勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【150.5話】 リリアとネイルサロン ※リリアのある休日の話し※

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リリアの休日。
基本的にリリアは朝が早く、勤勉な方だ。村育ちのせいであろう。村では朝から農作業が始まるし、農作業どこ吹く風だったリリアでも、周りが早々と作業に出るので、それに合わせてシェリフ仕事をしていた。
勇者になって… いや、冒険者兼業勇者的な人になり街に住むようになってからも朝早く起きて仕事にでる。
休日も基本的に朝早い。が、寝だめして極端に遅い時もある。

護衛、頼まれごと、採取仕事、冒険者酒場でジョブボードの仕事を引き受けては数日出かけてはギルドに戻ってきて数日お休みしている。こう見えてもフォート・ランカシムの英雄であり、リアルゴールドの専属モデルであり「王国が給料出さないから無給で勇者しているのよ!」と不満を言いつつも「リリアモデルの宣伝で結構良い契約金が出ているのよ、リアルゴールド・愛・ラブ・ユー」と余裕があるようだ。
が、勇者仕事では身銭を切って人助けしている事も多々ある。

普段仕事では、ハンター風の軽装備ででかける。仕事内容によっては宣伝もかねてリリアモデルを着て出ていく。
リアルゴールドとハンズマンがリリア向けにデザインしたリリアモデル装備を着たリリアは正直、格好良い。スタイルが良く胸がおっきくエロボディで長身のリリアは惚れ惚れするような装備姿に変身だ。
「リリアモデルのマント?絶対に着けないわよ。あんなの椅子に座って指示してる偉い人が着ける物よ。冒険者=死因:マント、みたいな物じゃない。絶対着けて出かけない」
マントに話が及ぶとリリアは絶対こう答える。
また、「契約金もらってるからリリアモデルは宣伝してあげないとね」と言いながら休暇は極力リリアモデルを着て出歩いている。
リリアモデルはかなり露出が多い装備とは言え、仕事では軽装備、休暇中に重装備を着る変なライフサイクルだが、本人は鎧のカチャカチャ音を嫌って革系統の装備を好むようだ。
稀だが街娘が着るような普段着、ローブを着ている時もある。
「ん?これ?特に何もないけど… せっかく買ったしたまには着てあげないと」
たいていこんな返事がリリアから帰ってきて、普段着のローブにダガーベルトを腰に着けていたりする。

オシャレに興味が無いのかと言うと、そうでもない。むしろそんな事は無い。って言うか結構オシャレに高い関心があるようだ。
「これどう?街娘みたいでしょ?」そんな事を云いながら洋服を買ったり香水を買ってみたりしている。


今日、リリアは休日を利用してゴグスタフ先生の所に行く予定だ。
しかし、午前中時間があるのでラビと連れ立ってネイルサロンにやってきた。
ネコ耳の女性が何人か集まってネイルサロンを経営しているらしい。
「ネイルサロン?何それ?エスカルゴ料理?サーロインステーキ?… あ、食べ物じゃないのね。爪を綺麗に?えっへっへ、ニャン子ちゃんはその辺で爪研ぎするのかと思ったら違うのね」
リリアが笑ったら「ネコ耳をバカにしてるニャン!」とネーコに怒られた。
リリアがネイルサロンに行ったことないと知るとラビが連れて行ってくれると言ってくれた。ネーコは別件でお出かけ。

ラビはネイルとうさ耳の毛並みをお手入れしてもらうようだ。
「ネコ耳さんにとって爪は大事ピョン。うさ耳のラビは耳のお手入れ大事ピョン。コトたん?弦楽器奏者は手元を注目されるって結構手には気を使っているピョン。まぁでも、基本は水仕事多いピョン」ラビが説明する。
“そっか、言われてみればコトロは結構手を気にしているな”リリアはコトロがリュートを手にしている姿を思い浮かべる。

サロンは賑わっている。順番待ちの席にリリアは座る。亜人の間では人気店らしい。
「何とかニャン」「何なにピョン」「しかじかワン」「誰それがコン」「何がしがポン」
いかにも亜人の憩いの場になっている。
「何とかがブヒ」「かんとかがヒヒン」「何でもペン」「それでモー」「そうだゾウ」
聞きなれない訛りだが色んな亜人がいるのだとリリアは感心する。
「お次の方… リリアさんどうぞ」
呼ばれて席に着く。
可愛らしいネコ耳さんがおしゃべりしながらリリアのネイルを見てくれる。
「ネイルサロン初めてニャン?次からは指名して来たらよいニャン。お客さんは専業主婦ではないニャン。職業は勇者?… それって儲かる仕事ニャン? えぇ?ただ働きニャン?何で続けるニャン?仕事じゃないニャン、それ趣味の領域ニャン。あ、冒険者さんなのニャン。納得ニャン。冒険者しながら趣味で…勇者しているニャン?… お金にならないニャン?それ趣味ニャン。何で余計な事を続けるニャン?王国にただで?お客さん奴隷ニャン?」
ネコ耳さんは屈託無くニコニコおしゃべりしながらリリアの手をケアする。嫌味でも悪口でも無い、勇者が何かの理解もいまいちであろう。儲からないメニューならサービス終了で良くないですか?程度の感覚。
“確かに… 給料になってない上、自腹を切っている時さえ多い。知らない人から見れば勇者はただの趣味の領域なのか…”リリアはちょっと怖くなる。

「お客さんの手、お手入れしたら綺麗くなるニャン。でもさすが冒険者さんニャン。剣タコが出来ているニャン。こっちの指先は弓?グローブしていても出来るニャン?命がけニャン」
改めて見ると色白とは言い切れないが普段意識するより白い腕をしている。肘上まで隠れるロンググローブで日焼け跡がくっきり。手の傷は薬草類で治るものの爪はボロボロだ。
「リリア、山小屋の修理にいくから魔物の退治を頼む」と言われてでかければ、大工仕事も手伝う。魔物がいないからと言って居眠りしてもいられない。次も仕事で呼ばれるためには木材を切って担ぎ上げて釘でも打たなければパワー系の亜人に仕事を取られてしまう。
弓が上手、接近戦も人並みにでき、サービス精神があって頑張り屋でしゃべりが面白い冒険者リリアが仕事につながるのであって、弓だけならエルフ、接近戦と力仕事だけならオーク系、雑用だけならゴブリンかインプでよいのだ。
人間の村娘リリアにはライバルがひしめいている。冒険者リリアは何でも屋さんなのだ。
リリアの手等、ハンマーで叩いたり、ノコギリで切ったり、爪で何かを剝がしたり、類を見ない程酷使されていてまさに酷使無双だ。
その上勇者なんて趣味の域なのか…

「… お客さん?お客さん?… 大丈夫ニャン?さっきから呼んでるニャン」
「… あ!ごめん! 何なに?」リリアはハッとする。
「ケアは終わったけど、デコレーションするニャン?」
「…あぁ… えっと… そうねぇ、良いようにやっちゃってよ」リリアは答える。
「わかったニャン。お客さんの爪は短すぎるから良い付け爪にデコするニャン」ネコ耳さんが張り切っている。


「リリたんどうだったピョン?手、見せてピョン。わぁ、綺麗になったピョン。ってかせっかくネイルサロン行ったのにグローブ着けるのもったいないピョン」
ネイルサロンから出来てラビが笑う。ラビのうさ耳はピンとなってツヤツヤしている。ラビ満足気。
「そうだよねぇ。せっかくだからグローブ要らないよねぇ」リリアは苦笑い。
「そうピョン。グローブはベルトにでも挟んで素手で過ごしたら良いピョン。なんならしばらくラビがポーチに入れるピョン」
「せっかくだからテラスで昼ご飯して、午後からゴグスタフ先生のところ手伝いに行くよ。まずその前に街中着け爪デビューよ」リリアは自分の手を見てヒラヒラさせている。
「そうするピョン。って、休日なのに診療所手伝いに行くピョン?すごい気分転換ピョン」ラビが笑う。
「うん、村にいた時、修道女やってたけど、診療所も似ているところがあるんだよね」
「そっか、偉いピョン… リリたん、早くボーイフレンド作るピョン… じゃあ、午後には一回着け爪外すピョン?」ラビが聞く。
「… そね、外すね… ね!ラビ、メッチャ人通りのするテラスの席でご飯しようね」
「手を見せびらかして食事するピョン」

リリアが笑うとラビも笑った。
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