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【117.5話】 ケヤン・“トロットダンサー” ※少し前の話し※
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※コ〇ナの文字が入るとアップできないようで一部変更してあります※
ルーダ・コートの街にある冒険者酒場
まだ時間は昼過ぎ。冒険者や旅行者等が集まってきて疲れを癒したり、社交を行うにはまだまだ早い時間。
午前中、ペコ、アリスと数名の仲間と朝練をしていたリリアはジョブボードのチェックとお昼ご飯を兼ねて酒場に顔を出した。
お仕事チェックしてペコ達とランチを済ます。
「熱くなる季節になると、大型獣も増えてくるから気をつけないと」
話しをしながらランチを終えてリリア達が酒場を出ようとする。
「リ、リリアぁ、よ、よう、元気そうじゃないかぁ」
出口に向かうリリアは酒場の入り口隅付近に座っていたトロットに声をかけられた。
「こんにちは、トロット、今日もあなたに神のご加護がありますように」
リリアが挨拶を返す。
「リ、リリア、な、なぁ、お俺、今度サントコ〇ナルに出る、出る予定なんだぁ」
トロットがリリアに手招きをする。どうやら少し相手になって欲しいらしい。
ペコ達は出口をまっすぐ見ながら少し足を早めたが、リリアは足を止めた。
「リリア、私たちは仕事あるからいくわ、またねリリア」ペコとメンバー達はチラっとリリアに視線を送ると足早に酒場から出ていった。
リリアは専用の特等席に座るトロットの傍に立って改めて挨拶
ケヤン・“トロットダンサー”
ケーヤンベックが正式な名前。
細身の剣士、ハンサムで紳士的な振る舞い、若かりし頃はバーでは色男で通った男。
冒険者としての実力もトップレベル、サーベルやレイピアを得意とし軽快な身のこなし、つま先で軽くステップを踏みながら素早いヒット&アウェイで攪乱するように戦う姿から“トロット”、“トロットダンサー”と異名を取っていた。かつては…
冒険者として実力があり、実績も積み上げて脂も乗り「あいつならギルマスも務まる」と噂をされ始めた頃事件は起こった。
行方不明の村人を捜索するメンバーを募って山に入ったが、トロットのパーティーも消息不明になってしまう。
冒険者仲間が集まって、山中を捜索し、数日後トロット達のパーティーは山中で発見される。
山中を隠れ家としていた黒魔術団と関わったらしく、犠牲祭壇や実験の跡がある集落付近でトロットは重篤状態で発見された。
黒魔術団は逃げ、トロット達のパーティーは全滅の惨状で見つかった。
頭部、身体に重傷を負ったトロットは一ヶ月程の昏睡状態から奇跡的に生還を果たすが、体には左半身に麻痺が残り、記憶、判断力、意識に重大な後遺症が残った。
本人は全盛期の記憶の中で生きており、体を引きずりながら街中を、時には城外をウロウロしてバーに戻って来る。
酒場にはトロット専用に用意された暗黙の定位置があり、そこで独り言を言いながら酒を飲んでいる。
正常な判断が下せず、自分はバリバリ稼いでバーで飲んでいる気分。生活が支えられず怪我から一年後、最愛の妻も娘達を連れてトロットの前から消えてしまった。
お酒を飲みながら、何パターンかの話を繰り返す。
初めは冒険者一同同情していたが、今では相手をする人間も少なくなった。
リリアと数名がたまに話し相手をする。リリアはトロットのお気に入りの一人のようだ。
彼の飲み代はギルドから支払われるか、酒場オーナーの好意で出されている。
長い事この冒険者酒場の見慣れた光景になってきた。
「リリア、今度サントコ〇ナルまで出てこようと計画しているんだ」
「……… そう、サントコ〇ナルね… 危険な場所よね」
リリアはナンバーワンのバーガール・マリアちゃんにホットミルクを注文するとトロットの向かいの椅子に座った。
サントコ〇ナルの話しなら立ち話には長すぎる…
「あぁ、最近、物騒で魔物、強盗等で町も困っているらしくてな、治安維持活動だ」
「……… うん…」運ばれてきたホットミルクをすすりながらリリアは頷く。
「冒険者は私利私欲だけではダメだ。強くなり生活に余裕がある身なら人々の幸せも守らなければならない、リリアもわかるだろ?」
「…… うん…」コクコク頷くリリア。
「サントコ〇ナルに出るパーティーを募っているが…」
「ねぇ、トロット、ドラゴンフライから子供を守った時の話しを聞かせてよ」リリアは話をすり替える、同じ聞くなら楽しい話がよい。
「………パーティーを募っているが… 妻のニーニャと娘達が反対していてな、最近下の娘も父親の仕事が理解できるようなったのか生意気な口を利くようになった。ニーニャは魔法を使えるから娘達も能力を引き継いでいればよいが」表情を崩して笑うトロット。
「……… そうね… 魔法使えると良いわね… 娘さん…」
しばらくお決まりの話しが展開される。リリアは何とか笑顔を作りながら相槌を打つ。
「リリアはいくつになった?… そうか、そんな歳か… 勇者だったよな、これからだなぁ」
トロットにしては珍しい事を口にする。お決まりの話しばかりでは無いが、リリアの歳や職業を気にするなんて初めての事だ。そしてトロットが珍しい話題を続ける。
「最近不思議な事が多くてな。嫌な夢を見ているようだ。寝ぼけているような気分だ。何だか、ニーニャも娘達も年を取らないどころか、娘達等赤ん坊に戻ったりする。家がわからず街をさまよったり、家に帰っても他人が住んでいて家族がいなくなっていたり… ま、夢なんて理屈はないだろうが… 嫌な夢をたまに見る気分だ。俺、変かな?はっはっは」トロットが笑い飛ばす。
「……… トロット、大丈夫よ。リリアだってそんな夢を見る事ある。誰でも見るような夢よ…」リリアはミルクを飲みながら少し涙を拭った。
時々トロットがかつて住んでいた家の前に立っているのが思い出される。
「ごめんなさい、あたし仕事に行かないと」リリアは席を立つ。言葉のかけようもない。
「妙な気分だな… 家族が… リリア、またサントコ〇ナルから戻ったら」
トロットに黙礼をするとリリアは足早に酒場を後にした。
その後、トロットはバーに姿を見せなくなった。
聞くとリリアと話をしていた後、フラフラと酒場を後にしてそれっきりだそうだ。
それ以来だれもトロットの行方を知らない…
ルーダ・コートの街にある冒険者酒場
まだ時間は昼過ぎ。冒険者や旅行者等が集まってきて疲れを癒したり、社交を行うにはまだまだ早い時間。
午前中、ペコ、アリスと数名の仲間と朝練をしていたリリアはジョブボードのチェックとお昼ご飯を兼ねて酒場に顔を出した。
お仕事チェックしてペコ達とランチを済ます。
「熱くなる季節になると、大型獣も増えてくるから気をつけないと」
話しをしながらランチを終えてリリア達が酒場を出ようとする。
「リ、リリアぁ、よ、よう、元気そうじゃないかぁ」
出口に向かうリリアは酒場の入り口隅付近に座っていたトロットに声をかけられた。
「こんにちは、トロット、今日もあなたに神のご加護がありますように」
リリアが挨拶を返す。
「リ、リリア、な、なぁ、お俺、今度サントコ〇ナルに出る、出る予定なんだぁ」
トロットがリリアに手招きをする。どうやら少し相手になって欲しいらしい。
ペコ達は出口をまっすぐ見ながら少し足を早めたが、リリアは足を止めた。
「リリア、私たちは仕事あるからいくわ、またねリリア」ペコとメンバー達はチラっとリリアに視線を送ると足早に酒場から出ていった。
リリアは専用の特等席に座るトロットの傍に立って改めて挨拶
ケヤン・“トロットダンサー”
ケーヤンベックが正式な名前。
細身の剣士、ハンサムで紳士的な振る舞い、若かりし頃はバーでは色男で通った男。
冒険者としての実力もトップレベル、サーベルやレイピアを得意とし軽快な身のこなし、つま先で軽くステップを踏みながら素早いヒット&アウェイで攪乱するように戦う姿から“トロット”、“トロットダンサー”と異名を取っていた。かつては…
冒険者として実力があり、実績も積み上げて脂も乗り「あいつならギルマスも務まる」と噂をされ始めた頃事件は起こった。
行方不明の村人を捜索するメンバーを募って山に入ったが、トロットのパーティーも消息不明になってしまう。
冒険者仲間が集まって、山中を捜索し、数日後トロット達のパーティーは山中で発見される。
山中を隠れ家としていた黒魔術団と関わったらしく、犠牲祭壇や実験の跡がある集落付近でトロットは重篤状態で発見された。
黒魔術団は逃げ、トロット達のパーティーは全滅の惨状で見つかった。
頭部、身体に重傷を負ったトロットは一ヶ月程の昏睡状態から奇跡的に生還を果たすが、体には左半身に麻痺が残り、記憶、判断力、意識に重大な後遺症が残った。
本人は全盛期の記憶の中で生きており、体を引きずりながら街中を、時には城外をウロウロしてバーに戻って来る。
酒場にはトロット専用に用意された暗黙の定位置があり、そこで独り言を言いながら酒を飲んでいる。
正常な判断が下せず、自分はバリバリ稼いでバーで飲んでいる気分。生活が支えられず怪我から一年後、最愛の妻も娘達を連れてトロットの前から消えてしまった。
お酒を飲みながら、何パターンかの話を繰り返す。
初めは冒険者一同同情していたが、今では相手をする人間も少なくなった。
リリアと数名がたまに話し相手をする。リリアはトロットのお気に入りの一人のようだ。
彼の飲み代はギルドから支払われるか、酒場オーナーの好意で出されている。
長い事この冒険者酒場の見慣れた光景になってきた。
「リリア、今度サントコ〇ナルまで出てこようと計画しているんだ」
「……… そう、サントコ〇ナルね… 危険な場所よね」
リリアはナンバーワンのバーガール・マリアちゃんにホットミルクを注文するとトロットの向かいの椅子に座った。
サントコ〇ナルの話しなら立ち話には長すぎる…
「あぁ、最近、物騒で魔物、強盗等で町も困っているらしくてな、治安維持活動だ」
「……… うん…」運ばれてきたホットミルクをすすりながらリリアは頷く。
「冒険者は私利私欲だけではダメだ。強くなり生活に余裕がある身なら人々の幸せも守らなければならない、リリアもわかるだろ?」
「…… うん…」コクコク頷くリリア。
「サントコ〇ナルに出るパーティーを募っているが…」
「ねぇ、トロット、ドラゴンフライから子供を守った時の話しを聞かせてよ」リリアは話をすり替える、同じ聞くなら楽しい話がよい。
「………パーティーを募っているが… 妻のニーニャと娘達が反対していてな、最近下の娘も父親の仕事が理解できるようなったのか生意気な口を利くようになった。ニーニャは魔法を使えるから娘達も能力を引き継いでいればよいが」表情を崩して笑うトロット。
「……… そうね… 魔法使えると良いわね… 娘さん…」
しばらくお決まりの話しが展開される。リリアは何とか笑顔を作りながら相槌を打つ。
「リリアはいくつになった?… そうか、そんな歳か… 勇者だったよな、これからだなぁ」
トロットにしては珍しい事を口にする。お決まりの話しばかりでは無いが、リリアの歳や職業を気にするなんて初めての事だ。そしてトロットが珍しい話題を続ける。
「最近不思議な事が多くてな。嫌な夢を見ているようだ。寝ぼけているような気分だ。何だか、ニーニャも娘達も年を取らないどころか、娘達等赤ん坊に戻ったりする。家がわからず街をさまよったり、家に帰っても他人が住んでいて家族がいなくなっていたり… ま、夢なんて理屈はないだろうが… 嫌な夢をたまに見る気分だ。俺、変かな?はっはっは」トロットが笑い飛ばす。
「……… トロット、大丈夫よ。リリアだってそんな夢を見る事ある。誰でも見るような夢よ…」リリアはミルクを飲みながら少し涙を拭った。
時々トロットがかつて住んでいた家の前に立っているのが思い出される。
「ごめんなさい、あたし仕事に行かないと」リリアは席を立つ。言葉のかけようもない。
「妙な気分だな… 家族が… リリア、またサントコ〇ナルから戻ったら」
トロットに黙礼をするとリリアは足早に酒場を後にした。
その後、トロットはバーに姿を見せなくなった。
聞くとリリアと話をしていた後、フラフラと酒場を後にしてそれっきりだそうだ。
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