30 / 75
黎明期
第30話 シークレット①
しおりを挟む
あれから約5分後――。
レオディンの魔法によって、僕達は、[港町スブキィ]の北側に【瞬間移動】した。
僕らが居る“土の道”の先には門が在り、町は壁で囲まれているようだ。
門の両脇では、兵士たちが、通行人とやり取りを交わしている…。
▽
僕らの順番となり、先頭の大公が、
「“ルシム=イズモ”である!」
そう名乗った。
大公に視線を送った数人の兵が、何かに気づいたみたいに〝ハッ!!〟として、敬礼しだす。
大公が着用している貴族風のジャケットの左胸元には、“雷”と“月”が合わさったデザインが銀糸で刺繍されている。
これは[大公家の紋章]だ。
以前も説明したことがあるけど、[イズモ王家]の場合は、“雷”に“太陽”と“月”がモチーフになっており、金糸が使われている。
今回、僕は、それらがあしらわれた服を着ていない。
どこに敵が潜んでいるか分からず、命を狙われる危険性があるからだ。
いずれにせよ。
[大公家の紋章]を認識したらしい兵士の一人が、
「どうぞ、お通りください。」
お辞儀した。
「うむ。」
「務め、大儀である。」
こう返した大公と共に、僕達は、無料で町へと入ってゆく……。
▽
門から15分ほど歩き、とある館に到着している。
そこでは“大公の長男家族”が暮らしているそうだ。
暫く[客間]で待っていたところ、外側から扉を開いた男性が、
「父上!」
「お越しになる際に連絡してくだされば、北門まで迎えを寄こしましたのに。」
いささか困惑した。
「まぁ、内密にしないといけない件もあったしな。」
そう伝えた大公が、
「お?」
「お主も来ておったか。」
長男さんの後ろに控えている人物に声をかける。
「お久しぶりでございます。」
「大公殿下。」
会釈した中年男性が、
「本日は、月に一度の定期相談がありましたので。」
このように答えた。
あとで聞いた話しによれば、彼は“領主”との事だ。
やはり[スブキィ]で生活しており、ここから、徒歩だと一時間くらいで、[ユニコーン車]であれば10分ちょっとの所に、館が在るらしい。
その領主の姪…、詳しくは妹君の娘さんが、大公の長男さんに嫁いだのだと。
補足として、“大公の長男家族”が過ごしている館は[領主の別宅]なのだそうだ。
ちなみに、大公の長男さんも、領主も、細身だった。
長男さんは、30代後半といったところで、ライトブラウンの髪をオールバックにしている。
領主はというと、60代前半あたりで、七三分けの髪と、鼻の下の髭が、ホワイトゴールドだ。
さて。
「弟君がたも、ご一緒でしたか。」
「……、おぉう、アシャーリー様、大きくなられましたなぁ。」
目を細めた流れで、
「して??」
「他の方々は?」
ふと尋ねる領主だった。
〝スッ〟と椅子から立った大公が、僕に手を向け、
「こちらは“ダイワの第二王子殿下”であらせられる。」
そう告げる。
「は??」
長男さんと、
「ご冗談ではなく?」
領主が、揃って首を傾げた。
こうした二人に、
「父上が、そのような戯言を口にするとでも??」
大公の次男さんが逆に質問する。
更には大公が真剣な表情を崩さないこともあってか、信じたらしい二人が、
「失礼いたしました!!」
慌てながら跪く。
「あぁ、そういうのは、別に」と、やめさせようとした僕に、またしてもマリーが急ぎ耳打ちした。
それによって、
「両者とも、ラクにせよ。」
こう許可した僕である。
▽
…………、大公が経緯を語り終えた。
「それでアシャーリーが“神法”を備えていたのか。」
長男さんが驚きつつも納得するなか、
「そのような事態になっていたとは。」
呟いた領主が〝うぅ~む〟と唸る。
「ここからが本題じゃ。」
「先ほど述べ知らせたとおり、ラルーシファ殿下とアシャーリーが“前世の友人知人”と再会を果たせるよう、スブキィに飲食店を開く。」
「が。」
「まずは、お主らに、アシャーリーたちの料理を味あわせたい故、厨房を借りるぞ。」
「昔から“論より証拠”と言うしな。」
大公に促され、
「ええ、勿論です。」
「こちらとしても、“チキュウ”とやらの調理法に興味がありますので。」
そう承諾する“アシャーリーの伯父君”だった―。
レオディンの魔法によって、僕達は、[港町スブキィ]の北側に【瞬間移動】した。
僕らが居る“土の道”の先には門が在り、町は壁で囲まれているようだ。
門の両脇では、兵士たちが、通行人とやり取りを交わしている…。
▽
僕らの順番となり、先頭の大公が、
「“ルシム=イズモ”である!」
そう名乗った。
大公に視線を送った数人の兵が、何かに気づいたみたいに〝ハッ!!〟として、敬礼しだす。
大公が着用している貴族風のジャケットの左胸元には、“雷”と“月”が合わさったデザインが銀糸で刺繍されている。
これは[大公家の紋章]だ。
以前も説明したことがあるけど、[イズモ王家]の場合は、“雷”に“太陽”と“月”がモチーフになっており、金糸が使われている。
今回、僕は、それらがあしらわれた服を着ていない。
どこに敵が潜んでいるか分からず、命を狙われる危険性があるからだ。
いずれにせよ。
[大公家の紋章]を認識したらしい兵士の一人が、
「どうぞ、お通りください。」
お辞儀した。
「うむ。」
「務め、大儀である。」
こう返した大公と共に、僕達は、無料で町へと入ってゆく……。
▽
門から15分ほど歩き、とある館に到着している。
そこでは“大公の長男家族”が暮らしているそうだ。
暫く[客間]で待っていたところ、外側から扉を開いた男性が、
「父上!」
「お越しになる際に連絡してくだされば、北門まで迎えを寄こしましたのに。」
