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【69話】 寝込んだ勇者
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オフェリアは道端で目を覚ました。どうやら日の出の少し前のようだ。
昨晩はリリアがなかなか寝てくれなかったし、野宿は危険が多いのでオフェリアはあまり寝付けなかったが、リリアが眠りについてからいつの間にか寝ていたようだ。
「…リリア?」抱えていたリリアがいない…
と、思ったら少し先の道端でクークーいびきを立てて寝ていた。全く…
リリアを起こして次の村に向かったものか思案したが、リリアは熟睡しているようだ。まだ起こさない方が良そうだ。
オフェリアはリリアを道端に移動して待機していた。朝日が昇り、体がポカポカする。オフェリアはウトウトと二度寝に入った。
「おい!お姉さん!あんた、大丈夫か?」
声をかけられてオフェリアは起きた。見ると男が数名自分を覗き込んでいる。
商人のキャラバンが通りすがりに倒れている自分達を見つけて声をかけてくれたようだ。恐らくホイルテッドを出発したところだろう。
「こんな場所で… 行き倒れかと思ったよ」と笑っている。
リリアを起こして、荷台に乗っけてもらう。リリアはまだ調子悪そうだ。茫然としている。
「そっちのお姉ちゃんは、二日酔いかい?ずいぶん具合わるそうじゃないか、駄賃はよいから乗ってきな」と言って貰えるので、ありがたく次の村まで乗車させてもらった。
村の宿に宿泊してから一週間
リリアはすっかり参ってしまって一週間ほぼベッドに臥している。自分のせいで人とゴブリンが死んだのが相当ショックだったようだ。少し飲み食いする以外、完全に寝込んでしまった。
また変な物を飲まないようにポーション類等は全部リリアから取り上げた。
オフェリアが声をかけ、食事させるが茫然とした感じでほとんど返事さえできない。
“リリアなら立ち直るかと思っていたら… このままでは、リリアはダメになってしまう。餓死さえしかねない。リリアを良く知っているギルメンなら何とかしてくれるかも”
かといって、リリアを置いて自分だけルーダ・コートに行くわけにはいかない。今の状態のリリアを連れて行けるだろうか?
オフェリアがリリアの荷物を整理していたら、小さなハードカバーの本が出てきた。
「ユービリーンの女勇者」とタイトルが書かれてある。
歯医者さんの待合室などに置かれているのを見たことある物語だ。
ユービリーンと言う町に流れ着いた女勇者が女とバカにされながらも最後は町の人達に受け入れられるといった典型的な物語。リリアはこういう事に憧れを持っているのだろうか?
「バカバカしい、物語よ、こんなの…」オフェリアは呟くが、リリアの気持ちはわかる。
オフェリアも勇者の血筋を引いていると親から聞かされ、一時は周りの期待を感じたことも、自分はやれば他人にできない何かをやれると思ったことがあった。
ただ、オフェリアの場合は諦めも早かった。勇者たる事は何をやっても及第点いくかいかないか、両親も「結婚して平凡な幸せが良いよ」と言っている矢先に孤児になって冒険者ギルドに入ったまでだ。
考えてみれば、リリアはかわいそうだ。
本来なら冒険者として、一般人が個人では解決不可能な問題を一人で、あるいは仲間を引き連れて解決していった結果、勇者と周りに認められるものなのだ。
それが、リリアは勇者の子孫ということで、国の都合により勇者にされ、周囲から勇者として見られているが、たかだか村育ちの17歳の小娘に過ぎない。
勇者にされたその17歳の小娘が、これから勇者という認識に見合った働きをしようと勢い込んでいる。順番が逆さまになっている。いや、順を辿れば、リリアは勇者と呼ばれるような実力の人間ではないのだ。
リリアのアイディアは良かった。ただ、勇者っぽい解決方法では無かったことと、リリア自身が若すぎて信用を得られなかった。それにしてもゴブリンの方がよっぽどリリアの話を真剣に聞いてくれていた。人間ときたら全く情けない。
オフェリアにだって、リリアの考えは賛同できた。敵も同志も多くの血が流れるのを見てきた。失った仲間の数だって数えられない。
出来れば、誰かが死ぬこと等望んでもいない。ゴブリンさえ、共同で住んでみる気になりかけていた。村人ときたら、自分たちの利益のことばかり…
「… リリア、明日チェックアウトしてルーダ・コートに戻るわ。良い?」オフェリアは決心してリリアに声をかけた。
リリアは聞いているのか、いないのか、返事がない。
オフェリアが宿のカウンターに行くと、女性冒険者二人がカウンターで宿主と話をしている。
“魔法使いにプリーストか。まだ早い時間だけどチェックインかな?”オフェリアは大して気にも留めず順番待ちに後ろに並ぶ。
「背が高くって、こう… ポニーテールで。弓を持った、気の強そうな娘よ。ここに居ない?リリアっていうの」女が店主に聞いている…
「……… リリア?リリアって言ったの? いる!いるいる!部屋よ、私の部屋にいるわよ!」
オフェリアが慌てて声をかけると、魔法使いとプリーストは驚いて振り返った。
昨晩はリリアがなかなか寝てくれなかったし、野宿は危険が多いのでオフェリアはあまり寝付けなかったが、リリアが眠りについてからいつの間にか寝ていたようだ。
「…リリア?」抱えていたリリアがいない…
と、思ったら少し先の道端でクークーいびきを立てて寝ていた。全く…
リリアを起こして次の村に向かったものか思案したが、リリアは熟睡しているようだ。まだ起こさない方が良そうだ。
オフェリアはリリアを道端に移動して待機していた。朝日が昇り、体がポカポカする。オフェリアはウトウトと二度寝に入った。
「おい!お姉さん!あんた、大丈夫か?」
声をかけられてオフェリアは起きた。見ると男が数名自分を覗き込んでいる。
商人のキャラバンが通りすがりに倒れている自分達を見つけて声をかけてくれたようだ。恐らくホイルテッドを出発したところだろう。
「こんな場所で… 行き倒れかと思ったよ」と笑っている。
リリアを起こして、荷台に乗っけてもらう。リリアはまだ調子悪そうだ。茫然としている。
「そっちのお姉ちゃんは、二日酔いかい?ずいぶん具合わるそうじゃないか、駄賃はよいから乗ってきな」と言って貰えるので、ありがたく次の村まで乗車させてもらった。
村の宿に宿泊してから一週間
リリアはすっかり参ってしまって一週間ほぼベッドに臥している。自分のせいで人とゴブリンが死んだのが相当ショックだったようだ。少し飲み食いする以外、完全に寝込んでしまった。
また変な物を飲まないようにポーション類等は全部リリアから取り上げた。
オフェリアが声をかけ、食事させるが茫然とした感じでほとんど返事さえできない。
“リリアなら立ち直るかと思っていたら… このままでは、リリアはダメになってしまう。餓死さえしかねない。リリアを良く知っているギルメンなら何とかしてくれるかも”
かといって、リリアを置いて自分だけルーダ・コートに行くわけにはいかない。今の状態のリリアを連れて行けるだろうか?
オフェリアがリリアの荷物を整理していたら、小さなハードカバーの本が出てきた。
「ユービリーンの女勇者」とタイトルが書かれてある。
歯医者さんの待合室などに置かれているのを見たことある物語だ。
ユービリーンと言う町に流れ着いた女勇者が女とバカにされながらも最後は町の人達に受け入れられるといった典型的な物語。リリアはこういう事に憧れを持っているのだろうか?
「バカバカしい、物語よ、こんなの…」オフェリアは呟くが、リリアの気持ちはわかる。
オフェリアも勇者の血筋を引いていると親から聞かされ、一時は周りの期待を感じたことも、自分はやれば他人にできない何かをやれると思ったことがあった。
ただ、オフェリアの場合は諦めも早かった。勇者たる事は何をやっても及第点いくかいかないか、両親も「結婚して平凡な幸せが良いよ」と言っている矢先に孤児になって冒険者ギルドに入ったまでだ。
考えてみれば、リリアはかわいそうだ。
本来なら冒険者として、一般人が個人では解決不可能な問題を一人で、あるいは仲間を引き連れて解決していった結果、勇者と周りに認められるものなのだ。
それが、リリアは勇者の子孫ということで、国の都合により勇者にされ、周囲から勇者として見られているが、たかだか村育ちの17歳の小娘に過ぎない。
勇者にされたその17歳の小娘が、これから勇者という認識に見合った働きをしようと勢い込んでいる。順番が逆さまになっている。いや、順を辿れば、リリアは勇者と呼ばれるような実力の人間ではないのだ。
リリアのアイディアは良かった。ただ、勇者っぽい解決方法では無かったことと、リリア自身が若すぎて信用を得られなかった。それにしてもゴブリンの方がよっぽどリリアの話を真剣に聞いてくれていた。人間ときたら全く情けない。
オフェリアにだって、リリアの考えは賛同できた。敵も同志も多くの血が流れるのを見てきた。失った仲間の数だって数えられない。
出来れば、誰かが死ぬこと等望んでもいない。ゴブリンさえ、共同で住んでみる気になりかけていた。村人ときたら、自分たちの利益のことばかり…
「… リリア、明日チェックアウトしてルーダ・コートに戻るわ。良い?」オフェリアは決心してリリアに声をかけた。
リリアは聞いているのか、いないのか、返事がない。
オフェリアが宿のカウンターに行くと、女性冒険者二人がカウンターで宿主と話をしている。
“魔法使いにプリーストか。まだ早い時間だけどチェックインかな?”オフェリアは大して気にも留めず順番待ちに後ろに並ぶ。
「背が高くって、こう… ポニーテールで。弓を持った、気の強そうな娘よ。ここに居ない?リリアっていうの」女が店主に聞いている…
「……… リリア?リリアって言ったの? いる!いるいる!部屋よ、私の部屋にいるわよ!」
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