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33.和ぐ

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沖奈朔任おきなさくと隊長が、犯人グループを[鉄檻]にテレポートさせ終えたところで、
「やはり、私の記憶違いではなかったのですね。」
隈本一帆くまもとかずほが呟く。
「ええ。」
軽く頷いた沖奈は、
「諸事情がありまして、僕が〝アクション無しで能力を扱える〟という件は、内緒にしていました。」
「知っているのは、総監を始めとしたごく一部の人達だけです。」
「隈本さんを騙すみたいになってしまい、すみません。」
一帆に教える流れで謝った。
「いえ、全然、気になさらないでください。」
こう返した一帆に、
「十三番隊の皆さんなどには、このことを黙っていてほしいのですが…、お願いできますでしょうか??」
沖奈が伺う。
恋心を抱いている男性と秘密を共有する事に喜びを感じ、
「はい!」
「勿論です!!」
即答する一帆であった。
「ありがとうございます。」
ニコッとした沖奈ではあったが、その顔は全体的に痛々しい。
一帆が胸を詰まらせつつ「病院に」と言いかけたタイミングで、外から〝バンッ! バン!!〟といった車のドアを閉める音が聞こえてきたのである。
(敵の新手!?)
一帆が警戒を強めるなか、建物内へと走ってきたのは、鐶倖々徠かなわささら副隊長&緋島早梨衣ひしまさりいだった。
二人は、一旦、足を止める。
だが、沖奈がボコボコにされたことを察して、
「隊長!」
鐶と、
「大丈夫っすか?!」
緋島は、改めて駆け寄ったのであった。
 
沖奈の右隣に二人が正座する。
「道が少なからず渋滞していたので、到着が遅れてしまいました。」
「申し訳ありません!」
鐶に続いて、
「さーせんしたッ!!」
「かくなるうえは、腹ぁ切って、お詫びするっス!」
緋島も、頭を下げた。
「いえいえ、さすがに物騒なので、それ・・はやめてください。」
苦笑いした沖奈が、
「そんな事よりも……、どなたか警察に連絡していただけませんか?」
優しく述べる。
「では、“副隊長”として、私が。」
そのように告げて、隊服のポケットからスマホを取り出す鐶だった…。
 
 

廃工場の敷地には、何台ものパトカーと救急車が停まっている。
檻の側で、一帆に聴取しているは“森川もりかわ刑事”だ。
鉄扉てっぴあたりでは、鐶と緋島が、別の警察たちと会話していた。
鐶副隊長が運転してきたらしい自動車の、左後部座席に、沖奈が腰掛けている。
ドアを全開にした状態で、宇山うやま稲村いなむらコンビに経緯を説明しているみたいだ。
なお、テレポーテーションに関しては、〝かろうじて指が動いた〟ということにしたらしい。
一帆もまた、同じような内容を伝えていた……。
 
PM18:00を過ぎて、日が沈み、割と暗くなっているなか、ある場所へと車が進んでゆく。
運転しているのは鐶だ。
助手席に緋島が、後部座席の右側には一帆が、見受けられた。
「他の方々は、どうしていらっしゃいます??」
沖奈の質問に、
「隊長から電話があったとき、架浦みつうら意川いかわは既にパトロールに出てたっす。」
「事務所は、宮瑚みやこが留守番してくれてるっス。」
緋島が答える。
「そうですか。」
〝ふぅ―〟と息を吐いた沖奈が、
「……、すみませんね。」
「ご迷惑おかけして。」
こう述べたところ、
「そんなことないっすよ!」
「悪いのは“俟團組きせんぐみ”の連中であって、隊長やカズホじゃないんスから!!」
緋島が興奮した。
更には、
「副隊長。」
「やっぱ、アイツら一発ずつ殴っておきたいんで、現場に戻ってくんねぇすか?」
緋島が、左のてのひらに、右の拳を、〝パチン!〟と当てたのである。
そんな彼女に、
「いや、もう警察署に連行されているでしょうから、無理よ。」
半ば呆れつつ、
「今回は諦めなさい。」
言い諭す鐶であった。
 
 

コンクリート造りで二階建ての[個人病院]に、一同は到着したようだ。
全体的な雰囲気からして年代物・・・である。
四人が診察室に入るなり、
「また派手に腫れあがってるわねぇ。」
60代半ばとおぼしき“女医”が、いささか驚いた。
身長は165cmあたりだろう。
白い髪の毛を“お団子”にしている。
キレカワ系である本人は、若い頃きっとモテたに違いない。
「とりあえず、そっちのベッドで、上着を脱いで、横になりな。」
「お嬢ちゃん達は、廊下で待ってなさい。」
こう指示した女性に、誰もが従った…。
 
扉の前で、一帆が不安そうに佇んでいる。
彼女の背後から、
「そんな心配しなくても大丈夫だぜ、カズホ。」
「なんつったって、あの医者は“スキル持ち”だかんな。」
緋島が声をかけた。
「そうなんですか??」
振り向いた一帆に、
「ええ。」
「すぐに回復させてくれますよ。」
鐶が穏やかに返したのである。
 
上半身のみ裸になった沖奈は、ぬのカバーが掛けられている“診察台”で、仰向けになっていた。
左隣で目視した女医が、
「体もあざだらけだね。」
「……、こっちを先に手当てしよう。」
「内臓が損傷していたら大変だからねぇ。」
そのように判断し、沖奈の腹部あたりに、両手をかざす。
「発動。」
彼女が唱えるなり、左右の掌から【ホワイトグリーン色の温かな光り】が放たれたのだ。
これ・・によって、沖奈のアザが徐々に消えていく。
この医師の“能力”は、【治癒ヒール】だった。
「お次は、手首にしよう。」
そう決めた女医が、沖奈隊長の骨折している箇所を治していく。
最後に、顔も癒してあげる医者であった―。
 
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