41 / 60
41.正体
しおりを挟む
翌日――。
沖奈朔任隊長と宮瑚留梨花は休みである。
が。
PM14:00頃に、隊服・マント・帽子といった格好の沖奈が[事務所]に現れた。
ディスク席に座っている緋島早梨衣が気づいて、
「どうしたんすか??」
何気に尋ねる。
これによって、筺健に隈本一帆も顔を上げた。
なお、鐶倖々徠副隊長&意川敏矢はパトロール中である。
「架浦さんは、どちらに?」
沖奈が質問したところ、
「タバコを吸いに行ってるみたいですが…。」
筺が答えた。
そこに、ドアを〝ガチャッ〟と開けた架浦聖徒が、
「ん?? 隊長。」
「……、なんか急用か?」
軽く首を傾げる。
「いえ、まぁ、…、本当は昨日のうちに動くつもりだったのですが、総監と相談した結果、このタイミングになってしまいました。」
こう伝えた沖奈に、
「何がだ??」
架浦が眉をひそめた。
「……。」
「まわりくどいことは無しにして、単刀直入にお伺いします。」
「架浦さん。」
「あなたは、関東司令官によって十三番隊に送り込まれた“スパイ”ですよね?」
そのように沖奈が指摘したら、
「なにッ?!」
筺と、
「マジか!?」
緋島が、ほぼ同時に立ち上がったのである。
一帆は椅子に腰かけたままビックリしている。
「は??!」
「なぁ~に言ってんだよ、隊長。」
「オレには意味が分かんねぇんだけど。」
おどける架浦に、
「惚けても無駄ですよ。」
〝ニッコリ〟した沖奈が、
「これから根拠を述べさせていただきますが、その前に……。」
銃口を向けて、
「能力を扱えないよう、後頭部で手を組んでください。」
「さもなければ、撃ちますよ。」
こう促したのであった。
「…、目が笑ってねぇな。」
「つー事は、本気って訳か。」
〝はぁー〟と溜息を吐いた架浦が、沖奈に従う。
歩いて来た筺/緋島/一帆が、ソファの近くで止まったところで、
「では、説明しましょう。」
沖奈が告げる。
「まず、〝元研究所あたりを漠皁組の若頭がうろついているみたいだ〟といった情報を〝警察が連絡してくれた〟と話しましたが、あれは嘘です。」
「実際は、数日前に、僕が総監に頼んで、東京組第二番隊に所属している“千里眼のスキル持ち”の方に捜索してもらいました。」
「ご自身は通常の職務と並行しながらだったので、いささか時間を要しましたが……、漠皁組の組長や幹部の証言をもとに、その特徴に一致した人物を見つけ出してくださったんですよ。」
そう教えた沖奈に、
「千里眼??」
「そんな能力者が“H.H.S.O”に居るなんて、初耳だが?」
架浦が不思議そうにした。
「まぁ、そうでしょう。」
「公には〝別のスキル〟ということにされていますからね。」
「まだ関東司令官は入隊していなかったみたいなので、架浦さん達も把握できていないのは当然です。」
このように沖奈が返したところ、
「成程、ねぇ。」
「それで…。」
「その千里眼を使って、オレが元研究所に向かっているのも掴んだって事か??」
架浦が訊ねたのである。
しかし、
「いえ、違います。」
そう否定して、
「あれは、僕の考えによるものです。」
「“H.H.S.O”に潜伏しているであろう敵たちと反社に、なんらかの関係性があるのならば、〝誰かしらが若頭を案じて接触を試みるだろう〟と睨みましてね。」
「朝早くから敷地の近くで見張っていたところ、あなたの車が視界に入ったので、すぐに追い掛けたという次第ですよ。」
穏やかに語る沖奈だった。
これに対し、
「いやいや。」
「あんとき、〝親族の供養だ〟つっただろ。」
「たまたま、偶然にも、オレが訪れたってだけで、“スパイ”と決めつけんのは強引すぎやしねぇか?」
架浦が眉間にシワを寄せる。
「そうですね。」
〝ふむ〟と頷いた沖奈が、
「“慰霊”というのは、ある程度は本当なのでしょう。」
「ただ……。」
「あなたには不審な点があるのですよ。」
「あの施設内に入るとき〝妖魔対策課の許可を得た〟みたいなやり取りをした際に、あなたは釈然としていませんでしたね。」
「何故です??」
そのように問われ、
「そりゃあ…。」
架浦が返答に詰まった。
「僕の憶測にすぎませんが、あの組織にも、あなた達のお仲間が潜んでいるのでしょう?」
「なので、あなたは、〝許可などもらえる筈がない〟と思って、驚いたのです。」
沖奈の分析によって、架浦が窮する。
「まぁ、こちらが潰されかねないので、実際のところは無断でしたけどね。」
いたずらっ子のように微笑む沖奈に、
「なッ?!」
架浦が唖然とした。
これを余所に、
「それと、もう一つ。」
「階段の左横に“デッドスペース”がありましたが……。」
「そこへ足を運ぼうとした僕を、あなたは止めましたよね。」
「あの“正面の壁”は開閉するんじゃないですか??」
「そして、“隠し通路”なりが現れるのでしょう。」
沖奈が推理を続けたら、
「さぁ??」
「オレは、なんにも知らねぇけど?」
少なからず視線を逸らす架浦であった。
「僕は事前に、あそこの設計図を、脳内にインプットしておいたので、間違いありませんよ。」
沖奈が伝えたところ、
「バカな!?」
「そういう類の物は、既に関東司令官が消去して」と喋りかけた架浦が、〝ハッ!〟としたのである。
「尻尾を出しましたね。」
〝ニコッ〟とした沖奈は、
「確かに、図面などは存在していません。」
そのように述べたのだった。
「まんまと騙されちまったぜ。」
「さすがに頭が良いな、隊長は。」
半ば感心する架浦を、
「いや。」
「オメェの知能が低いだけだろ。」
緋島がツッコんだ。
これに、
「うっせぇ!!」
ムキになった架浦である。
とかく。
「さ。」
「架浦さん。」
「刑事さんが二人、外で待っていらっしゃいますので、僕と一緒に降りましょう。」
そう促す沖奈であった―。
沖奈朔任隊長と宮瑚留梨花は休みである。
が。
PM14:00頃に、隊服・マント・帽子といった格好の沖奈が[事務所]に現れた。
ディスク席に座っている緋島早梨衣が気づいて、
「どうしたんすか??」
何気に尋ねる。
これによって、筺健に隈本一帆も顔を上げた。
なお、鐶倖々徠副隊長&意川敏矢はパトロール中である。
「架浦さんは、どちらに?」
沖奈が質問したところ、
「タバコを吸いに行ってるみたいですが…。」
筺が答えた。
そこに、ドアを〝ガチャッ〟と開けた架浦聖徒が、
「ん?? 隊長。」
「……、なんか急用か?」
軽く首を傾げる。
「いえ、まぁ、…、本当は昨日のうちに動くつもりだったのですが、総監と相談した結果、このタイミングになってしまいました。」
こう伝えた沖奈に、
「何がだ??」
架浦が眉をひそめた。
「……。」
「まわりくどいことは無しにして、単刀直入にお伺いします。」
「架浦さん。」
「あなたは、関東司令官によって十三番隊に送り込まれた“スパイ”ですよね?」
そのように沖奈が指摘したら、
「なにッ?!」
筺と、
「マジか!?」
緋島が、ほぼ同時に立ち上がったのである。
一帆は椅子に腰かけたままビックリしている。
「は??!」
「なぁ~に言ってんだよ、隊長。」
「オレには意味が分かんねぇんだけど。」
おどける架浦に、
「惚けても無駄ですよ。」
〝ニッコリ〟した沖奈が、
「これから根拠を述べさせていただきますが、その前に……。」
銃口を向けて、
「能力を扱えないよう、後頭部で手を組んでください。」
「さもなければ、撃ちますよ。」
こう促したのであった。
「…、目が笑ってねぇな。」
「つー事は、本気って訳か。」
〝はぁー〟と溜息を吐いた架浦が、沖奈に従う。
歩いて来た筺/緋島/一帆が、ソファの近くで止まったところで、
「では、説明しましょう。」
沖奈が告げる。
「まず、〝元研究所あたりを漠皁組の若頭がうろついているみたいだ〟といった情報を〝警察が連絡してくれた〟と話しましたが、あれは嘘です。」
