40 / 76
黎明期
第40話 二重の意味で進む御飯③
しおりを挟む
アシャーリーの“教育係”も、5人だ。
まず、ルシム大公が“バトルアックス”や“モーニングスター”などの【打撃術】を指南するらしい。
それから、“50代半ば/七三分けの髪/鼻髭”といった執事さんは、[槍術]と[武術]を教えているのだそうだ。
“馬の白い耳&尻尾/白銀のロングヘア/ブルースカイの瞳”で30代前半に見える女性獣人が、[剣術]を受け持っているとのことだった。
20代半ばといった印象で小柄な“兎でオレンジ色の耳&尻尾/ゆるふわ黒髪ショート”の女性獣人は、[狙撃術]らしい。
あと、“60歳ぐらい/白髪交じりでソバージュみたいな黒色セミロング”の女性が、魔法を担当しているらしいけど…、ま、アシャーリーの場合も【神法】だ。
とにもかくにも。
このようなメンバーなどが、“長男さんの館”へと【瞬間移動】したのだった……。
▽
あれから約一ヶ月が経っている。
僕は僕で、休日を挟みながらではあるけれども、鍛錬に勉学を怠っていない。
そうした流れのなか、とある午後に、女性魔術師の【テレポート】によって、大公が帰宅した。
現在、僕らは、[客間]に集まっている…。
「明日の昼に開店します。」
報せてくれた大公に、
「こちらも、カードの用意が整っております。」
次男さんが続いた。
〝ふむ〟と頷いて、
「つきましては、本日の夕刻、あちらの館に直接お越しくださいませ。」
「あの者らの料理を食していただきたいのと、諸々の最終確認がございますので。」
こう伝えてきた大公が、
「無論、お主も一緒にな。」
次男さんに穏やかな視線を送る。
かくして、[スブキィ]に渡る運びとなった僕らだった。
▽
定刻の数分前に、レオディンによって、一階エントランスへと【テレポーテーション】している。
スタンバイしていたらしい“大公家の執事”が、
「お待ちしておりました。」
タキシード姿で頭を下げた。
そんな彼の先導で、僕らは[食堂]へ歩いて行く……。
▽
入室したところ、アシャーリー母子/長男さん家族/領主夫妻&息子さん家族/アシャーリーの教育係が、椅子から立ち上がって、「お久しぶりです」や「初めまして」と、お辞儀する。
「皆、ラクにして。」
声をかけた僕に応じて、各自が座り直してゆく。
ここに、
「到着なさっておられましたか。」
背後より近づいてきた大公が、
「ささ、殿下がたも、お席にどうぞ。」
そのように促してきた…。
僕たちも腰かけたところで、雑談が交わされていく。
暫くすると、コック姿のヴォル達と、この館の給仕らが、“銀製の配膳ワゴン”を押して来た。
足を止めて、帽子を脱いだ“狼の獣人”は、
「お集りいただき、ありがとうございます。」
「アシャーリー様のお陰で、どうにか提供しても恥ずかしくない腕前になりました。」
「これより皆さんに味わっていただきますが、お気づきの点がございましたら、遠慮なくお申し付けください。」
「より一層に精進してまいりますので。」
口上を述べ、お辞儀する。
これに、ヴォルの舎弟……、というか、従業員一同が倣う。
そこから、いろいろとテーブルに並べられていった。
なお、お皿はどれも小さめで、載せられている食べ物が割と少ない。
今回は、幾つかの品数となるので、すぐに満腹にならいよう工夫しているそうだ。
ただし、セミハードパンにオニオンスープは、通常サイズとなっている。
お店で提供する際には、定食みたいな形式にするので、お皿は大きめで、量も多くするらしい。
さて。
“おかず”はというと…、お馴染みの“フライドポテト”や“スクランブルエッグ”に、“鯵のチーズパン粉焼き/白身魚の塩カラアゲ/アサリのバター焼き”だ。
