竜公子の花嫁

arisawa

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第一章

3.双竜に会いに行こう

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 辺境の地にあるルーベンス公国は、三方の小国を吸収し、国土を広げただけで、いまだ、各地に住む領民達すべてが安定した生活をおくっているとは言い難い。
 良識ある領主たちを各地へ配し、人流、物流を活発にするため、まずは街道を整備し、領地開拓を急がせた。
 貴族たちは、大なり小なり、魔法力を有していたお陰で、予定していたよりも数年遅れはしたけれど、それぞれの領民が飢えることだけはなくなってきていた。

 双竜の加護もあり、大規模災害はなかったけれど、念の為、河川敷を整備し、水害対策も実施した。
 あとは、双竜が棲む洞窟へと伸びる道を閉ざすかのように、鬱蒼とした木々が生い茂る森を残すのみ――と、なっていたけれど、太古から続くこの森は、王の血脈以外の侵入を拒むかのように地形は複雑で、他では見ないような生物が棲んでおり、いまだ、人の手が入ることを拒んでいた。
 因みに、大公の血脈を持つものは加護により、双竜の棲む洞窟まで難なく辿りつけるのだと、父が教えてくれた。

 今、レイモンドはその森の入口へと、従者一名と護衛騎士二名と共にやってきていた。
 普通なら、一国の跡取り息子を少人数で行動させるなんて有り得ないと思うのだが、双竜の加護を持つ竜公子――なだけに、割と自由行動をさせてもらっている。

 鬱蒼と高木や低木が密集し、蔓草や茨の木々が行手を阻んでいたけれど、レイモンドがひたすら奥へと進み続けていくのは、双竜に会いたかったからだ。

 何故、花嫁の選定を双竜が担っているのか?
 レイモンドは、座して花嫁選びの結果を待つつもりはなかった。
 双竜が何を基準に花嫁を選ぶのか?
 母と祖母に花嫁選びの時の状況を聞いてみたけれど、二人は双竜と会った記憶はあるものの、花嫁選びの時の出来事は覚えていなかった……
 もしかしたら、記憶を操作されているのか?
 レイモンド自身は、双竜に会ったことはない筈なのに、双竜が棲む洞窟までの道を迷うことなく進んでいた。
 双竜が血の誓約に縛られているように、レイモンド達は、双竜たちの理の中で生かされているのかもしれない――だからこその花嫁選びなのか?
 
 気づけば、レイモンドは双竜が棲む洞窟の入口へと辿り着いていた。

 
 
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