26 / 107
黎明期
第26話 連関②
しおりを挟む
リィバの発言に、誰もが〝は??〟と不思議がったところ、
「初めまして。」
「パナーアと申します。」
先ほど地面に体を打ち付けていた女性が、丁寧に会釈した。
「その名前は確か…、“癒しを司る神”ですよね?」
記憶を辿ったマリーに、
「ええ。」
「そうした解釈で合っています。」
女性が穏やかに微笑む。
「まさか??」
「……、本当ですかな?」
怪しんだルシム大公が、慎重に窺う。
女性は〝ニコニコ〟しながら、
「間違いありませんよ。」
「これが証拠です。」
後光を発生させた。
全員が「ぬおッ!??」や「眩しい!!」といった感じで騒いだので、
「あ。」
「近距離で失礼しました。」
輝きを止めてくれる。
「ふむ…、きっと本物であろう。」
独り呟いた大公が、
「だとすれば、とんだ御無礼を!」
リィバのように跪く。
(いや、あれだけで信じてしまうのは安易すぎるのでは?)
僕が疑問を抱いていたところ、他の者たちが大公に倣おうとしていた。
〝え??〟と僕が困惑したタイミングで、
「ああ、そういうのは結構ですから、皆さん立ってください!!」
女性が突き出した両手を〝ブンブン〟と左右に振る。
それに従った流れで、
「して??」
「パナーア神様は何故ここに落ち……、お出ましになられたのですか?」
大公が言葉を選んだ。
「実は…。」
「ラルーシファさんと、アシャーリーさんに、お話しがあります。」
女神様が述べたら、
「では、一旦、中に入りましょう。」
こう提案する大公だった……。
▽
[客間]に主だった顔ぶれが集まっている。
それぞれに紅茶が配られたところで、
「よろしいでしょうか??」
パナーア様が見回す。
各自が頷いた事によって、
「まず…、お二人を始め、日本の方々を、この世界に転生させたのは、私です。」
このようにパナーア様が伝えられた。
「ん?」
「武神様ではなく??」
首を傾げた僕に、
「……、あぁー。」
「およそ五百年前の件は、私の伯母上様によるものですが、こちらは別です。」
パナーア様が答えてくれる。
「え?!」
「武神様って、女性だったんですか??」
僕がビックリしたら、
「そうですけど…。」
「あ、もしかして、文献に残されていなかったのですか?」
逆にパナーア様に質問されてしまった。
周りも、
「てっきり男神だとばかり……。」
といった反応を示す。
そうしたなかで、
「あの…、先ほどの口ぶりからして、〝私達以外も転生している〟っていうことですよね??」
アシャーリーが窺う。
「はい、その通りです。」
「が。」
「生まれ変わったのは、全体の半分ぐらいです。」
こう返したパナーア様に、
「なぜですか?」
アシャーリーが聞いたところ、
「亡くなった人の数が、そうでしたので。」
との事だった。
「……、つまり、〝生き残った人たちもいる〟と??」
新たに僕が尋ねてみたら、
「ええ。」
肯定したパナーア様が、
「あのとき、残念ながら助からなかったのは、男子生徒さん10名に、女子生徒さん10名、学級担任さんとバスガイドさんの1名ずつです。」
「他の生徒さんや、運転手さん、計19名は、傷を負いながらも命拾いしました。」
そのように教えてくれる。
「そうですか…。」
僕や、アシャーリーが、少なからず安堵しつつ、冷静になっていったところ、
「ラルーシファ王子達は、どのようにして転生なされたのでしょう?」
マリーが興味津々で伺う。
パナーア様は、
「えーっとですね……。」
「今から約10年前に、私は“思念体”を飛ばして、日本を観光していました。」
「そして、あの土砂崩れを、目撃したのです。」
「私が上空で戸惑っていると、天に召されようとしていた幾つもの魂が寄ってきました。」
「〝神様だぁー〟〝お迎えに来てくれたんだぁー〟〝わぁーい〟と、それはもう無邪気に…。」
「追い払うことなどできなかった私は、宙に漂っていた全ての魂を、つい、神殿の自室に連れ帰ってしまった後に、この世界に生まれ変わらせてあげたのです。」
こう喋られたのだ。
「〝その際に神法を授けられた〟という訳ですな??」
レオディンの問いに、
「いえいえ。」
「伯母上様のときもそうだったようですが……、魂そのものが神気に触れたことで、自動的に備わったみたいです。」
「ただし、個々の性質によって扱える種類が異なります。」
パナーア様が説明した。
誰もが〝ふぅ~む〟と納得するなか、
「初代ラダーム様と近衛衆は、同じ地域に転生していたり、15歳で前世の記憶が甦った、との事ですが…。」
「僕らは何故そうではないのでしょうか?」
再び疑問を投げかけてみたところ、
「伯母上様も、私も、できうる限りの範囲で皆さんの要望に応じた結果ですよ。」
そう告げたパナーア様が、ここから詳細を語ってゆく―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
[パナーア神]も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。
「初めまして。」
「パナーアと申します。」
先ほど地面に体を打ち付けていた女性が、丁寧に会釈した。
「その名前は確か…、“癒しを司る神”ですよね?」
記憶を辿ったマリーに、
「ええ。」
「そうした解釈で合っています。」
女性が穏やかに微笑む。
「まさか??」
「……、本当ですかな?」
怪しんだルシム大公が、慎重に窺う。
女性は〝ニコニコ〟しながら、
「間違いありませんよ。」
「これが証拠です。」
後光を発生させた。
全員が「ぬおッ!??」や「眩しい!!」といった感じで騒いだので、
「あ。」
「近距離で失礼しました。」
輝きを止めてくれる。
「ふむ…、きっと本物であろう。」
独り呟いた大公が、
「だとすれば、とんだ御無礼を!」
リィバのように跪く。
(いや、あれだけで信じてしまうのは安易すぎるのでは?)
