GOD SLAYER’S

猫ノ謳

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― 第五章・魔の領域 ―

第222話 遠征地にて・破

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あれから一週間が過ぎている。

“西の領土”のなかでも特に大きな町へと、[妖怪の軍]の第一陣が訪れていた。

石壁で囲まれた町の東西南北には“鉄製の門”が設けられている。

鬼王きおうは、それら“閉ざされた門”の正面に、四分割した軍勢を配置していた。

なお、ここに至る道中に、別の町が在ったので、そこにも100万の兵を駐屯させている。

このため、現在の“第一陣”は800万となっていた。

なので、200万ずつを、門の前に待機させているといった計算になる。


ちなみに、あの港から、“第二陣”は北方へ、“第三陣”は南方へと、それぞれの領土に進んでいるのだそうだ。


PM20:00頃。

“西門”あたりにて。

夏の風を浴びつつ、空を見上げ、

「今宵は新月か。」
「動くとすれば深夜から朝方に掛けて、だな。」

ふと呟く鬼王であった…。


何体かの見張り達を残し、殆どの者は各自のテント(ゲル)内で眠りに就いている。

時刻は未明。

「失礼します、陛下。」

幕舎の外より聞こえてきた何者かの声によって、目を覚ました“着物姿の鬼王”が、ベッドで体を起こす。

左隣には、妻が寝ているみたいだ。

「申せ。」

主君に促され、

「はッ。」
「つい先ほど〝町で暮らしていたのだろう神どもが東へと飛んで行った〟との報せがございました。」

家臣が述べた。

この妖怪は“一つ目小僧”であり、[簡易的な武士の甲冑]を纏っている。

「やはり逃げおったか。」

〝フッ〟と笑みを零した王に、

「如何なさいます?」

臣が伺う。

「よい、放っておけ。」
「日が昇れば、人族が交渉に赴いて来るであろうぞ。」
「おそらく奇襲は無いと思うが、念のため警戒を怠らぬよう、みなに伝えよ。」

鬼王が命令したところで、

「ははッ。」

会釈した“一つ目小僧”が、小走りに去っていった……。


AM07:30。

食事を済ませた鬼王たちのもとに、男性二人と女性一人の計三名が足を運んでいる。

服装からして“召使い”のようだ。

そのなかでも60代前半らしき“白髪頭の紳士”が、

身共みどもの町を治めし神々が、民衆を捨て、王都に避難したようですので、これよりは貴方様に従います。」

こう説明して、お辞儀したのだった。

彼らによれば、中級二柱に、下級五百柱が、移動したとのことである。

なんでも、連中を束ねていた“西方領主”である男神おがみが、海のいくさで亡くなったらしく、統率が取れなくなっているのだそうだ。

その神こそが、[GOD SLAYER’S]や[餓狼がろう蒼群そうぐん]と[櫻莉おうり&バーガイン]によって倒された“総大将・・・”であった。

とにもかくにも。

「ふむ。」
「事情は分かった。」
「ならば、われなんじらを保護してやろうぞ。」
「これから、町を護らせる者どもを選出する故、安心いたせい。」

威厳をもって宣言する鬼王であった―。
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