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黎明期

第10話 不測①

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あれから10日が過ぎた夜中――。

僕は、なかなか寝付けずにいた。

今は、ベッドで仰向けになったまま、なんとなく“左側の窓”の外に視線を送っている。

ちなみに、自室は割と広く、[アーチ状のガラス窓]が5つ並んで備えられていた。

そのうちの1つから満月を眺めている。

なお、こちらの月は、地球の4倍くらいの大きさだ。

太陽は、あまり変わらないサイズみたいだけれど…。

日本での日々が不意に思い出され、なんだか自然とノスタルジックに浸っていたところ、窓の3つが殆ど同時に割れるなり、何者か達が飛び込んできた。

ビックリして上半身を起こした僕の目に映ったのは、ある六人組だ。

その全員が、黒い“ロングーブーツ/服/革手袋/フード付きマント/顔の下半分を隠す布マスク”といった格好をしている。

こうした集団の一人が、

「さすがに音が派手だったか。」

眉間にシワを寄せるのと共に舌打ちしたところ、

「いいから、さっさと殺して、早いとこズラからずぞ!」

別の人物が促した。

どちらも男性のようだ。

それはさて置き。

誰もが腰の後ろに装着している[短剣]を抜く。

迫る死の予感に〝ゾワッ!!〟とした僕は、咄嗟に右手を突き出して直径50㎝といった[ホワイトゴールド白金のサークル]を構築するなり、

「サンダー・ボール!」

このように唱えた。

それによって、直径5㎝であろう【雷の玉】が、10コ放たれる。

半数には直撃したものの、他の面子には躱されてしまった。

いや、ここら辺は、僕が【神法しんぽう】を出現させた時点で、身を低めたらしい。

この三人が姿勢を戻して再び構えたところに、おもいっきりドアを開けながら、

「如何なさいました!!?」
「ラルーシファ様!」

“ユーン・バーンネル”が部屋に入って来た。

彼女の背後には、お世話係たちが続いている。

そうした[獣人グループ]はパジャマ姿だった。

いずれにしろ。

が悪くなったのを悟ってか、

退くぞ!!」

男性達が窓から逃げ出す。

ただし、先ほど【サンダー・ボール】がヒットして感電した三人は、いまだに痙攣しており、自由には動けずにいるため、捨て去られてしまった。

ここへ、

「第二王子殿下!」
「何かございましたか??」

四人の城兵が走って訪れる。

後方を振り返ったユーンが、

「夜討ちです!!」
「我々は敵を追います!」
「皆さんは、倒れている者どもの捕縛と、陛下への御報告を!!」

こう伝えた途端、お世話係の獣人グループを伴って、窓から外へと向かった。

そんな窓の向こう側には、太めのロープが三本ぶら下がっている。

これら・・・を使って襲撃者らは侵入してきたのだろう〟と考えていたところで、城兵のうち一人が駆けだす。

おそらく、僕などの父と母の寝室を目指したのだろう。

二人は、縄で縛った敵たちを地下牢へと連れて行く。

残りの一人は、ベッドに座っている僕のそばに佇んで、周りを警戒している……。



数分が経った。

慌てた様子の父上と母上が入室してくる。

母は、眠っているエルーザを抱っこしていた。

余談になるかもしれないけど、妹は4歳のため、まだ両親と一緒に寝ている。

「大丈夫か??!」
「ラルーシファ!!」

そのように確認してきた父の顔は、いささか青ざめていた。

母上も不安そうにしている。

「ええ、ユーンたちのお陰もあって。」

こう僕が答えたタイミングで、廊下から“お世話係”が帰ってきた。

「!」
「陛下、王妃様。」

すぐに気づいたユーンを筆頭に、獣人メンバーが跪く。

「して?」
「ラルーシファの謀殺を企んだとかいう不届き者どもは??」

父上に問われ、

「はッ。」
「この時間帯も営業している飲食店などが建ち並ぶ一角に紛れ込まれてしまい、見失ってしまいました。」
「申し訳ございません。」

ユーンが頭を下げる。

「そうか…。」

〝ふぅ――ッ〟と息を吐いた父が、

「まぁ、良い。」
「ラルーシファの命があったことを、まずは喜ぼう。」

そう述べた。

更には、

「きっと、ムラクモを抜く事ができたラルーシファを、武神様や初代様がお守りしてくださったに違いありません。」
「心より感謝いたしましょう。」

母が目を細める。

「うむ。」
「そうだな。」

穏やかに微笑んだ父上は、

「……、ところで、ラルーシファよ。」
「窓が壊されてしまった故、今宵は何処いずこで就寝いたす?」

このように訊ねてきた流れで、

「ラダン、もしくは、リーシアに、任せるか??」

〝うぅ~む〟と悩みだした。

「僭越ながら、わたくしの部屋にお越しいただきとうございます。」
「理由と致しましては、ベッドが一つ余っているのと、ラルーシファ様が新たに狙われた場合すぐに対応できますので。」

そう進言したのは、当然、ユーンだ。

〝ふむ〟と頷いた父が、

「それが最適かもしれぬな。」

こう納得したことで、ユーンに預けられる運びとなった。

補足として、基本、お世話係は“二人部屋”である。

ただ、リーダー格のユーンだけは一人で利用しているため、ベッドに余裕があった……。



翌朝。

家族が食卓を囲んでいる。

「ラル君。」
「昨夜、暗殺されかけたんですって??」

リーシア姉上の質問に、

「そうなのか!!?」

ラダン兄上が驚く。

「あ、はい。」

簡略的に肯定したら、

「その件だが…。」
「投獄した者どもは、未明に、“亜空間収納”から取り出したらしき猛毒薬を飲んで、自害していたとの事だ。」
「逃げた三人については、現在、兵達が捜査しておるため、案ずるな。」
「あとは……。」
「これから職人を呼び寄せ、窓を修理させるので、暫く部屋を空けておくように。」

こう父が告げてきたので、

「かしこまりました。」

会釈して応じる僕だった―。
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