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黎明期
第14話 交錯するもの④
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▽
俺の名は、ベルーグ・ゾアノ。
[ダイワ王国]の“元師団長”だ。
ラルーシファ殿下の教育係を務めるようになって約三年が経っている。
殿下は、もともと[攻撃系のスキル]を何ひとつ持ち合わせていなかったものの、鍛錬によって習得なされた。
俺が担当している【剣術】と【打撃術】を始め、【槍術】【武術】【狙撃術】のどれもが“壱”ではあるが…。
それでも、素人よりはマシになっておられる。
まぁ、個人的には、(低級とは言え神法を扱えるんだから別に良くね?)て感じだ。
しかし、殿下は、あまり満足しておられないようで、どの修行も熱心に取り組んでこられた。
なんでも〝ある目標があって、もっと強くなりたい〟との事であらせられる。
詳細を伺ってみたが〝その時が来たら教えるよ〟と微笑んではぐらかされてしまった。
気にはなるが、殿下のことだから、悪い方向に力を使ったりはしないだろう。
こうした点においては問題のない御仁だ。
もし仮に殿下が道を誤りそうになったら、我々が正せばよい。
そのための教育係でもあるのだから……。
さて。
或る日、殿下が[神剣]を抜かれた。
奇跡を目の当たりにした俺などは、おもわず興奮してしまったものだ。
だが、これによって幾つかの問題が起きてしまう。
まず、レオディン殿/リィバ殿/マリー殿によれば〝初代陛下はムラクモから光線を放っていたとの記録がある〟との事だった。
剣に関しては俺が指導させていただいているが、理屈がサッパリ分からん。
どんどん頭を悩ませるようになっていったところ、殿下が暗殺されかけたそうだ。
殿下ご自身の活躍と、ユーン殿達“お世話係”によって、一旦は落ち着いたものの、再び襲ってきやがった。
しかも、その場に俺が居るというのに。
既に現役を退いたとはいえ、舐めてもらっちゃあ困る。
ま、大半には逃げられてしまったが…。
何よりも驚かされたのは、ラノワマ宰相だ。
てっきり“黒幕”だと決めつけてばかりいたので、殿下を庇ったのには少なからず戸惑った。
これにはリーシア王女も意外そうにしておられたぐらいだ。
とにもかくにも。
二度に亘ってレオディン殿が悔しがっていたらしい。
俺は、城から近い所で小さいながらも二階建ての家で暮らしているため、いつも歩いて通っている。
一方のレオディン殿は〝王城で生活しておるというのにラルーシファ殿下のお役に立てず不甲斐なし〟〝くぅ~ッ〟と無念がっていたそうだ。
そんなことより、殿下の御無事に安堵する俺だった……。
▽
私は、マリー・ラキリアス。
ラルーシファ王子の【槍術】と[歴史学]を担当しております。
ちなみに、私の母は、リーシア王女の教育係です。
ここ数年、リーシア王女の悪戯は減ってきたらしいのですが、まだまだ手を焼かされているのだとか。
更には、妹君のエルーザ王女が、最近“おてんば”に育ってきておられ、城内の人々は頭を痛めています。
完全にリーシア王女の影響でしょう。
話しを戻して。
リーシア王女は“天才肌”とのことなので、悪さのし過ぎで評判がイマイチなのは勿体ない限りであります。
なんでも、【魔法】の殆どを得ておいでなのと、【打撃術】に含まれている“鞭”と【狙撃術】の一種である“弓”に長けておられるそうです。
まぁ、ラルーシファ王子も負けてはおられませんけどね。
生まれつき【神法】が備わっていた時点で、かなり凄い事であります。
あと、特殊スキルの【解読】という能力も、なかなかのものです。
難しい文字であっても簡単にスラスラと読み書きできてしまうため、レオディン殿は〝儂の出番がない〟と嘆いていましたが…。
それはさて置き。
王子は、[戦闘系のスキル]も全て身に付けられました。
ひたむきに打ち込んでこられたので、専属の教育係たちにとっては喜ばしいことです。
ただ、御本人は〝まだまだ兄上や姉上には遠く及ばない〟と謙遜なさっておられます。
これには多くの方が好印象を抱いているみたいです。
そうした王子は危機に見舞われました。
[ムラクモ]を抜剣なされた際には感動した私ではありますが、すぐに派閥争いに発展しかねない事を懸念したのです。
まさか、命を狙われるとまでは思ってもいませんでしたが。
[神剣]についての情報は、まだ国外には広まっていない筈なので、これらは内部による犯行でしょう。
それだけ実行に移ったのが早すぎるのです。
結局のところ、黒幕が判明していないため、三度、四度と、今後も似たような状況が起こりかねません。
王子を暗殺させないためにも、お傍に仕える私達は一層に団結していくのでした……。
▽
私は“ユーン・バーンネル”でございます。
ラルーシファ様の“お世話係筆頭”であり“教育係”です。
なお、“黒猫の獣人”でもあります。
世界には[獣人族の王国]も幾つか存在しているらしいのですが、私などの先祖は[ダイワ王国]に定住したのだそうです。
ここら辺の経緯は、いつか機会があれば致しましょう。
それよりも、ラルーシファ様の件です。
【神法】を扱えるだけでなく、[ムラクモ]をお抜きになられるとは…。
どちらも“伝説級”なだけに、感激の極みにございます!
