上 下
153 / 350
- 第四期・大陸を越えて -

第153話 反連合軍・其之弐

しおりを挟む
バーチ軍900万のうち、先陣の300万が突撃を開始した。

バラーキ軍50万に緊張が走るなか、勇者が、

『これより、皆さんに、クレリックの“加護”を授けます。』
『私たちが勝利を約束しますので、落ち着いて対処してださい。』

と、【伝言】で告げた。

正直、勝負の行方は彼女にも分からない。

最悪、敗北を喫するかもしれない。

誰もが冷静になってくれなければ、勝てない可能性が高くなるであろう。

〝勝利を約束〟するという言葉は、半ば“ハッタリ”だった。

いや、頭が良い生徒会長にしてみれば、戦略的計算みたいなものである。

生物は緊張すると筋肉がこわばり縮こまってしまう。

その状態では、まともに戦えないのは明らかだ。

なので、勇者は、バラーキ軍を、ある程度リラックスさせたかったのだろう。

そんな彼女が、右手に握っている中剣を高々と掲げた。

後ろを振り返り、

「クレリックは“加護”を!」
「異世界召喚組の魔法系や狙撃手などは、攻撃の準備をしてください!」

との指示を出す生徒会長に従い、【クレリックランサー】の一年生書記を始めとした班が加護を発動していく。


バーチ軍の先陣が、およそ100Mの距離まで迫って来たところで、勇者が剣を〝ブンッ!〟と下ろしながら、

「撃てぇ――ッ!!」

と号令する。

この合図にて、炎・水・氷・風・雷の魔法や魔銃マガンに、矢などが飛んでいく。

それらが次々と当たった敵兵や軍馬が転倒していくなかで、

ズドォオオオンッ!!!!

といった爆発が起きた。

これは、弓士きゅうしである二年生の[爆裂の弭槍はずやり]によるものだ。

「今度は左右に散らしてください!」

生徒会長が促す。

出鼻をくじかれた事によって、敵の中央隊は進軍を止めたが、難を逃れた左翼隊と右翼隊は意に介さず殺到してきている。

彼女は、それを討ちたかったのだ。

遠距離型の新たな攻撃で、相手の左右にも崩れが見受けられた。

その間に中央隊が態勢を整え直していくも、

「させません!」

と、相手の頭上10Mぐらいの位置に、直径5Mの魔法陣を構築した勇者が、100本ほどの雷を落としたのである。

そんな彼女が、

「行きましょう。」

と歩き出し、全員が後に続いた…。


こちらの左方では、三年生のウィッチ魔女が、

「ズゥ~ット、オトナシクシテテクダサァイ。」

と、地面に直径4Mの魔法陣を展開して、それと同じ幅の“炎柱”を、

ズボオオォォ―ッ!!

と出現させたようだ。

クレリックランサーに進化したことに伴い、新たな魔法を収得している一年の生徒会書記が、直径4.5Mの魔法陣を構築した。

そこ・・から、幅4㎝×長さ20㎝の【光線ビーム】を、50本ほど、

ビュンッ! ビュンッ! ビュンッ! ビュンッ! 

と、放ったのである。


右方では、【アサシン】の二年生書記が、“挑発”や“残影”を駆使して翻弄しつつ、確実に仕留めていっているようだ。

更には、一年の【武術士】が、

「うおりゃぁあッス!」

と、右拳のアッパーを繰り出した。

これに反応した[風撃ふうげきの鉄甲]によって、最小幅40㎝×最大幅4M×高さ8Mの“竜巻”が発生し、周囲の敵を吹き飛ばしたのである。


他のメンバーの活躍もあって、バラーキ軍の士気が上がり、一気に押せ押せムードになっていく。

それを打開すべく、第二陣の300万を投入するバーチ軍であった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...