勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
上 下
451 / 516

【226.5話】 狂騎士の斧作戦23日目

しおりを挟む
狂騎士の斧作戦23日目
今日が事実上作戦最終日となっている。


19日目にはミスニスとバンディが見張っていたコードネーム・ジャックと呼ばれる一団のアジトを壊滅に追い込んだ。
こちらは6名程の盗賊団、賞金首はいなかったものの囚われの女性一名を救出。荷物を回収し、賊は情報を聞き出した後に始末された。
リリアももちろん参加はしたがチャト団と同様、あっけなく作戦が遂行されたので保護された女性のお世話役をしていた。

ターゲットの印をつけた荷物の回収も効率良く、その後も同じ様に撒き餌をして居場所を特定していく予定だったが、20日目の午後ビケットが「ここで一区切りしておこう」と言い出した。
密かに作戦遂行といっても山中にいる他の盗賊団に感づかれ始めたようだ。
警戒が強まり、あるいはアジトを捨てて逃走する者が増えだした。
「我々の後について賞金を狙っていた者達も動いていたし、さすがに突然盗賊団が二グループも消えたら異変に気がつくな」ビケットが言う。
その日の夕方にターゲットの魔法を施したアイテムが数点道端に放置され、リリア達ステルス班とパッケージ追跡の魔法使い班で二つの盗賊団を特定できた。
「本来ボランティアはしないが、今回は稼ぎが良かったしなるべくなら国民が犠牲にならない事を願う気持ちは私も変わらない。特定出来た居場所と今までの情報を保安部に知らせたところ、23日に大物取りとなるようだ。そこで23日までこのまま諸君を雇うので山狩りから逃げる賊の中に賞金首を発見し捕まえてくれたらボーナス上乗せだ」ビケットが説明した。
要はちまちま時間をかけていられなくなったので一網打尽ついでに最後におこぼれが拾えたらラッキー的な感じだ。
「23日の作戦だが… 特に指示はない。正直私にも予想し難い。今までの情報は全部開示するので各自自分で予想して待ち伏せしてくれ。日没には全員事務所に集合して最後の確認を行う。我々は既に戦果を出している。くれぐれも無理をしないように、それから功を焦って保安部の邪魔になるような行動、仲間を危うくする行動は慎むように」
ビケットとしてはこれ以上、それほど期待していないようだ。
まだ大物が潜んでいるという情報もあるが、日数をかけても仕方ないけど最後にワンチャンあるかな?的なところだろう。

「おいリリア、おまえこういうの得意そうだな、組んでやろうぜ」
リリアは声をかけらたが、
「あたしは接近戦を避けたいから山沿いの道を見張って出てきたやつを射る予定だよ。ってか、捕まっている人達がいるのが気になるから賊がどうのより、その人たちを助けたいけどねぇ」
リリアは断った。
リリアはダーゴだけ連れてどこか道を見張る予定。


狂騎士の斧作戦23日目、最終日

リリアはダーゴを連れてルーダ港に近い街道筋を見張れる場所を陣取った。
他のメンバーにもリリア達の居場所は知らせてある。何か動きがあったらお互いに連絡を取る予定だ。
鼻が利くデューイ達や他の接近戦を得意とする者達は兵士達の動きに合わせて山中を行動するようだ。
リリア達は一番早起きして見張っていていると、ビケットのメンバー達が思い思いに出かけて行くのが観測地点から見えた。
「お!皆、出かけて行ってるね。ミスニスはレネギウスとパーシィ達と行くのか、意外な組み合わせね。ディ―イとバンディは二人とも鼻が利くから良いコンビだよね。ネネとブランカ… あまり話をしているところ見ないけど仲がよかったんだ…」
リリアが見ていると朝一番発の商隊や旅行者に混じって山に向かうのが見えた。
「ドッグスのメンバーが出て行ったね。あいつらリリアのこと散々言っておいて結構リリアを追跡してきてたんだよ。あたしね知ってたから山の中でまいてやったんだよ、えっへっへ。お!アスラン達のグループ、それに… リオンとジェシカ達も参加していたのか…ふーん… 魔法が強くてもリリアみたいに山を熟知していないと追跡は大変だろうねぇ…」リリアが呟く。
「結構嫌なやつだな、リリア」ダカットが言う。
「オイラもこれ以上は無理することないと思うよ、リリアをここでアシストするのがちょうどだ」ダーゴが言う。
もともとゴブリンは数と俊敏さと地の利を生かして戦い、正面きっての戦闘にはあまり向かない種族だ。
それからちょっとして結構な数の巡回兵が小隊になって次々と出発していく。
「へぇ… 集まると結構数がいるのね。でも野山を走り回るのにあの数ではねぇ… あんなに物々しく出発していったらガサ入れがあることが今頃山中に響き渡ってるかもね。もう皆逃げだしているかもね」リリアが言う。
ダカットがリリアを見ているとどこか他人事のようだ、もうこれ以上は必死に稼ごうと言った感じではなさそう。その点ダカットは安心している。

「リリア、あなたお尻丸見えよ」
いきなり背後から声をかけられた。
「びっくりしたなぁ!ブリザとアメリアか… 心臓がでんぐり返しするかと思ったよ… ブリザ達は馬車で待機だと思ってたけど、ここで一緒に見張るの?」
「いや、もう少ししたら馬車で待機しているわよ。もうこれ以上は野山に入らないわよ」ブリザが説明する。
リリアはフムフムと頷く。ブリザの性格からしてもそんなところだろう。
「良くリリアの居場所がわかったのね」リリア。
「リリアのアイテムにターゲットの魔法をつけといたから追跡してきたのよ。全く気がつかないだなんてのん気よねぇ… えぇ?許可なくターゲットするのは違法?迷惑条令?… あのね、この業界ではタゲられて気がつかない間抜けな方が悪いのよ。 …大丈夫よ日没と共に効果は消えるわよ」ブリザは淡々としている。
「全く… 早く馬車で出なくてよいいの?… 慌てなくてもまだまだ出番なし?… まぁ、そうだけど… えぇ?リリアはどうしてこの場所で潜伏を選んだかって?… うーん… 正直どこいっても確率低そうだよね。結局裏手の山岳部か海岸沿いに東に逃げられたらどうしようもないじゃない。変にウロウロしないで、ダメだったら街にすぐ帰れる場所にしたんだよ。まぁ、街に逃げ込もうとする連中がいたらワンチャン捕まえられるかなぁ?程度だよ」リリアが説明する。
「ふーん…わりかしそれくらいの方が成果あるのかもしれないわね」
ブリザはそれだけ聞くと街へ戻って行った。


「さぁ、ダーゴ、ダカット、今日はリラックスして見張るわよ。とりあえず、お茶とザラメパン食べよ」
リリアはいきなり遠足気分のようだ。
「もうお茶の時間なのか?早いな」ダーゴが笑う。
「この前まであんなにストイックだったのに全然態度違うじゃないか」ダカットも苦笑いだ。
「どうせまだまだ時間かかるよ、皆でお茶したらリリアは居眠りする予定だから何かあったら起こしてね」
リリアはそういうと砂糖がたっぷりとかかったパンを配り始めた。

通りは朝初の商人たちの馬車が道を行く。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~

月白ヤトヒコ
ファンタジー
 教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。  前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。  元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。  しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。  教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。  また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。 その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。 短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...