特に、[抜剣の儀]を終え、廊下に出たときは、あまりの嬉しさから踊りだしそうになりました。
立場上、堪えてみせましたが。
何せ私は“お世話係の筆頭”ですからね。
変な噂が広まりでもしたなら、周りに示しがつきません。
素直に大はしゃぎしていらっしゃるレオディン殿とリィバ殿が羨ましいです!!
……、コホンッ。
失礼。
取り乱してしまいました。
本題に入りましょう。
過日とはなりますが、ラルーシファ様が襲撃されてしまったのです。
一度ならず二度までも。
いつぞや自分に誓ったように、一回目はお護りできました。
しかしながら、二回目は間に合わなかったのです。
宰相様とベルーグ殿のお陰もあって、ラルーシファ様に別状はありませんでした。
ラルーシファ様ご自身の気転もあったそうなので、流石にございます。
とは言え、個人的には不覚です。
もっと注意を払っておくべきでした。
城兵の皆さんには、陛下が〝警戒を強めよ〟と勅命なされたので、現在は物々しい雰囲気となっております。
敵が手出しするのは不可能なぐらいに。
こうした厳戒態勢のなか、マリー殿が「あの集団は見境がないようなので強行突破しかねません」「ラルーシファ王子のために一層の団結を図りましょう」と述べられ、賛同する私どもでした―。
俺の名は、ベルーグ・ゾアノ。
[ダイワ王国]の“元師団長”だ。
ラルーシファ殿下の教育係を務めるようになって約三年が経っている。
殿下は、もともと[攻撃系のスキル]を何ひとつ持ち合わせていなかったものの、鍛錬によって習得なされた。
俺が担当している【剣術】と【打撃術】を始め、【槍術】【武術】【狙撃術】のどれもが“壱”ではあるが…。
それでも、素人よりはマシになっておられる。
まぁ、個人的には、(低級とは言え神法を扱えるんだから別に良くね?)て感じだ。
しかし、殿下は、あまり満足しておられないようで、どの修行も熱心に取り組んでこられた。
なんでも〝ある目標があって、もっと強くなりたい〟との事であらせられる。
詳細を伺ってみたが〝その時が来たら教えるよ〟と微笑んではぐらかされてしまった。
気にはなるが、殿下のことだから、悪い方向に力を使ったりはしないだろう。
こうした点においては問題のない御仁だ。
もし仮に殿下が道を誤りそうになったら、我々が正せばよい。
そのための教育係でもあるのだから……。
さて。
或る日、殿下が[神剣]を抜かれた。
奇跡を目の当たりにした俺などは、おもわず興奮してしまったものだ。
だが、これによって幾つかの問題が起きてしまう。
まず、レオディン殿/リィバ殿/マリー殿によれば〝初代陛下はムラクモから光線を放っていたとの記録がある〟との事だった。
剣に関しては俺が指導させていただいているが、理屈がサッパリ分からん。
どんどん頭を悩ませるようになっていったところ、殿下が暗殺されかけたそうだ。
殿下ご自身の活躍と、ユーン殿達“お世話係”によって、一旦は落ち着いたものの、再び襲ってきやがった。
しかも、その場に俺が居るというのに。
既に現役を退いたとはいえ、舐めてもらっちゃあ困る。
ま、大半には逃げられてしまったが…。
何よりも驚かされたのは、ラノワマ宰相だ。
てっきり“黒幕”だと決めつけてばかりいたので、殿下を庇ったのには少なからず戸惑った。
これにはリーシア王女も意外そうにしておられたぐらいだ。
とにもかくにも。
二度に亘ってレオディン殿が悔しがっていたらしい。
俺は、城から近い所で小さいながらも二階建ての家で暮らしているため、いつも歩いて通っている。
一方のレオディン殿は〝王城で生活しておるというのにラルーシファ殿下のお役に立てず不甲斐なし〟〝くぅ~ッ〟と無念がっていたそうだ。
そんなことより、殿下の御無事に安堵する俺だった……。
▽
私は、マリー・ラキリアス。
ラルーシファ王子の【槍術】と[歴史学]を担当しております。
