1 / 240
人生はどうだった?
しおりを挟む『やぁ‥君の人生はどうだった?』
「‥ここ、どこだよ」
俺が目覚めた場所はこの世のものではありえない程、先も見えないのに、上から天使の梯子が降り注ぎ、幻想的に光り輝いていた。
放り出された様に座った俺の下は、まるでオーロラが流れるように揺らめいている。
そして、目の前には人間離れしたイケメンが偉そうに腰に手を当てて立っていた。
『いやだから‥君の人生はどうだった?』
ふと‥自分の手のひらを見た。
俺は確か、86歳で召され‥
30歳の時に会社の後輩だった年下の女性と結婚して、子供にも恵まれて、幸せな人生だった。
不満もなく、幸せ‥だったよ?
手のひらは、30歳ぐらいの働き盛りの若い手のひら
年老いた見慣れていた俺ではなかった。
死んだら、若返るのかよ。
てか、こいつ誰だよ。
『?誰だよ?って顔してるね』
「わかってんじゃねーか」
金髪で、仏教じゃねーなって事が一目瞭然な目の前のイケメン野郎。着ている服だって、‥ギリシャ神話かよ。
頼りなさげな絹のような布を際どく上手に着こなして
高そうな装飾品つけて、両手首には天国と地獄です。みたいな白い宝石と黒い宝石がついたそれぞれの腕輪。
うざいくらい眩しい笑顔と色っぽい低い声。
『あぁ‥そうか、君は元々そういう性格だったね?』
「は?」
そういうってなんだよ。てか、なんも言ってねーよ。
「別にいーけど‥」
だって俺は元々‥
『そうだ、君はとても、なんて言うか‥
正直に言って申し訳ないけど、そんなに明るい男ではなかったね。』
はははっ‥てまぶしく笑って言う目の前の男。
「‥‥さっき会ったばっかりだってのに失礼な奴だな。
喧嘩売ってんのかよ。
俺は普通に‥やりたい仕事もして、結婚もして‥‥‥幸せな人生を‥‥」
幸せ‥‥そう幸せだったはずだ。
バリバリ働いて、普通に結婚して、子供もいて、孫もいて、みんなに見送られた俺は幸せな人生だっただろ?
頭の中を巡るこれまでの人生。別に不満なんてない。
穏やかな最後だった。
『そうだね‥幸せでなによりだよ。』
俺は神話野郎の顔を見上げた。
『‥神話野郎とは、失礼な』
呆れ顔をした男は、俺の考えをまんまと口にした。
お前だって俺に失礼な事言ってんだろうが‥‥
なんだ、心が読めるのか‥死んだ世界はなんでもありだな。
「で、俺は‥これからどうなる?死んだのだから、ひょっとしてこれから三途の川へ案内してくれるのか?」
『あぁ‥‥三途の川とは、そなたの世界の死後の世界の事だなぁ‥送ろうか?』
ニヤリと微笑み、指先をひらりと流した。
言っている意味が分からない。ソナタノセカイ?
送ろうか?って飲み会の後女口説いたイケメン上司かよ。
てか、そもそも日本の死後では無い?なにこれ。
まぁ、浮世離れしたギリシャ神話みたいな野郎が目の前にいるくるいだから、でも俺はどうしてこうなった?
『当たり前のようにギリシャ神話と、まぁよい。
まぁ私は、なんだろう‥次の人生へと導く者とでも言うか』
「なんだよ、いいとこ紹介してくれんのかよ」
唇を片方吊り上げて皮肉を言った。
ホストみたいな顔しやがって。
『まったく‥ホストだなんて、そんな安っぽい男の象徴と同列扱いをするなんて、蝋人形にしてやろうか?』
「閣下かよ」
『お前は、幸せな男よな‥こんな皮肉の塊のような男のくせに、幸せな人生を謳歌して、まったく、理解に苦しむよ。
お前のような男に‥』
「ずいぶん言ってくれるじゃねぇか。まぁ、俺はそんな、いい奴じゃねぇよ。」
『よく理解しているな。やはり本質は変わらぬものよ』
「俺のこと見てたのかよ。」
『あぁ‥見ていたさ。お前が毒気を抜かれ、幸せな人生だと、その口から出るように。この目でしかと‥』
目を細め、やや冷ややかに俺を見つめギリシャ野郎は言った。
『お前は、これまで健康的で、普通の幸せな人生を送った。
良かったな。』
ふっと、鼻で笑うギリシャ神話の金髪野郎‥
「なんだよ。ギリシャ野郎って言ったのがそんなにお気に召さなかったか?そんな馬鹿にされる覚えはねーけどな』
そう言った俺にギリシャ野郎は真顔になった。
『私は、願いを叶えてやったまでだ。』
‥願い?
「願いだと?神は願いを叶えてくれるのかよ。
お前が神かは知らんけどな。
神頼みってのは。ちゃんとあるんだな。
俺は幸せを願った事があったか?俺は自分の選択で人生を終えたんだと思ったけどな」
『ふっ‥まさに幸せな男よ。拍手してやろう。』
ニヤリとしながらパンパンと軽く、マジに拍手しやがった。
その姿がカチンときて野郎を睨み付けた。
「いい加減、死んだ俺をどうにかしてくんねーのかよ。
お前としゃべるのも飽きたんだけど。」
『あぁ、同感だ。私は願いを叶えてやったまで‥
それはお前の望みではなかった。私は健気な魂の願いを叶えてやったまでだ。』
「他人の幸せ願う奴なんているのかよ。」
他人の幸せを願うだと?馬鹿馬鹿しいな。
俺はどうしてこんなにイラついているのか。
もちろんこの野郎との会話のせいもある。
だが
なぜこの男にこんなに言われなきゃならないのか。
どうしてこんなに嫌な考えが、言葉が浮かんでくるのか。
なんだ、イライラする。身体もだるい。
『あぁ‥そろそろ素がでてきたな‥まぁ、仕方あるまい。』
ニヤッと笑った野郎は、俺の額に手を当てた。
『お前に一つ、教えてやろう。‥あぁ、一つでは終わらないかな?』
2
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる