勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【95.5話】 お疲れ様藁君

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今日は、リリアの旅に1ヶ月近くお供した藁君の話し。
リリアが藁君と命名したが、リリアは一度ルーダ・コート街外で、練習相手に藁人形をクリエイトして暴走させている。今回の藁君は正確に言うと藁君二世。



その前にリリア達。
ドラゴン・リザードを退治して村を出発したリリア一同。
ボッドフォートの内乱を避け往路より領内をだいぶ東に避けるルートを選択。
フリートの国境監視所では名誉市民で問題無く出国、フリートに属するボッドフォートも無問題。深い森、緑の山を抜け政治問題に関わらない道のりだが、大型動物、魔物を退けながらの帰路。
寂れた、田舎道で集落に宿泊しながら、ルーダ・コートに無事到着。
リリア達の勇者のルーツを巡る旅の終わりと同時に藁君も役目を終える、


「藁君は城壁内に連れ込めないからここで、お役御免にしてあげましょう」オフェリアが言う。
ここはルーダ・コートの街外れ。リリア達は道を外れ、藁君の解呪のためここに足を止める。
「良く働いてくれたわねぇ、文句も言わず」リリアが感慨深げに言う。
「結局リリアが焦がしたダメージが一番大きいけどね」ペコが静かに笑う。

リリアより少し背が高い藁君。
重い荷物を背負い、肩と腕周りはすっかり擦り切れて藁がボロボロとささくれ立っている。腕の長さ足の長さもマチマチになってしまっている。何度も矢を受け、魔物に噛まれたり、切られたり、リリア達の怪我を何割か負担してくれたのだ。
全身藁が解れ、薄汚れ切り傷だらけで、未だに荷物を担いでドタドタとリリア達に付き従う。
藁君に停止を命令し、荷物を下ろしてあげ、皆で荷物を仕分けする。ドロップアイテムやら、必要なくなったグッズ等をわけて、ここからは短い距離だが自分達で町中まで運ばなければいけない。

傾く夕日を受けて棒立ちの藁君。
「…… じゃ、リリア、藁君止めるよ」ペコが言う。
「… 何で、あたしに… リーダーはオフェリアよ」リリアがポツリと言う。
「… 1ヶ月よくがんばったわね。リリアの気持ちわからなくないよ」
オフェリアが停止許可をだすと、ペコが藁君に停止命令を出す。

“ドサ!!”

棒立ちしていた藁君が大の字に草原に倒れ込んだ。
「ほんと、よくがんばったねぇ、こんなになるまで」リリアは涙ぐんでいる。
「ありがとう」一同がお礼を述べる。
藁君はクリエイトしたクリーチャー。このまま放置は出来ない。この手のクリーチャーは長期運用をおすすめされていない。悪堕ちして人を襲う可能性が高まるとされているのだ。誰かが再利用でも試みておかしなことになってもいけない。消滅させなければならない。

草むらに大の字に転がり微動だにしなくなった藁君、オレンジの日を受け、短く長い影を作る姿は藁君なりの活躍の日々と迫りくる終焉を誇り、憂いているようでもある。
少なくともリリアにはそう見える。
「リリア、良いわね、消滅させる時よ、自分で唱える?」あまりにリリアが名残惜しそうなのでアリスが促す。
「いいわよ… やっちゃってよ… どうせ藁人形よ」リリアがポツリと答える。

“ボッ!!”
アリスが消滅の呪文を唱えると藁君に火がつく。メラメラと燃え広がる。
「藁人形なのに、一緒に旅しただけでこんなに悲しい物なのね」リリアが声を落とす。オフェリア達も感傷的になる。
藁君はメラメラと無に帰るように燃え尽きていく。全身が炎に包まれる。
その時だった…

「リ・リ・ア・ちゃ・ん。いままで、ほんとうに、ありがとう。ぼくを、だいじにしてくれて、うれしかった。ぼくも、きみと、たびできたこと、たのしかった」
「…………! 藁君!藁君!あたしよ!リリアよ!わかるの?あたしも藁君と過ごせて楽しかった、荷物持ってくれて、身を盾にしてくれて本当にありがとう!」
リリアはとうとうボロボロと涙を流して泣き始めた。
「リ・リ・ア・ちゃ・ん。ほんとうに、ありがとう。かんしゃ、かんげき、あめあられ」
「藁君、ありがとう!話せるならもっと早くから話してくれればよかったのに…」
泣き崩れるリリアの傍らで藁君は燃え尽きていく…


リリア達は大きな荷物を抱え歩く。城門までもう少し。
「ねぇ、ペコ、やり過ぎよ。リリアすっかり藁君がしゃべったと思い込んじゃったじゃない」アリスがペコにヒソヒソと言う。
「あんなに信じ込むと思わなかった。最初はちょっと調子合せていると思っただけよ。そんなに真に迫ってた?」ペコ苦笑い。
「愛は万物に届くのね。今日はバー・ルーダの風でコトロの手料理よ!」
結構元気にリリアは歩いて行く。
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