初めて口にするらしい“領主ファミリー”が、感激している。
余談になるかもしれないけど、領主の奥さんは、60代前半といったところだ。
息子さん夫婦は30代半ばらしい。
孫娘は11歳で、孫息子は7歳なのだそうだ。
ちなみに、全員が細身の体型だった。
……、話しを戻して。
最後に並べられたのは“チーズフォンデュ”だ。
溶かしたチーズ自体は、個々の“陶器鍋”に入れられている。
食材はというと“鶏の唐揚げ/アスパラガス/ブロッコリー/ニンジン/春シメジ/菜の花”だ。
これは、僕らも経験がない。
補足として、チーズそのものは、こちらの世界にも、もともと存在している。
地球に比べて種類は少ないみたいだけど。
まぁ、それは置いといて…。
ヴォルの説明で、誰もがスピックを使って味わう。
結果、僕の“教育係”と“お世話係”を中心に、瞳を輝かせた面子が、騒ぎ出す。
なかでも楽しんでいるのは、子ども達だった。
これらの光景に、ヴォルなどが安堵し、アシャーリーは満足そうに微笑んでいる。
「チーズフォンデュの器とスピック、よく有ったね、こっちの世界に。」
僕が尋ねてみたところ、
「いえ。」
「無かったので、お祖父様にお願いして、町の職人がたに作ってもらいました。」
「何十個も。」
「特注で。」
「お祖父様が〝よくは分からんが、美味い物が食えるのであれば金に糸目は付けん!!〟と乗り気だったので、助かりました。」
そうアシャーリーが答えた。
「あぁ、それで、一ヶ月くらい掛かったのか。」
「製品が完成するのを待って。」
勝手に納得した僕に、
「いいえ、そうではなく……。」
「ヴォルさんたちが、パンづくりに手間取っていました。」
アシャーリーが、ふと遠い目になる。
この傍らで、
「成程!」
「こうきたかぁあッ!!」
チーズフォンデュに興奮を隠しきれない大公だった―。
まず、ルシム大公が“バトルアックス”や“モーニングスター”などの【打撃術】を指南するらしい。
それから、“50代半ば/七三分けの髪/鼻髭”といった執事さんは、[槍術]と[武術]を教えているのだそうだ。
“馬の白い耳&尻尾/白銀のロングヘア/ブルースカイの瞳”で30代前半に見える女性獣人が、[剣術]を受け持っているとのことだった。
20代半ばといった印象で小柄な“兎でオレンジ色の耳&尻尾/ゆるふわ黒髪ショート”の女性獣人は、[狙撃術]らしい。
あと、“60歳ぐらい/白髪交じりでソバージュみたいな黒色セミロング”の女性が、魔法を担当しているらしいけど…、ま、アシャーリーの場合も【神法】だ。
とにもかくにも。
このようなメンバーなどが、“長男さんの館”へと【瞬間移動】したのだった……。
▽
あれから約一ヶ月が経っている。
僕は僕で、休日を挟みながらではあるけれども、鍛錬に勉学を怠っていない。
そうした流れのなか、とある午後に、女性魔術師の【テレポート】によって、大公が帰宅した。
現在、僕らは、[客間]に集まっている…。
「明日の昼に開店します。」
報せてくれた大公に、
「こちらも、カードの用意が整っております。」
次男さんが続いた。
〝ふむ〟と頷いて、
「つきましては、本日の夕刻、あちらの館に直接お越しくださいませ。」
「あの者らの料理を食していただきたいのと、諸々の最終確認がございますので。」
こう伝えてきた大公が、
「無論、お主も一緒にな。」
次男さんに穏やかな視線を送る。
かくして、[スブキィ]に渡る運びとなった僕らだった。
▽
定刻の数分前に、レオディンによって、一階エントランスへと【テレポーテーション】している。
スタンバイしていたらしい“大公家の執事”が、
「お待ちしておりました。」
タキシード姿で頭を下げた。
