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黎明期
第55話 竜人族②
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あれから四日後の夕方に、[一階エントランス]に【テレポート】してきたのは、ヴァイアだった……。
▽
僕らが今回も[客間]に赴いたところで、ヴァイアと二人の男性が、立ち上がる。
短髪オールバックで、鼻の下と顎に髭を蓄えている、60歳ぐらいの男性が、
「我は、ラドン=カナム。」
「ドゥユールの国王である。」
威厳をもって名乗った。
続いて、セミロングオールバックで、鼻の下にのみ髭を生やしている、40代半ばくらいの男性が、
「私は、ドォーゴ。」
「第一王子です。」
「突然の訪問、失礼します。」
穏やかに会釈する。
つまりは、ヴァイアの“祖父”と“父親”だ。
どちらも、“悪魔みたいな角/髪/眉/髭”は黒い。
“翼と尾”に関しては、“竜人の王”が金色で、“王子”は黄色だ。
「ようこそお越しくださいました。」
お辞儀した大公に、〝うむ〟と頷いた“ラドン王”が、
「そなたらが、ラダームの子孫と、血縁者か。」
僕とアシャーリーに対して優しげに目を細めた。
「父上、まずは例の交渉を。」
“ドォーゴ王子”に促され、
「おぉ、そうだな。」
「実は…、孫らが〝感動した〟という料理を、我々も味わってみたいのだ。」
「コンバットチキンの“肉の塊”と、それなりの量のアサリ貝にジャガイモを、持参した。」
「あと、数枚の大皿もな。」
「亜空間収納に入れて持ち帰り、我が家族などにも食べさせたい故、作ってくれぬか??」
「無論、タダでとは言わん!」
「金貨百枚で、どうだ!!?」
そのように“ラドン王”が述べる。
「いえ、さすがに多すぎです!」
少なからず驚いた“アシャーリーの母親”に、
「いや、遠慮はいらん!!」
“竜王”が返す。
ここから〝いえいえいえいえ〟〝いやいやいやいや〟といったラリーが何度となく繰り広げられてゆく。
そうした両者に、
「とりあえず。」
「調理してくれる人々に金貨1枚ずつで、如何です??」
「結構な量になりそうなため作るのが大変でしょうから、“特別手当て”という形で。」
「あと、ヴァイアによれば〝小麦粉なども割と使うはず〟との事だったので、材料費もお支払いしましょう。」
“ドォーゴ王子”が提案した。
「ですが……。」
困ったように視線を送る“アシャーリーの母”に、
「折角の御厚意だ。」
「そうさせてもらいなさい。」
大公が勧める。
これによって、落ち着く二人だった…。
▽
[厨房]にて。
ラドン王が“食材”を、ドォーゴ王子が“お皿”を、それぞれの[アイテムボックス]から取り出していく。
この最中に、
「今日は王族らしい服装だね。」
「こないだと違って。」
僕がヴァイアに声をかけたところ。
「あー。」
「あの時は、“二番目の兄上”の意見で、一般的な格好を心掛けたんだ。」
「こういう服は胸元に“王家の紋章”が施されているから、タケハヤ島で騒ぎになると、あとあと面倒になりかねないだろうとの考えで。」
「そもそも〝地球の食べ物を確認する〟のが目的であって、委員長と嶋川さんに再会するとは思っていなかったから……。」
「今回は、〝この館に直接〟ということもあって、祖父上が正装を指定なされた。」
そう説明した。
これに僕は〝成程〟と納得する。
ちなみに、彼らの紋章は“菱形の内側にドラゴン”といったデザインであり、金糸で刺繍されていた…。
▽
[食堂]で。
“初代ラダーム様”の話しで盛り上がっている。
主に喋っているのは、ラドン王とドォーゴ王子だけど。
なお、アシャーリー母子は料理を加勢している。
“交替制”で休んでいる調理人がいるため。
要は〝人手が足りなさそう〟との判断だ。
いずれにしろ。
ラダーム様の知られてこなかった情報に、誰もが興味津々で耳を傾ける。
特に“歴史学のマリー”は夢中でメモしていた……。
暫くして、テーブルに運ばれてきた品々を、ドォーゴ王子が自身の[亜空間収納]に入れてゆく。
そうしたなか、ラドン王が、
「どれもこれも、いい匂いがしておるな。」
〝ゴクリ〟と生唾を呑み込んだ…。
▽
[一階エントランス]にて。
「何かと煩わせてしまい、すまなかったな。」
このようにラドン王が詫びる。
「いえいえ、ラダーム様についてお聞かせいただき、嬉しく存じております。」
「また、報酬なども、ありがとうございました。」
頭を下げた大公に、
「我も、久方ぶりに、ラダームの事を語れて、実に楽しかった。」
「こちらこそ、いろいろと感謝する。」
ラドン王が愉快そうにした。
その流れで、ドォーゴ王子は、
「前世の繋がりあるらしいから、私が言うほどでもないだろうが、今後も、ヴァイアを、よろしく頼むよ。」
僕とアシャーリーに微笑んだ。
[直径5Mくらいの神法陣]を足元に構築し、
「では、またそのうち。」
こう告げて、【瞬間移動】を発するヴァイアだった―。
▽
僕らが今回も[客間]に赴いたところで、ヴァイアと二人の男性が、立ち上がる。
短髪オールバックで、鼻の下と顎に髭を蓄えている、60歳ぐらいの男性が、
「我は、ラドン=カナム。」
「ドゥユールの国王である。」
威厳をもって名乗った。
続いて、セミロングオールバックで、鼻の下にのみ髭を生やしている、40代半ばくらいの男性が、
「私は、ドォーゴ。」
「第一王子です。」
「突然の訪問、失礼します。」
穏やかに会釈する。
つまりは、ヴァイアの“祖父”と“父親”だ。
どちらも、“悪魔みたいな角/髪/眉/髭”は黒い。
“翼と尾”に関しては、“竜人の王”が金色で、“王子”は黄色だ。
「ようこそお越しくださいました。」
お辞儀した大公に、〝うむ〟と頷いた“ラドン王”が、
「そなたらが、ラダームの子孫と、血縁者か。」
僕とアシャーリーに対して優しげに目を細めた。
「父上、まずは例の交渉を。」
“ドォーゴ王子”に促され、
「おぉ、そうだな。」
「実は…、孫らが〝感動した〟という料理を、我々も味わってみたいのだ。」
「コンバットチキンの“肉の塊”と、それなりの量のアサリ貝にジャガイモを、持参した。」
「あと、数枚の大皿もな。」
「亜空間収納に入れて持ち帰り、我が家族などにも食べさせたい故、作ってくれぬか??」
「無論、タダでとは言わん!」
「金貨百枚で、どうだ!!?」
そのように“ラドン王”が述べる。
「いえ、さすがに多すぎです!」
少なからず驚いた“アシャーリーの母親”に、
「いや、遠慮はいらん!!」
“竜王”が返す。
ここから〝いえいえいえいえ〟〝いやいやいやいや〟といったラリーが何度となく繰り広げられてゆく。
そうした両者に、
「とりあえず。」
「調理してくれる人々に金貨1枚ずつで、如何です??」
「結構な量になりそうなため作るのが大変でしょうから、“特別手当て”という形で。」
「あと、ヴァイアによれば〝小麦粉なども割と使うはず〟との事だったので、材料費もお支払いしましょう。」
“ドォーゴ王子”が提案した。
「ですが……。」
困ったように視線を送る“アシャーリーの母”に、
「折角の御厚意だ。」
「そうさせてもらいなさい。」
大公が勧める。
これによって、落ち着く二人だった…。
▽
[厨房]にて。
ラドン王が“食材”を、ドォーゴ王子が“お皿”を、それぞれの[アイテムボックス]から取り出していく。
この最中に、
「今日は王族らしい服装だね。」
「こないだと違って。」
僕がヴァイアに声をかけたところ。
「あー。」
「あの時は、“二番目の兄上”の意見で、一般的な格好を心掛けたんだ。」
「こういう服は胸元に“王家の紋章”が施されているから、タケハヤ島で騒ぎになると、あとあと面倒になりかねないだろうとの考えで。」
「そもそも〝地球の食べ物を確認する〟のが目的であって、委員長と嶋川さんに再会するとは思っていなかったから……。」
「今回は、〝この館に直接〟ということもあって、祖父上が正装を指定なされた。」
そう説明した。
これに僕は〝成程〟と納得する。
ちなみに、彼らの紋章は“菱形の内側にドラゴン”といったデザインであり、金糸で刺繍されていた…。
▽
[食堂]で。
“初代ラダーム様”の話しで盛り上がっている。
主に喋っているのは、ラドン王とドォーゴ王子だけど。
なお、アシャーリー母子は料理を加勢している。
“交替制”で休んでいる調理人がいるため。
要は〝人手が足りなさそう〟との判断だ。
いずれにしろ。
ラダーム様の知られてこなかった情報に、誰もが興味津々で耳を傾ける。
特に“歴史学のマリー”は夢中でメモしていた……。
暫くして、テーブルに運ばれてきた品々を、ドォーゴ王子が自身の[亜空間収納]に入れてゆく。
そうしたなか、ラドン王が、
「どれもこれも、いい匂いがしておるな。」
〝ゴクリ〟と生唾を呑み込んだ…。
▽
[一階エントランス]にて。
「何かと煩わせてしまい、すまなかったな。」
このようにラドン王が詫びる。
「いえいえ、ラダーム様についてお聞かせいただき、嬉しく存じております。」
「また、報酬なども、ありがとうございました。」
頭を下げた大公に、
「我も、久方ぶりに、ラダームの事を語れて、実に楽しかった。」
「こちらこそ、いろいろと感謝する。」
ラドン王が愉快そうにした。
その流れで、ドォーゴ王子は、
「前世の繋がりあるらしいから、私が言うほどでもないだろうが、今後も、ヴァイアを、よろしく頼むよ。」
僕とアシャーリーに微笑んだ。
[直径5Mくらいの神法陣]を足元に構築し、
「では、またそのうち。」
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