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第一章
1.竜公子のとまどい
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彼は非常に困っていた――
父である大公と宰相の話を全く聞いていなかったわけではなかったけれど、そんなことよりも、突然もたらされた、自分の花嫁選びの話に、内心パニックになっていたからだ。
その話は幼い頃から、散々聞かされていた筈だったというのに、何故か他人事に考えていた。
現大公も先代大公の時も、同じように選ばれてきたと聞いていたのに……双竜により選ばれるものなのだ――と。
国としての成り立ちは、三代前からということもあり、現王の治世になってようやく国家として安定してきていたが、ルーベンス家自体の歴史はそれよりも数十代前まで遡り、花嫁選びはその頃からのしきたりであり、途切れることなく続いているのは、双竜の選択に今まで間違いがなかった証――
父母からも、祖母たちからも、自分たちの時の事について詳細を語られたことはなかったけれど、双竜によって選ばれたとは思えない程にとても仲睦まじい様子だった。
祖父も、父も一度も側室を持つこともなく、互いに伴侶となった妻一人を大切に遇していたために、自分は恋愛結婚で結ばれたと錯覚していたのかもしれない――だから、もうすぐ十八歳になる自分に、いまだに婚約者がいないことにも不思議さを感じていなかった。
まさに、十八歳になると同時に花嫁選びが始まるのだと、先程、父と宰相から聞かされるまでは……
父である大公と宰相の話を全く聞いていなかったわけではなかったけれど、そんなことよりも、突然もたらされた、自分の花嫁選びの話に、内心パニックになっていたからだ。
その話は幼い頃から、散々聞かされていた筈だったというのに、何故か他人事に考えていた。
現大公も先代大公の時も、同じように選ばれてきたと聞いていたのに……双竜により選ばれるものなのだ――と。
国としての成り立ちは、三代前からということもあり、現王の治世になってようやく国家として安定してきていたが、ルーベンス家自体の歴史はそれよりも数十代前まで遡り、花嫁選びはその頃からのしきたりであり、途切れることなく続いているのは、双竜の選択に今まで間違いがなかった証――
父母からも、祖母たちからも、自分たちの時の事について詳細を語られたことはなかったけれど、双竜によって選ばれたとは思えない程にとても仲睦まじい様子だった。
祖父も、父も一度も側室を持つこともなく、互いに伴侶となった妻一人を大切に遇していたために、自分は恋愛結婚で結ばれたと錯覚していたのかもしれない――だから、もうすぐ十八歳になる自分に、いまだに婚約者がいないことにも不思議さを感じていなかった。
まさに、十八歳になると同時に花嫁選びが始まるのだと、先程、父と宰相から聞かされるまでは……
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