そんな彼の先導で、僕らは[食堂]へ歩いて行く……。
▽
入室したところ、アシャーリー母子/長男さん家族/領主夫妻&息子さん家族/アシャーリーの教育係が、椅子から立ち上がって、「お久しぶりです」や「初めまして」と、お辞儀する。
「皆、ラクにして。」
声をかけた僕に応じて、各自が座り直してゆく。
ここに、
「到着なさっておられましたか。」
背後より近づいてきた大公が、
「ささ、殿下がたも、お席にどうぞ。」
そのように促してきた…。
僕たちも腰かけたところで、雑談が交わされていく。
暫くすると、コック姿のヴォル達と、この館の給仕らが、“銀製の配膳ワゴン”を押して来た。
足を止めて、帽子を脱いだ“狼の獣人”は、
「お集りいただき、ありがとうございます。」
「アシャーリー様のお陰で、どうにか提供しても恥ずかしくない腕前になりました。」
「これより皆さんに味わっていただきますが、お気づきの点がございましたら、遠慮なくお申し付けください。」
「より一層に精進してまいりますので。」
口上を述べ、お辞儀する。
これに、ヴォルの舎弟……、というか、従業員一同が倣う。
そこから、いろいろとテーブルに並べられていった。
なお、お皿はどれも小さめで、載せられている食べ物が割と少ない。
今回は、幾つかの品数となるので、すぐに満腹にならいよう工夫しているそうだ。
ただし、セミハードパンにオニオンスープは、通常サイズとなっている。
お店で提供する際には、定食みたいな形式にするので、お皿は大きめで、量も多くするらしい。
さて。
“おかず”はというと…、お馴染みの“フライドポテト”や“スクランブルエッグ”に、“鯵のチーズパン粉焼き/白身魚の塩カラアゲ/アサリのバター焼き”だ。
初めて口にするらしい“領主ファミリー”が、感激している。
余談になるかもしれないけど、領主の奥さんは、60代前半といったところだ。
息子さん夫婦は30代半ばらしい。
孫娘は11歳で、孫息子は7歳なのだそうだ。
ちなみに、全員が細身の体型だった。
……、話しを戻して。
最後に並べられたのは“チーズフォンデュ”だ。
溶かしたチーズ自体は、個々の“陶器鍋”に入れられている。
食材はというと“鶏の唐揚げ/アスパラガス/ブロッコリー/ニンジン/春シメジ/菜の花”だ。
これは、僕らも経験がない。
補足として、チーズそのものは、こちらの世界にも、もともと存在している。
地球に比べて種類は少ないみたいだけど。
まぁ、それは置いといて…。
ヴォルの説明で、誰もがスピックを使って味わう。
結果、僕の“教育係”と“お世話係”を中心に、瞳を輝かせた面子が、騒ぎ出す。
なかでも楽しんでいるのは、子ども達だった。
これらの光景に、ヴォルなどが安堵し、アシャーリーは満足そうに微笑んでいる。
「チーズフォンデュの器とスピック、よく有ったね、こっちの世界に。」
僕が尋ねてみたところ、
「いえ。」
「無かったので、お祖父様にお願いして、町の職人がたに作ってもらいました。」
「何十個も。」
「特注で。」
「お祖父様が〝よくは分からんが、美味い物が食えるのであれば金に糸目は付けん!!〟と乗り気だったので、助かりました。」
そうアシャーリーが答えた。
「あぁ、それで、一ヶ月くらい掛かったのか。」
「製品が完成するのを待って。」
勝手に納得した僕に、
「いいえ、そうではなく……。」
「ヴォルさんたちが、パンづくりに手間取っていました。」
アシャーリーが、ふと遠い目になる。
この傍らで、
「成程!」
「こうきたかぁあッ!!」
チーズフォンデュに興奮を隠しきれない大公だった―。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる