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黎明期

第55話 竜人族②

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あれから四日後の夕方に、[一階エントランス]に【テレポート】してきたのは、ヴァイアだった……。



僕らが今回も[客間]に赴いたところで、ヴァイアと二人の男性が、立ち上がる。

短髪オールバックで、鼻の下とあごひげを蓄えている、60歳ぐらいの男性が、

「我は、ラドン=カナム。」
「ドゥユールの国王である。」

威厳をもって名乗った。

続いて、セミロングオールバックで、鼻の下にのみ髭を生やしている、40代半ばくらいの男性が、

「私は、ドォーゴ。」
「第一王子です。」
「突然の訪問、失礼します。」

穏やかに会釈する。

つまりは、ヴァイアの“祖父”と“父親”だ。

どちらも、“悪魔みたいなツノ/髪/眉/髭”は黒い。

“翼と尾”に関しては、“竜人の王”が金色で、“王子”は黄色だ。

「ようこそお越しくださいました。」

お辞儀した大公に、〝うむ〟と頷いた“ラドン王”が、

「そなたらが、ラダームの子孫と、血縁者か。」

僕とアシャーリーに対して優しげに目を細めた。

「父上、まずは例の交渉を。」

“ドォーゴ王子”に促され、

「おぉ、そうだな。」
「実は…、孫らが〝感動した〟という料理を、我々も味わってみたいのだ。」
「コンバットチキンの“肉の塊”と、それなりの量のアサリ貝にジャガイモを、持参した。」
「あと、数枚の大皿もな。」
「亜空間収納に入れて持ち帰り、我が家族などにも食べさせたい故、作ってくれぬか??」
「無論、タダでとは言わん!」
「金貨百枚で、どうだ!!?」

そのように“ラドン王”が述べる。

「いえ、さすがに多すぎです!」

少なからず驚いた“アシャーリーの母親”に、

「いや、遠慮はいらん!!」

“竜王”が返す。

ここから〝いえいえいえいえ〟〝いやいやいやいや〟といったラリーが何度となく繰り広げられてゆく。

そうした両者に、

「とりあえず。」
「調理してくれる人々に金貨1枚ずつで、如何です??」
「結構な量になりそうなため作るのが大変でしょうから、“特別手当て”という形で。」
「あと、ヴァイアによれば〝小麦粉なども割と使うはず〟との事だったので、材料費もお支払いしましょう。」

“ドォーゴ王子”が提案した。

「ですが……。」

困ったように視線を送る“アシャーリーの母”に、

「折角の御厚意だ。」
「そうさせてもらいなさい。」

大公が勧める。

これによって、落ち着く二人だった…。



[厨房]にて。

ラドン王が“食材”を、ドォーゴ王子が“お皿”を、それぞれの[アイテムボックス]から取り出していく。

この最中さなかに、

「今日は王族らしい服装だね。」
「こないだと違って。」

僕がヴァイアに声をかけたところ。

「あー。」
「あの時は、“二番目の兄上”の意見で、一般的な格好を心掛けたんだ。」
「こういう服は胸元に“王家の紋章”が施されているから、タケハヤ島で騒ぎになると、あとあと面倒になりかねないだろうとの考えで。」
「そもそも〝地球の食べ物を確認する〟のが目的であって、委員長と嶋川しまかわさんに再会するとは思っていなかったから……。」
「今回は、〝この館に直接〟ということもあって、祖父上が正装を指定なされた。」

そう説明した。

これに僕は〝成程〟と納得する。

ちなみに、彼らの紋章は“菱形ひしがたの内側にドラゴン”といったデザインであり、金糸で刺繍されていた…。



[食堂]で。

“初代ラダーム様”の話しで盛り上がっている。

おもに喋っているのは、ラドン王とドォーゴ王子だけど。

なお、アシャーリー母子は料理を加勢している。

交替シフト制”で休んでいる調理人がいるため。

要は〝人手が足りなさそう〟との判断だ。

いずれにしろ。

ラダーム様の知られてこなかった情報に、誰もが興味津々で耳を傾ける。

特に“歴史学のマリー”は夢中でメモしていた……。

暫くして、テーブルに運ばれてきた品々を、ドォーゴ王子が自身の[亜空間収納]に入れてゆく。

そうしたなか、ラドン王が、

「どれもこれも、いい匂いがしておるな。」

〝ゴクリ〟と生唾を呑み込んだ…。



[一階エントランス]にて。

「何かと煩わせてしまい、すまなかったな。」

このようにラドン王が詫びる。

「いえいえ、ラダーム様についてお聞かせいただき、嬉しく存じております。」
「また、報酬なども、ありがとうございました。」

頭を下げた大公に、

「我も、久方ぶりに、ラダームの事を語れて、実に楽しかった。」
「こちらこそ、いろいろと感謝する。」

ラドン王が愉快そうにした。

その流れで、ドォーゴ王子は、

「前世の繋がりあるらしいから、私が言うほどでもないだろうが、今後も、ヴァイアを、よろしく頼むよ。」

僕とアシャーリーに微笑んだ。

[直径5Mくらいの神法陣しんぽうじん]を足元に構築し、

「では、またそのうち。」

こう告げて、【瞬間移動】を発するヴァイアだった―。
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