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【13.5話】 狼事件後 ※過去の話し※
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狼騒ぎから数日経った。
リリアはしばらく家でゴロゴロしていた。母メルの治癒魔法のおかげですっかりリリアもショウも元気になっていたが、リリアはここのところあまり出歩かなかった。外出禁止ではなかったが、なんだか出歩く気になれなかったリリア… そろそろムズムズと山に行きたくなってきた。リリアが家にいるとメルは
「村一番の安全はお前が家でじっとしてくれている事だよ」と妙に安心しているようだった。
リリアはそんなメルの側で薬草作りの手伝いをしている。効果を高めて村に行商が来た時に売るためだ。煮たり干したり磨り潰したりするのである。家には薬草の香りがしていて、リリアにはこれがメルの腕の中にいる時の香りでもある。
リリアはすり鉢で乾燥薬草をゴリゴリしながら考えている。
“なぜ誰も怒らないのだろう?”リリアもショウも死にかけたのである。はっきり言えば、リリアの無鉄砲でショウまで死に目にあったのである。普段ならリリアがちょっと不穏な動きをみせただけで、徒党を組むようにして叱ってくるのだが、今回は誰も何も言わない。父ガウなんて怒涛の如く頭突きをかまして来てもよさそうだが…
ガウはゲンコツではなくて頭突きするのだ。それも半端な頭突きではない。
「覚悟しろ」と低く言うと、リリアの頭をつかんで “ガッチン”とものすごい頭突きをかます。新たな星座が誕生したのではないかと思えるほど、リリアの目から星が飛び散る思い。
ある日、リリアは目を白黒させながらガウに
「父さんはなんで頭突きなの?」と聞いたことがある。ゲンコツ派の家庭がうらやましく思える。
「お前も痛いだろうが、俺も同じ場所が同じ程度痛い」と言われた。なるほどとは思ったが、同じ程度の痛みかと言われたら絶対に父はそうではないと思える。もし本当にこんなに痛いならしない方が良い。リリアは頭突きされた後はかならずメルの傍らで大人しく薬草作りを手伝っていた。
リリアは聞いてみた・
「母さん、父さんも母さんも怒らないの?」
「… お前、また夜に山に行くかい?同じ事をするかい?」
「……」 リリアは小さく頭を振る。
「そうだろ、同じことを二度としないだろう。父さん、母さん、村の大人が怒らなくても同じ事はしないだろう」メルは静かに言う。
「……」確かにその通りだ。絶対にあんな事は二度としない。
「なら誰かが叱らなくてもお前は学んだんだ。今回は山と泉と狼がお前に教えてくれたんだ… そう思うだろ?」
リリアはジッと黙って聞いている。
「学んで成長した… 後は言うことはないよ」メルが言葉を切った。
「っト!」リリアは椅子から飛び降りると装備を付けて弓を持ちだした。山が呼んでいる。
その様子を見たメルはちょっと安心、ちょっと不安、半ば呆れた表情でリリアに言う。
「お前、山に行くのかい?」
リリアは弓を手に口を結んで立っていが
“そろそろいいでしょ?”と甘えているような表情だ。
「フゥ… あんたは言っても聞かないだろうねぇ…」ため息をつくメル。
「リリア、いいかい、だいたいの人間は学んだ瞬間には死んでいるんだ。生かされたお前は次からもっとよく考えるんだよ」
リリアはジッと立っている。
「… はい、お母様…」そう小さく答えるとリリアは外に出ていった。
村から山に向かうリリア。山が青くて素晴らしい、足も早まる。
リリアは歩きながら考える、
“実際、メルの一撃はガウの頭突きより強いんじゃないだろうか?”そんな気がする。
虹色蝶が舞いながらリリアの前を去っていった。リリアにしたら久しぶりの挨拶のように見えた。
リリアはしばらく家でゴロゴロしていた。母メルの治癒魔法のおかげですっかりリリアもショウも元気になっていたが、リリアはここのところあまり出歩かなかった。外出禁止ではなかったが、なんだか出歩く気になれなかったリリア… そろそろムズムズと山に行きたくなってきた。リリアが家にいるとメルは
「村一番の安全はお前が家でじっとしてくれている事だよ」と妙に安心しているようだった。
リリアはそんなメルの側で薬草作りの手伝いをしている。効果を高めて村に行商が来た時に売るためだ。煮たり干したり磨り潰したりするのである。家には薬草の香りがしていて、リリアにはこれがメルの腕の中にいる時の香りでもある。
リリアはすり鉢で乾燥薬草をゴリゴリしながら考えている。
“なぜ誰も怒らないのだろう?”リリアもショウも死にかけたのである。はっきり言えば、リリアの無鉄砲でショウまで死に目にあったのである。普段ならリリアがちょっと不穏な動きをみせただけで、徒党を組むようにして叱ってくるのだが、今回は誰も何も言わない。父ガウなんて怒涛の如く頭突きをかまして来てもよさそうだが…
ガウはゲンコツではなくて頭突きするのだ。それも半端な頭突きではない。
「覚悟しろ」と低く言うと、リリアの頭をつかんで “ガッチン”とものすごい頭突きをかます。新たな星座が誕生したのではないかと思えるほど、リリアの目から星が飛び散る思い。
ある日、リリアは目を白黒させながらガウに
「父さんはなんで頭突きなの?」と聞いたことがある。ゲンコツ派の家庭がうらやましく思える。
「お前も痛いだろうが、俺も同じ場所が同じ程度痛い」と言われた。なるほどとは思ったが、同じ程度の痛みかと言われたら絶対に父はそうではないと思える。もし本当にこんなに痛いならしない方が良い。リリアは頭突きされた後はかならずメルの傍らで大人しく薬草作りを手伝っていた。
リリアは聞いてみた・
「母さん、父さんも母さんも怒らないの?」
「… お前、また夜に山に行くかい?同じ事をするかい?」
「……」 リリアは小さく頭を振る。
「そうだろ、同じことを二度としないだろう。父さん、母さん、村の大人が怒らなくても同じ事はしないだろう」メルは静かに言う。
「……」確かにその通りだ。絶対にあんな事は二度としない。
「なら誰かが叱らなくてもお前は学んだんだ。今回は山と泉と狼がお前に教えてくれたんだ… そう思うだろ?」
リリアはジッと黙って聞いている。
「学んで成長した… 後は言うことはないよ」メルが言葉を切った。
「っト!」リリアは椅子から飛び降りると装備を付けて弓を持ちだした。山が呼んでいる。
その様子を見たメルはちょっと安心、ちょっと不安、半ば呆れた表情でリリアに言う。
「お前、山に行くのかい?」
リリアは弓を手に口を結んで立っていが
“そろそろいいでしょ?”と甘えているような表情だ。
「フゥ… あんたは言っても聞かないだろうねぇ…」ため息をつくメル。
「リリア、いいかい、だいたいの人間は学んだ瞬間には死んでいるんだ。生かされたお前は次からもっとよく考えるんだよ」
リリアはジッと立っている。
「… はい、お母様…」そう小さく答えるとリリアは外に出ていった。
村から山に向かうリリア。山が青くて素晴らしい、足も早まる。
リリアは歩きながら考える、
“実際、メルの一撃はガウの頭突きより強いんじゃないだろうか?”そんな気がする。
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