「実際は、数日前に、僕が総監に頼んで、東京組第二番隊に所属している“千里眼のスキル持ち”の方に捜索してもらいました。」
「ご自身は通常の職務と並行しながらだったので、いささか時間を要しましたが……、漠皁組の組長や幹部の証言をもとに、その特徴に一致した人物を見つけ出してくださったんですよ。」
そう教えた沖奈に、
「千里眼??」
「そんな能力者が“H.H.S.O”に居るなんて、初耳だが?」
架浦が不思議そうにした。
「まぁ、そうでしょう。」
「公には〝別のスキル〟ということにされていますからね。」
「まだ関東司令官は入隊していなかったみたいなので、架浦さん達も把握できていないのは当然です。」
このように沖奈が返したところ、
「成程、ねぇ。」
「それで…。」
「その千里眼を使って、オレが元研究所に向かっているのも掴んだって事か??」
架浦が訊ねたのである。
しかし、
「いえ、違います。」
そう否定して、
「あれは、僕の考えによるものです。」
「“H.H.S.O”に潜伏しているであろう敵たちと反社に、なんらかの関係性があるのならば、〝誰かしらが若頭を案じて接触を試みるだろう〟と睨みましてね。」
「朝早くから敷地の近くで見張っていたところ、あなたの車が視界に入ったので、すぐに追い掛けたという次第ですよ。」
穏やかに語る沖奈だった。
これに対し、
「いやいや。」
「あんとき、〝親族の供養だ〟つっただろ。」
「たまたま、偶然にも、オレが訪れたってだけで、“スパイ”と決めつけんのは強引すぎやしねぇか?」
架浦が眉間にシワを寄せる。
「そうですね。」
〝ふむ〟と頷いた沖奈が、
「“慰霊”というのは、ある程度は本当なのでしょう。」
「ただ……。」
「あなたには不審な点があるのですよ。」
「あの施設内に入るとき〝妖魔対策課の許可を得た〟みたいなやり取りをした際に、あなたは釈然としていませんでしたね。」
「何故です??」
そのように問われ、
「そりゃあ…。」
架浦が返答に詰まった。
「僕の憶測にすぎませんが、あの組織にも、あなた達のお仲間が潜んでいるのでしょう?」
「なので、あなたは、〝許可などもらえる筈がない〟と思って、驚いたのです。」
沖奈の分析によって、架浦が窮する。
「まぁ、こちらが潰されかねないので、実際のところは無断でしたけどね。」
いたずらっ子のように微笑む沖奈に、
「なッ?!」
架浦が唖然とした。
これを余所に、
「それと、もう一つ。」
「階段の左横に“デッドスペース”がありましたが……。」
「そこへ足を運ぼうとした僕を、あなたは止めましたよね。」
「あの“正面の壁”は開閉するんじゃないですか??」
「そして、“隠し通路”なりが現れるのでしょう。」
沖奈が推理を続けたら、
「さぁ??」
「オレは、なんにも知らねぇけど?」
少なからず視線を逸らす架浦であった。
「僕は事前に、あそこの設計図を、脳内にインプットしておいたので、間違いありませんよ。」
沖奈が伝えたところ、
「バカな!?」
「そういう類の物は、既に関東司令官が消去して」と喋りかけた架浦が、〝ハッ!〟としたのである。
「尻尾を出しましたね。」
〝ニコッ〟とした沖奈は、
「確かに、図面などは存在していません。」
そのように述べたのだった。
「まんまと騙されちまったぜ。」
「さすがに頭が良いな、隊長は。」
半ば感心する架浦を、
「いや。」
「オメェの知能が低いだけだろ。」
緋島がツッコんだ。
これに、
「うっせぇ!!」
ムキになった架浦である。
とかく。
「さ。」
「架浦さん。」
「刑事さんが二人、外で待っていらっしゃいますので、僕と一緒に降りましょう。」
そう促す沖奈であった―。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる