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第26話 連関②

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リィバの発言に、誰もが〝は??〟と不思議がったところ、

「初めまして。」
「パナーアと申します。」

先ほど地面に体を打ち付けていた女性が、丁寧に会釈した。

「その名前は確か…、“癒しを司る神”ですよね?」

記憶を辿ったマリーに、

「ええ。」
「そうした解釈で合っています。」

女性が穏やかに微笑む。

「まさか??」
「……、本当ですかな?」

怪しんだルシム大公が、慎重に窺う。

女性は〝ニコニコ〟しながら、

「間違いありませんよ。」
「これが証拠です。」

後光ごこうを発生させた。

全員が「ぬおッ!??」や「眩しい!!」といった感じで騒いだので、

「あ。」
「近距離で失礼しました。」

輝きを止めてくれる。

「ふむ…、きっと本物であろう。」

独り呟いた大公が、

「だとすれば、とんだ御無礼を!」

リィバのように跪く。

(いや、あれだけで信じてしまうのは安易すぎるのでは?)

僕が疑問を抱いていたところ、他の者たちが大公にならおうとしていた。

〝え??〟と僕が困惑したタイミングで、

「ああ、そういうのは結構ですから、皆さん立ってください!!」

女性が突き出した両手を〝ブンブン〟と左右に振る。

それに従った流れで、

「して??」
「パナーアしん様は何故なにゆえここに落ち……、お出ましになられたのですか?」

大公が言葉を選んだ。

「実は…。」
「ラルーシファさんと、アシャーリーさんに、お話しがあります。」

女神様が述べたら、

「では、一旦、中に入りましょう。」

こう提案する大公だった……。



[客間]に主だった顔ぶれが集まっている。

それぞれに紅茶が配られたところで、

「よろしいでしょうか??」

パナーア様が見回す。

各自が頷いた事によって、

「まず…、お二人を始め、日本の方々を、この世界に転生させたのは、わたくしです。」

このようにパナーア様が伝えられた。

「ん?」
「武神様ではなく??」

首を傾げた僕に、

「……、あぁー。」
「およそ五百年前の件は、わたくしの伯母上様によるものですが、こちらは別です。」

パナーア様が答えてくれる。

「え?!」
「武神様って、女性だったんですか??」

僕がビックリしたら、

「そうですけど…。」
「あ、もしかして、文献に残されていなかったのですか?」

逆にパナーア様に質問されてしまった。

周りも、

「てっきり男神おがみだとばかり……。」

といった反応を示す。

そうしたなかで、

「あの…、先ほどの口ぶりからして、〝私達以外も転生している〟っていうことですよね??」

アシャーリーが窺う。

「はい、その通りです。」
「が。」
「生まれ変わったのは、全体の半分ぐらい・・・・・・・・です。」

こう返したパナーア様に、

「なぜですか?」

アシャーリーが聞いたところ、

「亡くなった人の数が、そうでしたので。」

との事だった。

「……、つまり、〝生き残った人たちもいる〟と??」

新たに僕が尋ねてみたら、

「ええ。」

肯定したパナーア様が、

「あのとき、残念ながら助からなかったのは、男子生徒さん10名に、女子生徒さん10名、学級担任さんとバスガイドさんの1名ずつです。」
「他の生徒さんや、運転手さん、計19名は、傷を負いながらも命拾いしました。」

そのように教えてくれる。

「そうですか…。」

僕や、アシャーリーが、少なからず安堵しつつ、冷静になっていったところ、

「ラルーシファ王子達は、どのようにして転生なされたのでしょう?」

マリーが興味津々で伺う。

パナーア様は、

「えーっとですね……。」
「今から約10年前に、わたくしは“思念体”を飛ばして、日本を観光していました。」
「そして、あの土砂崩れを、目撃したのです。」
わたくしが上空で戸惑っていると、天に召されようとしていた幾つもの魂が寄ってきました。」
「〝神様だぁー〟〝お迎えに来てくれたんだぁー〟〝わぁーい〟と、それはもう無邪気に…。」
「追い払うことなどできなかったわたくしは、宙に漂っていた全ての魂を、つい、神殿の自室に連れ帰ってしまった後に、この世界に生まれ変わらせてあげたのです。」

こう喋られたのだ。

「〝その際に神法しんぽうを授けられた〟という訳ですな??」

レオディンの問いに、

「いえいえ。」
「伯母上様のときもそうだったようですが……、魂そのもの・・・・・が神気に触れたことで、自動的に備わったみたいです。」
「ただし、個々の性質によって扱える種類が異なります。」

パナーア様が説明した。

誰もが〝ふぅ~む〟と納得するなか、

「初代ラダーム様と近衛衆このえしゅうは、同じ地域に転生していたり、15歳で前世の記憶が甦った、との事ですが…。」
「僕らは何故そうではないのでしょうか?」

再び疑問を投げかけてみたところ、

「伯母上様も、わたくしも、できうる限りの範囲で皆さんの要望に応じた結果ですよ。」

そう告げたパナーア様が、ここから詳細を語ってゆく―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

[パナーア神]も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。
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