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Chapter 1/最初の国
№37 曲りなりに。
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クマッシーが振り下ろした[木製の大楯]が、“黒人の男性戦士”の胸元にヒットする。
若干ふらついた戦士は、クマッシーに大楯ごと体当たりされた事によって、3歩ほど退がった。
この様子を見ていたカリンに、[黒人女性の弓術士]が矢を放つ。
顔に飛んで来た矢に〝ハッ!!〟としたカリンは、ギリギリで躱せたようだ。
「危なかったぁ~。」
取り敢えず安堵したカリンは、黒人女性が新たに弦を引き絞っていることに気づき、構え直した。
その間に、ヤトによって[ヒットポイント]を削られ続けた“赤髪ソフトリーゼントの武闘家”が、両膝を着いて、項垂れる。
更には、全身が半透明になっていた。
これは[戦闘不能]を意味する。
そうした状態の敵を攻撃したとて、すり抜けるだけで、ダメージを追加する事はできない。
「うっし!」
左の拳を握り締めたヤトは、むこうの[アーチャー]へと走りだした。
危険を察知した[黒人弓術士]は、標的をカリンからヤトに変える。
右肩に矢が刺さってしまい、
「ぃぎッ!!」
少なからず痛がったヤトが足を止めてしまう。
ここを改めて狙おうとするアーチャーに、
「させない。」
そう呟いたカリンが、矢を射った。
上半身を反らして回避した敵へと、ヤトが再び駆けだす。
相手は、すぐさま射撃の体勢に移ろうとする。
しかし、これよりも先に距離を縮めたヤトが、そのままの勢いで[木刀]を横に払い、左腹部にヒットさせた。
どうやら“クリティカルダメージ”になったみたいだ。
このチャンスを逃すまいとするヤトであった。
そうした状況下で、ニケが“白人の男性騎士”を倒している。
敵が[戦闘不能]になったのを見届けたニケが、後ろを振り返った。
彼の目に映ったのは、“女性武士”と木刀で打ち合うセブンである。
しかし、セブンは武器が短めなので、いささか不利のようだ。
ここへダッシュしたニケが、
「ていッ!」
左手の[棍棒]で、武士の背中を殴る。
そうして、敵を挟み撃ちにしていくニケとセブンだった…。
もう一度エイトに喚ばれた[雷の精霊]によって感電した“白人女性アサシン”が左膝を地に着く。
エイトが長さ50㎝程の[マジックワンド]で、
「えいッ、えいッ。」
アサシンの左肩を〝ポカ ポカ〟と叩くも、如何せん[細めの樫]のため、たいして効いていない。
これを視界に捉えたカリンが、矢を放って援護してゆく。
一方、黒人弓術士の動きも停止させたヤトは、女性武士と戦っているニケ&セブンの真横を全速力で通過して、クマッシーに合流したのである……。
勝利を収めた[イッチューズ]は、コロッセウムの外に転送された。
既に夜となっており、闘技場の周囲では幾つもの“篝火”が煌々と輝いている。
そうしたなかで、頭上に[金色のダイヤマーク]が現れている““赤髪ソフトリーゼント&ツーブロック”の青年に、
「イヤリング、渡してもらえるか?」
このように声をかけた。
すると、
「ふぅ――。」
「まさか、負けちまうとはな。」
「……、ま、約束しちまったもんはしょうはねぇ。」
「ほらよ。」
“赤髪ソフトリーゼント”がイヤリングを握った右手を差し出してきたのである。
それをヤトが受け取るなり、
「じゃあな。」
不良仲間と共に〝フッ!!〟と消える“赤髪”であった。
きっと何処かしらに【テレポート】したのだろう。
「はぁ~、疲れたぁ。」
カリンが独り言を口にしたところ、
「確かにね。」
セブンと、
「私もぉ。」
エイトが、同意したのである。
「一旦、HPとかを回復しておきたいし…。」
「ギルドに寄ったあと、宿屋に行ってみるか??」
ニケに訊かれて、
「んー、それも、ありかもな。」
頷いたヤトが、
「他には〝食堂で休憩する〟という手もあるが……。」
クマッシーに視線を送った。
「僕はどっちでも構わないよ。」
「ゲームの世界で何かを食べても、別にお腹が溜まる訳じゃないしね。」
「いや、そもそも今は空いていないし。」
このようにクマッシーが述べたら、
「じゃ、宿屋で決まりな。」
「クエストの報告をしてから、そっちに向かおうぜ。」
方針を定めて、[地図]を開くヤトだった―。
若干ふらついた戦士は、クマッシーに大楯ごと体当たりされた事によって、3歩ほど退がった。
この様子を見ていたカリンに、[黒人女性の弓術士]が矢を放つ。
顔に飛んで来た矢に〝ハッ!!〟としたカリンは、ギリギリで躱せたようだ。
「危なかったぁ~。」
取り敢えず安堵したカリンは、黒人女性が新たに弦を引き絞っていることに気づき、構え直した。
その間に、ヤトによって[ヒットポイント]を削られ続けた“赤髪ソフトリーゼントの武闘家”が、両膝を着いて、項垂れる。
更には、全身が半透明になっていた。
これは[戦闘不能]を意味する。
そうした状態の敵を攻撃したとて、すり抜けるだけで、ダメージを追加する事はできない。
「うっし!」
左の拳を握り締めたヤトは、むこうの[アーチャー]へと走りだした。
危険を察知した[黒人弓術士]は、標的をカリンからヤトに変える。
右肩に矢が刺さってしまい、
「ぃぎッ!!」
少なからず痛がったヤトが足を止めてしまう。
ここを改めて狙おうとするアーチャーに、
「させない。」
そう呟いたカリンが、矢を射った。
上半身を反らして回避した敵へと、ヤトが再び駆けだす。
相手は、すぐさま射撃の体勢に移ろうとする。
しかし、これよりも先に距離を縮めたヤトが、そのままの勢いで[木刀]を横に払い、左腹部にヒットさせた。
どうやら“クリティカルダメージ”になったみたいだ。
このチャンスを逃すまいとするヤトであった。
そうした状況下で、ニケが“白人の男性騎士”を倒している。
敵が[戦闘不能]になったのを見届けたニケが、後ろを振り返った。
彼の目に映ったのは、“女性武士”と木刀で打ち合うセブンである。
しかし、セブンは武器が短めなので、いささか不利のようだ。
ここへダッシュしたニケが、
「ていッ!」
左手の[棍棒]で、武士の背中を殴る。
そうして、敵を挟み撃ちにしていくニケとセブンだった…。
もう一度エイトに喚ばれた[雷の精霊]によって感電した“白人女性アサシン”が左膝を地に着く。
エイトが長さ50㎝程の[マジックワンド]で、
「えいッ、えいッ。」
アサシンの左肩を〝ポカ ポカ〟と叩くも、如何せん[細めの樫]のため、たいして効いていない。
これを視界に捉えたカリンが、矢を放って援護してゆく。
一方、黒人弓術士の動きも停止させたヤトは、女性武士と戦っているニケ&セブンの真横を全速力で通過して、クマッシーに合流したのである……。
勝利を収めた[イッチューズ]は、コロッセウムの外に転送された。
既に夜となっており、闘技場の周囲では幾つもの“篝火”が煌々と輝いている。
そうしたなかで、頭上に[金色のダイヤマーク]が現れている““赤髪ソフトリーゼント&ツーブロック”の青年に、
「イヤリング、渡してもらえるか?」
このように声をかけた。
すると、
「ふぅ――。」
「まさか、負けちまうとはな。」
「……、ま、約束しちまったもんはしょうはねぇ。」
「ほらよ。」
“赤髪ソフトリーゼント”がイヤリングを握った右手を差し出してきたのである。
それをヤトが受け取るなり、
「じゃあな。」
不良仲間と共に〝フッ!!〟と消える“赤髪”であった。
きっと何処かしらに【テレポート】したのだろう。
「はぁ~、疲れたぁ。」
カリンが独り言を口にしたところ、
「確かにね。」
セブンと、
「私もぉ。」
エイトが、同意したのである。
「一旦、HPとかを回復しておきたいし…。」
「ギルドに寄ったあと、宿屋に行ってみるか??」
ニケに訊かれて、
「んー、それも、ありかもな。」
頷いたヤトが、
「他には〝食堂で休憩する〟という手もあるが……。」
クマッシーに視線を送った。
「僕はどっちでも構わないよ。」
「ゲームの世界で何かを食べても、別にお腹が溜まる訳じゃないしね。」
「いや、そもそも今は空いていないし。」
このようにクマッシーが述べたら、
「じゃ、宿屋で決まりな。」
「クエストの報告をしてから、そっちに向かおうぜ。」
方針を定めて、[地図]を開くヤトだった―。
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