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黎明期

第36話 各個の主観②

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私は、“アシャーリー=イズモ”です。

前世では“嶋川由美しまかわ・ゆみ”という名前でした。

それらの記憶を取り戻した私は、高校の学級委員長だった“日之永新ひのと・しんくん”と再会したのです。

[ダイワの第二王子]として生まれ変わっていた日之永くんは、〝王都で二度ほど命を狙われた〟とかで、こちらの館に“お付きの方々”と避難してきました……。

そうした流れでの或る日のこと、[癒しの女神パナーア様]が御訪問なされたのです。

なんでも、空から落ち…、コホンッ、ご降臨なされたのだとか。

ともあれ。

初代ラダーム国王陛下が遺された記録や、パナーア様が教えてくださった情報によって、幾つかの事が分かりました。

ここから、私たちは〝転生者に再会するために飲食店を開こう〟という話しになったのです。

店舗などについては、[港町スブキィ]で生活している伯父様や領主さんに、お願いして。

お店を出せるというか、〝プロデュースできる〟といった状況に、私はワクワクしました。

それによって、やる気が湧いてきたので、新しいメニューを考えてみることにしたのです……。

[武神カティーア様]が現れました。

どうやら、私達は、近い将来に亡くなってしまうみたいです。

このため、私の鍛錬などが倍増されてしまいました。

…………。

カティーア様が恨めしいです!

それはもう、一矢報いたいほどに!!

とは言え、ハーフエルフの“リィバさん”によれば、カティーア様は物凄く強い・・・・・ようなので、やめておきましょう。

さて…。

本日、パナーア様が再びお越しになられました。

カティーア様が定められた罰を終えられたそうです。

ふと遠い目をしながら、

わたくしだけで、土を5Mの高さに盛って“ちょっとした山”を形成し、それを自分で壊した後に、改めて作り直す、といった作業を不眠不休で丸一日やらされました。」
「しかも、素手のみ・・・・で。」

こう仰せになられたときに、

(カティーア様は絶対に敵に回してはいけない。)
(いろんな意味で恐ろしい。)

と思わずにはいられない私でした。

まさに“触らぬ神に祟りなし”です!

カティーア様とは〝友好関係を築いていく〟か〝程よい距離感を保つ〟の二択しかないでしょう。

ま、それは置いといて……。

今回は“ミディアムステーキ/焼き野菜/オニオンスープ”を作ってみました。

できれば魚介類を試してみたかったのですが、厨房や氷室ひむろなどにストックが無かったので、仕方ありません。

あと、こちらの世界には“コンロ”が存在していないので、ミディアムステーキに苦戦しました。

かまど焚口たきぐちで火の調整をしないといけませんので。

そのため、“お肉の料理”と言えば、きっちり焼かれて硬くなっているものばかりでした。

ちなみに、パンは“かま”で作っています。

オニオンスープは、とりガラに、玉ねぎ/塩/バターを用いて、パセリを散らしました。

“焼き野菜”は、ステーキの“肉汁にくじゅう”を絡めています。

なお、“にくじる”は間違いとなりますので、あしからず。

なんにせよ、皆さん幸せそうに召し上がってくださいましたので、私としても嬉しい限りです♪

食卓にて、

「ステーキとかも、お店で提供するの?」

ラルーシファ王子に伺われました。

「いえ、料理するのが割と難しかったのと、ソースの作り方が分からず塩コショウのみになっているので、今回は、よしておきます。」
「お客さんに料金を支払ってもらうのであれば、より美味しいものを目指したいので。」
「まぁ、オニオンスープは出しても問題ないでしょうが…。」

こう答えたところ、

「そっかぁ。」
「……、調味料を開発できる人がいればいいのにね。」

ラルーシファ王子が少なからず残念がったのです。

「ええ。」

頷いた私は、

「きっと無理でしょうが、他にもコンロが欲しいです。」
「これまでよりも作業がずっとラクになりますから。」

そのように続いて苦笑いしました。

ラルーシファ王子と私が“諦め顔”になりかけたところで、

「いらっしゃいますよ、どちらも。」
「転生者のなかに。」

こう述べられたパナーア様が、食後の紅茶に手を伸ばします。

「え??」

私と、

「本当ですか?」

ラルーシファ王子が、反応を示したら、

「はい。」

肯定なさったパナーア様が、

「ただ…、もうお一方加わらないと厳しいでしょうね。」
「それらに関する知識を得られないので。」

そう告げられたのです。

ラルーシファ王子と私が〝ん~??〟と首を傾げるなか、

「“こんろ”って、なんです?」

リィバさんが別の疑問を口にします。

このような展開で、

「ま、なんにしても……。」
「ここに居らっしゃる方々の殆どが数年内に亡くなるという件を、伯母上様より聞き及んでおります。」
「皆さんは、まず、生き残る事を優先してください。」
「鍛錬に励み実戦を積むなかで、お店を経営していけば、より良い未来に繋がることでしょう。」

優しく微笑んで、紅茶を飲むパナーア様でした―。
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