勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
上 下
427 / 516

【214.5話】 ※213.5話の続き※

しおりを挟む
「皆、あたしは先に出かけているからくつろいでいってね。メイドさんを呼んで何でも注文してよいからね」
リリアは支度をするとゲストルームから出かけていく。
「わかりました。私たちは適当に買い物にでます。皆夜のパーティーに出る正装を買いに行かなければなりません。どこでデモでしたか?緑の広場ですね。後で見にいきます」コトロがリリアに言う。
「気を付けていってらっしゃい」一同が挨拶。


リリアは部屋の大きさとベッドが一つしかない事にクレームをつけていた。やっと部屋が忘れ去られる領域を脱出した段階だがリリアは強気に出ているようだ。
もちろん部屋を今更取り換えてもらえるはずもなく、ベッドは野外用の寝袋が人数分持ってこられた。
「寝袋じゃないの、あんまりだよ… ベッドにしてよ」リリアが口を尖らせる。
すると寝袋は回収され、やはり野外用の簡易折り畳み式ベッドとシーツセットが運び込まれた。
「いや… ベッドはベッドかも知れないけど… そういうことじゃないよね… これは不満のまを表明だよね。警戒アラートレベル2に引き上げだよ。次は大噴火レベルだよ」リリアは納得いっていない。
「… リリア、そもそも一人の予定が7人になっています。雑魚寝で良いですからこの辺で止めておきましょう」コトロ。
「恥ずかしい… 簡易ベッドの客だってスタッフの間で有名になってるよね…」ペコがブツブツ言っている。
結局豪華な部屋の豪華なベッドの横に簡易ベッドが並ぶ変な光景で部屋の中は落ち着いた。
「何この部屋、落ち着かないよね…」ペコが愚痴る。


さて、買い物がてら街に出て緑の広場までやってきたコトロ達。
広場でリリアを探す。
人も多いし、出店も出ている。
「ステージでは吟遊十二楽坊が演奏していますね」
「こっちで握手会しているのは楽団カブトムシ達のメンバー」
「大魔導士トゥルノード公認のマジカルアイテムショップね」
「吟遊46のメンバーもいるニャン」
「あれは剣士を集めたボーカルグループ・ナイツのサイン会ピョン」
「私あまり知らないけど結構ビッグネームが来ているのね」
恐らく全てリアルゴールドが呼んだゲストだろう、エア勇者リリアなんかよりよっぽど人気のある人達やグループがいる。
「ねぇ、これってほんの一部のうえに国賓や政治家も来ているんでしょ?リリアは部屋が用意されているだけでもありがたいよね」ペコが言う。
「リリアはどこにいるのでしょうか…」
一同がリリアを探す。
「あ、いたニャン、リリたんあそこニャン」
ネーコが広場の一画を指さした。
見るとそこそこの場所にそこそこのテントが出ていて、握手会をしている。
10人そこそこ人が並んでいる。
「うゎ… 立派とも言えない隅っこの方とも笑えない、中途半端な感じで人気あるのかないのかつっこめない中途半端な列だよね」ペコが苦笑いしている。
リリアはテント前に立ち、並んでいる人と挨拶をしながら握手をしている。
リリアモデルの装備をばっちり着こみ真紅のマントを着けている。
見栄えはかなりセクシーでかっこよい女勇者だ。
“勇者リリアの握手会”、“リリアモデル武器・防具一式予約受付”、“レプリカも予約受付中”
色々な看板が出してある。
“勇者リリア・プロフィール”と立て看板が置かれてリリアが何者なのか紹介されている。
「あれですかね… プロフィールがなければリリアが何者か認知されていないのでしょうか…」コトロが核心をつく一言を言ってしまっている。
「ぅはぁ… 恥ずかしい、もう声かけずに買い物いこうよ」ペコ。
「これが今のこの王国の勇者クオリティ。仕方ないわ」アリスは微笑んでいる。
「リリたん、いたピョン!せっかくだから握手に並ぶピョン」ラビたちは喜んでいるようだ。
仕方ないので全員握手会の列に並ぶ。
「ルーダリア王国公認勇者リリア握の手会です。装備一式を販売しております。今ならお友達紹介キャンペーン中です」
列に並ぶとバニーガールからパンフレットを手渡された。
「あわれなリリアに友達紹介してあげようってキャンペーン?…」ペコが呟く。
見るとリリアモデルの紹介に続き、リリアのプロフィールが乗っている。
要約するとリリアは東の無名な村で生まれ育ち、村の教会で学び、剣は父親から教えてもらって今は冒険者ギルドに所属、弓は凄いです的な文章。
「なんじゃこれ、生い立ち、最終学歴から今までの人生全てがそこら辺にいる人と何もかわらないよね」ペコが失笑している。
「笑うにはまだ早いわよ」アリスが微笑みながらプロフィールの最後の方を指さしている。
読んでみると、7歳で両親を失った村の娘が17歳で突然勇者に指名され、魔力も無いのに一生懸命勇者しています的な文章が最後に紹介されている。
「何このお涙ちょうだい感」
「ちょっと良い話にしあげようとしている感じ… せこい…」
ペコもコトロも顔を見合わせて笑うしかない。

「あ!皆来てくれたのね!並ばなくてもよかったのに!1G払うとこっちのエクスプレスラインってところから優先して握手させるシステムがあるんだよね。さすがリアルゴールドだよね、色々よく考えてあるよね」リリアがコトロ達にニコニコと手を振っている。
「あいつアホなの?だれが金払って優先されたいの?お友達失うキャンペーン実施中なの?」ペコが呆れている。

全員とりあえず握手をしたらちょうど列が途切れた。休憩も兼ねておしゃべりタイム。
「私達は買い物に行くから、リリアは何か必要な物あるの?… わかった。着替えて出てるから会場で集合ね。法衣服ダメだから私達も買うよ… ネーコとラビの服はコトロが買うって… オフェリアの分は私達が立て替えとくから後であなた払いなさいよ」ペコが言う。
「わかった、任せて。え?… 大丈夫だって!オフェリア遠慮せずせっかくだからオシャレしてパーティー出たらいいよ。大丈夫だよ、皆と行けばいいから!貴族と出会えるチャンスだよ!… え?…いいから先行っておいでよ!」遠慮するオフェリアにリリアがパーティーに行くことをすすめている。

おしゃべりも終わりコトロ達は買い物へ。
「はぁぃ、じゃ、皆後でね、会場でね。わざわざ来てくれるなんてやっぱり持つべきものは友達だね。あ、皆今友達キャンペーンで友達紹介したらリリアモデル割引だって。友達繋がりで買ってよ… いででで…」
リリアは調子に乗るなと言わんばかりにペコにつねられた。


リリアはこの後パーティーに出て皆で騒ぎ、次の日は剣を引き抜く勇者ショーと握手会をこなし、収穫祭の挨拶には並み居るビッグネームの中、最後の方に勇者として紹介され、立ち上がりニコニコ少し手を振る簡単な仕事を終えた。

後はパーティーを皆で楽しみ、この年のモデル仕事と収穫祭を終えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

職業・「観客」ゥ!?

花山オリヴィエ
ファンタジー
主人公「イツキ」はマンガやアニメ、小説などみることが大好き。ある日、舞台を見ている最中の事故で異世界へ。そこはファンタジーの世界で、与えられた職業は戦士でも魔法使いでもなく「観客」ゥ!? 実際に生きていくのは大変で…… でも気のいい仲間と共に生活すると、幻想の動物や魔物、剣と魔法の世界で、見るものは新しく、食べるものは美味極まりない! そして見ているだけですべてが完結って本当ですか!?  注意)本作では主人公のチートスキルによる無双は登場しません。 第1部完了。 物語はまだ続きます。 鋭意執筆中で御座います。 ◆皆様からのご支援を頂き感謝しております。◆ いいね や エール機能は非常に有難く、モチベーションの向上につながります。 誤字脱字や指摘に関しては近況ボード等でご指摘いただけますと幸いです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...