議ですよね?覚えてないのに、幸せだなんて・・・」
「そう・・・・だな・・・。」
ダニエルは何度も聞いていた。苦しむ娘はいつもこう言うのだ。
『たすけてあげて』
『泣かないで』
と、苦しみもがきながら
誰を?自分に向けての言葉ではない・・・・。
泣かないでと、自分はその閉じた目から溢れる涙を流し苦しんでいる。
そして、娘が苦しむ夜に限って
・・・・月が雲に隠れている。
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