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黎明期

第30話 シークレット①

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あれから約5分後――。

レオディンの魔法によって、僕達は、[港町スブキィ]の北側に【瞬間移動】した。

僕らが居る“土の道”の先には門が在り、町は壁で囲まれているようだ。

門の両脇では、兵士たちが、通行人とやり取りを交わしている…。



僕らの順番となり、先頭の大公が、

「“ルシム=イズモ”である!」

そう名乗った。

大公に視線を送った数人の兵が、何かに気づいたみたいに〝ハッ!!〟として、敬礼しだす。

大公が着用している貴族風のジャケットの左胸元には、“雷”と“月”が合わさったデザインが糸で刺繍されている。

これは[大公家の紋章]だ。

以前も説明したことがあるけど、[イズモ王家]の場合は、“雷”に“太陽”と“月”がモチーフになっており、糸が使われている。

今回、僕は、それらがあしらわれた服を着ていない。

どこにが潜んでいるか分からず、命を狙われる危険性があるからだ。

いずれにせよ。

[大公家の紋章]を認識したらしい兵士の一人が、

「どうぞ、お通りください。」

お辞儀した。

「うむ。」
「務め、大儀である。」

こう返した大公と共に、僕達は、無料で町へと入ってゆく……。



門から15分ほど歩き、とある館に到着している。

そこでは“大公の長男家族”が暮らしているそうだ。

暫く[客間]で待っていたところ、外側から扉を開いた男性が、

「父上!」
「お越しになる際に連絡してくだされば、北門まで迎えを寄こしましたのに。」

いささか困惑した。

「まぁ、内密にしないといけない件もあったしな。」

そう伝えた大公が、

「お?」
「お主も来ておったか。」

長男さんの後ろに控えている人物に声をかける。

「お久しぶりでございます。」
「大公殿下。」

会釈した中年男性が、

「本日は、月に一度の定期相談がありましたので。」

このように答えた。

あとで聞いた話しによれば、彼は“領主”との事だ。

やはり[スブキィ]で生活しており、ここから、徒歩だと一時間くらいで、[ユニコーン車]であれば10分ちょっとの所に、館が在るらしい。

その領主の姪…、詳しくは妹君の娘さんが、大公の長男さんに嫁いだのだと。

補足として、“大公の長男家族”が過ごしている館は[領主の別宅]なのだそうだ。

ちなみに、大公の長男さんも、領主も、細身だった。

長男さんは、30代後半といったところで、ライトブラウンの髪をオールバックにしている。

領主はというと、60代前半あたりで、七三分けの髪と、鼻の下のひげが、ホワイトゴールド白金だ。

さて。

「弟君がたも、ご一緒でしたか。」
「……、おぉう、アシャーリー様、大きくなられましたなぁ。」

目を細めた流れで、

「して??」
「他の方々は?」

ふと尋ねる領主だった。

〝スッ〟と椅子から立った大公が、僕に手を向け、

「こちらは“ダイワの第二王子殿下”であらせられる。」

そう告げる。

「は??」

長男さんと、

「ご冗談ではなく?」

領主が、揃って首を傾げた。

こうした二人に、

「父上が、そのような戯言ざれごとを口にするとでも??」

大公の次男さんが逆に質問する。

更には大公が真剣な表情を崩さないこともあってか、信じたらしい二人が、

「失礼いたしました!!」

慌てながら跪く。

「あぁ、そういうのは、別に」と、やめさせようとした僕に、またしてもマリーが急ぎ耳打ちした。

それによって、

「両者とも、ラクにせよ。」

こう許可した僕である。



…………、大公が経緯いきさつを語り終えた。

「それでアシャーリーが“神法しんぽう”を備えていたのか。」

長男さんが驚きつつも納得するなか、

「そのような事態になっていたとは。」

呟いた領主が〝うぅ~む〟と唸る。

「ここからが本題じゃ。」
「先ほど述べ知らせたとおり、ラルーシファ殿下とアシャーリーが“前世の友人知人”と再会を果たせるよう、スブキィに飲食店を開く。」
「が。」
「まずは、お主らに、アシャーリーたちの料理を味あわせたい故、厨房を借りるぞ。」
「昔から“論より証拠”と言うしな。」

大公に促され、

「ええ、勿論です。」
「こちらとしても、“チキュウ”とやらの調理法に興味がありますので。」

そう承諾する“アシャーリーの伯父君”だった―。
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