いささか困惑した。
「まぁ、内密にしないといけない件もあったしな。」
そう伝えた大公が、
「お?」
「お主も来ておったか。」
長男さんの後ろに控えている人物に声をかける。
「お久しぶりでございます。」
「大公殿下。」
会釈した中年男性が、
「本日は、月に一度の定期相談がありましたので。」
このように答えた。
あとで聞いた話しによれば、彼は“領主”との事だ。
やはり[スブキィ]で生活しており、ここから、徒歩だと一時間くらいで、[ユニコーン車]であれば10分ちょっとの所に、館が在るらしい。
その領主の姪…、詳しくは妹君の娘さんが、大公の長男さんに嫁いだのだと。
補足として、“大公の長男家族”が過ごしている館は[領主の別宅]なのだそうだ。
ちなみに、大公の長男さんも、領主も、細身だった。
長男さんは、30代後半といったところで、ライトブラウンの髪をオールバックにしている。
領主はというと、60代前半あたりで、七三分けの髪と、鼻の下の髭が、ホワイトゴールドだ。
さて。
「弟君がたも、ご一緒でしたか。」
「……、おぉう、アシャーリー様、大きくなられましたなぁ。」
目を細めた流れで、
「して??」
「他の方々は?」
ふと尋ねる領主だった。
〝スッ〟と椅子から立った大公が、僕に手を向け、
「こちらは“ダイワの第二王子殿下”であらせられる。」
そう告げる。
「は??」
長男さんと、
「ご冗談ではなく?」
領主が、揃って首を傾げた。
こうした二人に、
「父上が、そのような戯言を口にするとでも??」
大公の次男さんが逆に質問する。
更には大公が真剣な表情を崩さないこともあってか、信じたらしい二人が、
「失礼いたしました!!」
慌てながら跪く。
「あぁ、そういうのは、別に」と、やめさせようとした僕に、またしてもマリーが急ぎ耳打ちした。
それによって、
「両者とも、ラクにせよ。」
こう許可した僕である。
▽
…………、大公が経緯を語り終えた。
「それでアシャーリーが“神法”を備えていたのか。」
長男さんが驚きつつも納得するなか、
「そのような事態になっていたとは。」
呟いた領主が〝うぅ~む〟と唸る。
「ここからが本題じゃ。」
「先ほど述べ知らせたとおり、ラルーシファ殿下とアシャーリーが“前世の友人知人”と再会を果たせるよう、スブキィに飲食店を開く。」
「が。」
「まずは、お主らに、アシャーリーたちの料理を味あわせたい故、厨房を借りるぞ。」
「昔から“論より証拠”と言うしな。」
大公に促され、
「ええ、勿論です。」
「こちらとしても、“チキュウ”とやらの調理法に興味がありますので。」
そう承諾する“アシャーリーの伯父君”だった―。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
異世界隠密冒険記
リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。
人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。
ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。
黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。
その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。
冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。
現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。
改稿を始めました。
以前より読みやすくなっているはずです。
第一部完結しました。第二部完結しました。
2度もあなたには付き合えません
cyaru
恋愛
1度目の人生。
デヴュタントで「君を見初めた」と言った夫ヴァルスの言葉は嘘だった。
ヴァルスは思いを口にすることも出来ない恋をしていた。相手は王太子妃フロリア。
フロリアは隣国から嫁いで来たからか、自由気まま。当然その所業は貴族だけでなく民衆からも反感を買っていた。
ヴァルスがオデットに婚約、そして結婚を申し込んだのはフロリアの所業をオデットが惑わせたとして罪を着せるためだった。
ヴァルスの思惑通りに貴族や民衆の敵意はオデットに向けられ遂にオデットは処刑をされてしまう。
処刑場でオデットはヴァルスがこんな最期の時まで自分ではなくフロリアだけを愛し気に見つめている事に「もう一度生まれ変われたなら」と叶わぬ願いを胸に抱く。
そして、目が覚めると見慣れた光景がオデットの目に入ってきた。
ヴァルスが結婚を前提とした婚約を申し込んでくる切欠となるデヴュタントの日に時間が巻き戻っていたのだった。
「2度もあなたには付き合えない」
デヴュタントをドタキャンしようと目論むオデットだが衣装も用意していて参加は不可避。
あの手この手で前回とは違う行動をしているのに何故かヴァルスに目を付けられてしまった。
※章で分けていますが序章は1回目の人生です。
※タグの①は1回目の人生、②は2回目の人生です
※初日公開分の1回目の人生は苛つきます。
★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。
★11月2日投稿開始、完結は11月4日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる