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黎明期

第52話 連関⑥

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初夏となった頃。

僕らを訪ねてきたのは、“城宮宗次しろみや・むねつぐくん”だ。

なんでも、南東の“サウスト大陸”に含まれている[ドゥユール王国]に転生していたらしい。

確か、彼は、日本人だったときに空手を習っており、高校の全国大会に出場するほどの実力者だったはずだ。

ちょっと余談になるけれども、僕の故郷である“ダイワ王国”は、この世界の北東に位置する[ノイスト大陸]に存在している。

いずれにせよ。

“ヴァイア=カナム”という名前になっていた彼と、僕にアシャーリーは、生まれ変わってからの状況を簡略的ながらも教え合っていった……。



「竜人だったり、神法しんぽうの全属性を備えていたり、二年も前から実戦を積んでいたりと、いろいろ凄いねぇ。」

そう感心した僕に、

「いや、まだ年に一回ずつしか行なっていないから、たいしたことはない。」
「神法は“低級”のままだし、戦闘スキルもまだ“壱”だから。」

このように城宮くんが返す。

僕らが会話していたところ、

「確かにヴァイアが神法を使っているところを目の当たりにしたときはビックリしたが…、俺にしてみれば〝神剣しんけんムラクモを抜いた〟っていうのも驚きだ。」
あれ・・は、ラダーム以来、誰も扱えてなかったよな?」

長兄ちょうけいさん”が疑問を口にする。

「そうですけど??」

まぶたを〝パチクリ〟させた僕は、[武神様]に教えてもらった件を、伝えていった……。



「カティーア様もお越しになられていたか…。」
「懐かしい。」

ふと笑みをこぼした長兄さんを、

「ご存知で?」

ルシム大公が窺う。

〝ああ〟と頷いて、

「俺や、祖父上と父上は、ラダーム達と幾度いくたびか酒を酌み交わした事がある。」
「そうした席に、カティーア様は、一度だけ顔を出された。」

そう喋った長兄さんに、

「なんと??!」
「ラダーム陛下に近衛衆このえしゅうともお会いになられていましたか?!!」

“魔術師のレオディン”が目を丸くする。

これによって、長兄さんが、昔のことを語っていく……。



およそ500年前。

[ノイスト大陸]を制圧していきつつあったラダーム様たちに、ヴァイア四兄弟の“祖父さん”が興味を示し、単身で勝負を挑んだらしい。

とは言え、模擬試合だったそうだけれども…。

最初は“竜人の姿・・・・”で闘っていたものの、次第に追い詰められ、ドラゴンに変じたとの事だ。

ま、結局は“引き分け”に終わったらしいけど。

それを機に意気投合した両者は、個人的な友好関係になったのだとか。

ここから、親睦を深めるべく、当時は王子だった祖父さんが、しばしばラダーム様のもとへ遊びに来ていたそうだ。

たまに、息子さんと、娘さんがたを、連れて。

なお、“息子さん”は“四兄弟の父親”で、“娘さん達”は“叔母にあたる”らしい。

そうした交流に、ヴァイアの長兄さんも、何回か伴われたとのことだった……。

「これは歴史的新事実ですね!」
「記録しておかなければ!!」

喜びに打ち震えているのは、“細長眼鏡のマリー”だ。

ちなみに、アシャーリーの“両親”と“教育係”も揃い踏みしているため、[客間]は少なからず手狭になっている。

さておき…。

「ラルーシファにアシャーリーのことを、祖父と父に知らせれば、嬉しがられるに違いない。」
「特に、祖父は、ラダームと仲が良かったからな。」
「それこそ、ラダームが亡くなった際には、暫く落胆し続けておられたぐらいに。」

長兄さんが穏やかに述べた。

室内が沈黙に包まれていこうとするなか、

「ところで。」
「スブキィの飲食店で作られていた“唐揚からあげ”とかって??」

城宮くんが尋ねてくる。

「あぁー。」
「あれらは、全部、アシャ……、嶋川さんによるものだよ。」

このように僕が答えたら、

「じゃあ、ここでタダメシ食い放題なんじゃね?!」

瞳を輝かせるのと共にヨダレを垂らしそうになる“三兄さんけいさん”だった―。
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