僕が疑問を抱いていたところ、他の者たちが大公に倣おうとしていた。
〝え??〟と僕が困惑したタイミングで、
「ああ、そういうのは結構ですから、皆さん立ってください!!」
女性が突き出した両手を〝ブンブン〟と左右に振る。
それに従った流れで、
「して??」
「パナーア神様は何故ここに落ち……、お出ましになられたのですか?」
大公が言葉を選んだ。
「実は…。」
「ラルーシファさんと、アシャーリーさんに、お話しがあります。」
女神様が述べたら、
「では、一旦、中に入りましょう。」
こう提案する大公だった……。
▽
[客間]に主だった顔ぶれが集まっている。
それぞれに紅茶が配られたところで、
「よろしいでしょうか??」
パナーア様が見回す。
各自が頷いた事によって、
「まず…、お二人を始め、日本の方々を、この世界に転生させたのは、私です。」
このようにパナーア様が伝えられた。
「ん?」
「武神様ではなく??」
首を傾げた僕に、
「……、あぁー。」
「およそ五百年前の件は、私の伯母上様によるものですが、こちらは別です。」
パナーア様が答えてくれる。
「え?!」
「武神様って、女性だったんですか??」
僕がビックリしたら、
「そうですけど…。」
「あ、もしかして、文献に残されていなかったのですか?」
逆にパナーア様に質問されてしまった。
周りも、
「てっきり男神だとばかり……。」
といった反応を示す。
そうしたなかで、
「あの…、先ほどの口ぶりからして、〝私達以外も転生している〟っていうことですよね??」
アシャーリーが窺う。
「はい、その通りです。」
「が。」
「生まれ変わったのは、全体の半分ぐらいです。」
こう返したパナーア様に、
「なぜですか?」
アシャーリーが聞いたところ、
「亡くなった人の数が、そうでしたので。」
との事だった。
「……、つまり、〝生き残った人たちもいる〟と??」
新たに僕が尋ねてみたら、
「ええ。」
肯定したパナーア様が、
「あのとき、残念ながら助からなかったのは、男子生徒さん10名に、女子生徒さん10名、学級担任さんとバスガイドさんの1名ずつです。」
「他の生徒さんや、運転手さん、計19名は、傷を負いながらも命拾いしました。」
そのように教えてくれる。
「そうですか…。」
僕や、アシャーリーが、少なからず安堵しつつ、冷静になっていったところ、
「ラルーシファ王子達は、どのようにして転生なされたのでしょう?」
マリーが興味津々で伺う。
パナーア様は、
「えーっとですね……。」
「今から約10年前に、私は“思念体”を飛ばして、日本を観光していました。」
「そして、あの土砂崩れを、目撃したのです。」
「私が上空で戸惑っていると、天に召されようとしていた幾つもの魂が寄ってきました。」
「〝神様だぁー〟〝お迎えに来てくれたんだぁー〟〝わぁーい〟と、それはもう無邪気に…。」
「追い払うことなどできなかった私は、宙に漂っていた全ての魂を、つい、神殿の自室に連れ帰ってしまった後に、この世界に生まれ変わらせてあげたのです。」
こう喋られたのだ。
「〝その際に神法を授けられた〟という訳ですな??」
レオディンの問いに、
「いえいえ。」
「伯母上様のときもそうだったようですが……、魂そのものが神気に触れたことで、自動的に備わったみたいです。」
「ただし、個々の性質によって扱える種類が異なります。」
パナーア様が説明した。
誰もが〝ふぅ~む〟と納得するなか、
「初代ラダーム様と近衛衆は、同じ地域に転生していたり、15歳で前世の記憶が甦った、との事ですが…。」
「僕らは何故そうではないのでしょうか?」
再び疑問を投げかけてみたところ、
「伯母上様も、私も、できうる限りの範囲で皆さんの要望に応じた結果ですよ。」
そう告げたパナーア様が、ここから詳細を語ってゆく―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
[パナーア神]も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる