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黎明期

第66話 派生③

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オレは、ロトーゾ・ルヴェッキ。

父は[ルヴェッキ商会]の二代目を務めている。

オレ自身は、その次男だ。

なお、商会は[ルゴカータ王国]の港町に拠点を構えてきた。

ルゴカータは、この世界の南東に位置する[サウスト大陸]に存在している。

さて…。

祖父の時代から、貿易を中心として、国内の王族貴族とも商売を行ない、かなり稼いでいてきたので、店は大きい。

その店舗の側に建てられている自宅は、豪邸だ。

こうした環境で、オレは何不自由なく育ってきた。

そんなオレが二十歳を過ぎた或る日のこと、父親に「社会勉強のために国外の各地を巡ってあきないをやってみろ」「まずは近場でいいから」と促されたのである。

……、正直メンド―だ。

冒険とか、危ない印象しかないし。

オレは、なるべく、地元で〝ぬくぬく〟していたい!!

だが、ふと思った。

ここで実績を上げて、認めてもらえれば、大きな仕事を幾つも任せてもらえるようになるのでは?

そうして結果を出し続ければ、兄ではなく、オレが跡を継げるかも??

と…。

このため、オレは、旅立つことにしたのだ。

従業員と召使を、二名ずつ連れて。

家から出発したオレ達は、護衛を雇うべく、一旦、[冒険者ギルド]に足を運ぶ。

[窓口]にて。

料金を惜しみ、できるだけ安い連中を頼んだ。

すると、“受付嬢”に「それでしたらペーパー級かウッド級になります」と言われた。

クラス的に最も低い“ペーパー”は不安でしかない。

よって、“ウッド”にしたのである。

白人と黒人が半数ずつの計4名で、全員が男性だ。

そうして、オレたちは、商会が何艘なんそうも所有している[貿易船]のなかでも小型なものに乗り込んだのである。

ちなみに、船長と操縦士は1人ずつで、船員は2人だ。

余談になるかもしれないが、オレは、【魔法】はもとより【スキル】を全くもって扱えない。

父は[闇属性の魔法]を、兄は[剣術・壱]を、生まれ持っている。

あと、どちらにも【亜空間収納アイテムボックス】が備わっていた。

……、なんか不公平じゃないか?

まぁ、いいけど…。

べ、別に拗ねてなんかないんだからな!

【アイテムボックス】とか以外であれば、“鍛錬”や“実戦”によって得られるみたいだけど、商家だから経験がないだけだし??

商いに関して学ぶのを重要視されているわけであって、他は優先事項じゃないから、仕方ないだろ?

オレだって、励みさえすれば、何かしらの【魔法】に【スキル】が開花するかもしれないもんッ!!

…………。

すまない。

取り乱してしまった。

話しを戻そう。

今回の顔ぶれのかなでは、従業員の1人だけが【亜空間収納】の“小規模”を使える。

冒険者達は、各自、【戦闘スキル】を二つ扱えるそうだ。

こういった状況で、数ヶ月かけて西方面の島を三つほど回った。

その流れで、[タケハヤしま]の南側に在る“港町”に寄ってみたのだ……。

久しぶりに1人になりたかったオレは、[スブキィ]の宿屋に成員を残し、町を散策してみた。

そうしたところ、[チキュウビストロ・ルワーテ]とやらに行列が見受けられたのである。

飲食店で、このような現象は、あまりにも珍しい。

個人的には初めてだ。

興味を惹かれたオレは、すぐに並んでみた…。

注文した“カラアゲセット”なるものを食べてみる。

……、なんだこれは??!

美味すぎるぅ――ッ!!

衝撃と感動に震えたオレは、どの品についても調理法を教えてもらうことにした。

それらを実家に伝えれば、高く評価してもらえるに違いないからだ!

うちで事業展開したら、莫大な利益に繋がるだろう。

となれば、貢献したオレこそが、ゆくゆくは当主になれるに違いない!!

こう考えたオレは、店長に懇願した。

しかし、かたくなに首を縦に振ろうとはしなかったのである。

だが、オレは知っていた。

数分前に、家族であろう“ハイドワーフ4人組”が、[別室]に案内されていたのを。

あの時、店員に質問していたのは、少年だった。

つまり、〝子供であれば問題ない〟ということではないか?

そう判断したオレは、後日、街中で暇そうにしている“男子2人”に声をかけ、[ルワーテ]に赴かせた。

計二枚の銀貨を持たせて。

これだけでなく、「成功した暁には1人につき金貨一枚を与えてやる」と約束したのである…。

暫くして、店から少し離れた位置で待機していたオレのもとへ、少年らが姿を現した。

いささか怯えた様子で「報酬は要らない」と告げるなり、何処へともなく走り去っていく。

お釣りを返さないままに。

のッ、ガキどもめ!

追い掛けようとしたオレではあったが、土地勘がないので、やめておいた……。

翌日、例の冒険者たちと、[ルワーテ]に怒鳴り込んだ。

所詮は料理人の集まり、脅せば泣きつくだろう。

そう推測したのだが…、逆効果だった。

激昂げっこうした店長によって、おもてに出される。

ここから、オレが雇っていた連中が、あっという間に倒された。

それこそ、秒で。

呆然とするオレに、更なる不運が訪れる。

事態を目撃していた“ルシム大公”に処罰されてしまったのだ。

本当は、この後、北東の[ノイスト大陸]に向かう予定だったのだが、意気消沈したオレは、家に帰ったのである……。

父親を、どうにか誤魔化ごまかした。

けれども、同行していた者らに、洗いざらい喋られてしまったのである。

迂闊うかつだった。

幾らかカネを渡して、口裏を合わせるよう指示しておけば良かったものを。

オレの、馬鹿!!

いや、冒険者達であれば通用しただろうが、[ルヴェッキ商会]で働いている面子は無理か。

あとで発覚したら、父によって解雇されかねないので…。

何はともあれ。

いまだかつてないぐらい父に叱られるオレだった―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ロトーゾ・ルヴェッキ
中背/標準体型/金色マッシュルームヘア/白肌/瞳は青い/21歳
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