ちなみに、私の母は、リーシア王女の教育係です。
ここ数年、リーシア王女の悪戯は減ってきたらしいのですが、まだまだ手を焼かされているのだとか。
更には、妹君のエルーザ王女が、最近“おてんば”に育ってきておられ、城内の人々は頭を痛めています。
完全にリーシア王女の影響でしょう。
話しを戻して。
リーシア王女は“天才肌”とのことなので、悪さのし過ぎで評判がイマイチなのは勿体ない限りであります。
なんでも、【魔法】の殆どを得ておいでなのと、【打撃術】に含まれている“鞭”と【狙撃術】の一種である“弓”に長けておられるそうです。
まぁ、ラルーシファ王子も負けてはおられませんけどね。
生まれつき【神法】が備わっていた時点で、かなり凄い事であります。
あと、特殊スキルの【解読】という能力も、なかなかのものです。
難しい文字であっても簡単にスラスラと読み書きできてしまうため、レオディン殿は〝儂の出番がない〟と嘆いていましたが…。
それはさて置き。
王子は、[戦闘系のスキル]も全て身に付けられました。
ひたむきに打ち込んでこられたので、専属の教育係たちにとっては喜ばしいことです。
ただ、御本人は〝まだまだ兄上や姉上には遠く及ばない〟と謙遜なさっておられます。
これには多くの方が好印象を抱いているみたいです。
そうした王子は危機に見舞われました。
[ムラクモ]を抜剣なされた際には感動した私ではありますが、すぐに派閥争いに発展しかねない事を懸念したのです。
まさか、命を狙われるとまでは思ってもいませんでしたが。
[神剣]についての情報は、まだ国外には広まっていない筈なので、これらは内部による犯行でしょう。
それだけ実行に移ったのが早すぎるのです。
結局のところ、黒幕が判明していないため、三度、四度と、今後も似たような状況が起こりかねません。
王子を暗殺させないためにも、お傍に仕える私達は一層に団結していくのでした……。
▽
私は“ユーン・バーンネル”でございます。
ラルーシファ様の“お世話係筆頭”であり“教育係”です。
なお、“黒猫の獣人”でもあります。
世界には[獣人族の王国]も幾つか存在しているらしいのですが、私などの先祖は[ダイワ王国]に定住したのだそうです。
ここら辺の経緯は、いつか機会があれば致しましょう。
それよりも、ラルーシファ様の件です。
【神法】を扱えるだけでなく、[ムラクモ]をお抜きになられるとは…。
どちらも“伝説級”なだけに、感激の極みにございます!
特に、[抜剣の儀]を終え、廊下に出たときは、あまりの嬉しさから踊りだしそうになりました。
立場上、堪えてみせましたが。
何せ私は“お世話係の筆頭”ですからね。
変な噂が広まりでもしたなら、周りに示しがつきません。
素直に大はしゃぎしていらっしゃるレオディン殿とリィバ殿が羨ましいです!!
……、コホンッ。
失礼。
取り乱してしまいました。
本題に入りましょう。
過日とはなりますが、ラルーシファ様が襲撃されてしまったのです。
一度ならず二度までも。
いつぞや自分に誓ったように、一回目はお護りできました。
しかしながら、二回目は間に合わなかったのです。
宰相様とベルーグ殿のお陰もあって、ラルーシファ様に別状はありませんでした。
ラルーシファ様ご自身の気転もあったそうなので、流石にございます。
とは言え、個人的には不覚です。
もっと注意を払っておくべきでした。
城兵の皆さんには、陛下が〝警戒を強めよ〟と勅命なされたので、現在は物々しい雰囲気となっております。
敵が手出しするのは不可能なぐらいに。
こうした厳戒態勢のなか、マリー殿が「あの集団は見境がないようなので強行突破しかねません」「ラルーシファ王子のために一層の団結を図りましょう」と述べられ、賛同する私どもでした―。
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