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第5章 甲子園へ
閑話 追っかけ
しおりを挟むこれは神宮大会が始まる直前のお話。
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「はい、爆死。くたばれガチャめ。このガチャシステム考えた奴はなんて業が深いんだ。沼にハマるに決まってるじゃん」
練習から帰って来て、店舗のお風呂に入る前にお腹が空いたからとお食事処で先にご飯を食べながらソシャゲのガチャをしていた。
この期間限定のアニメキャラ欲しかったのにな。
また爆死ですわ。
「課金してぇ。早くプロになって金稼ぎてぇ。ガチャの為に投げる選手になりそうだな俺は。…ん?」
某プロ○ピ大好き選手みたいな事を考えながら、ガチャしたい欲求を抑えていたら、父さんともう一人どえらいイケメンがお風呂から出て来た。
俺が今まで一番イケメンだなって思ったのは、タイガなんだけど、それに匹敵するやもしれん。
「あの人どっかで見たな。どこだっけ? 俺が知ってるって事はプロの人か?」
結構仲良さそうだし。
オフシーズンに入ったから、現役の選手も遊びに来たりするんだよね。
父さんの後輩とか。家の練習場で父さんに指導してもらってる時もあるし。
でも、俺よりイケメンの人はやめてほしいね。
器が小さいから最初から敵判定しちゃうよ?
ごめんね? タイガとか、初めてあった時は敵判定してたからね? 小学4年生の頃の話だけど。
「あ、豹馬!」
心の中で密かに敵判定しつつ、誰だっけと記憶を探ってると、父さんが俺を見つけたらしくこっちにやってきた。
周りにお客さんも結構居るけど、常連さんばっかりで慣れたもんだ。
秋季大会を勝ち抜いた時は、みんなお祝いの言葉を言ってくれたりとかなり仲良くやらせてもらってる。
「豹馬は会うの初めてだったよな? この人、お前のファンらしくて、練習試合や公式戦も全部観に来てくれてる京極太晴君。練習試合のスタンドで知り合って、そこから仲良くなったんだ」
「きょ、京極太晴です!! 中学生の頃から豹馬君のファンで追いかけてました!」
「えっ、あーえーっと、三波豹馬です。いつも応援ありがとうございます」
ファンとな? そういう事なら話は変わる。
掌をしっかり返して、仲良くさせてもらおう。
こんなイケメンのファンが居るとは。
俺も中々やるじゃないか。
とりあえずどうぞと、目の前の空いてる席に座ってもらって話を聞く。
滅茶苦茶目がキラキラしてんだよなー。
イケメン力高すぎる。
白馬君といい、この人といい、イケメンなのに性格が良さそうってもう罪だよね。
白馬君の遅れてきた厨二病みたいに、何か欠点がないと釣り合いが取れないよ。
「ほえー。そんなに前から。ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです」
「俺は国無舘との練習試合の時に知り合ってね。そこからご飯行ったりしてたんだ」
「勝弥さんにはとても良くして頂いてます」
あー、この人あれだ。決勝で父さんが泣いてた時に母さんの反対側の隣にいた人だ。
後でテレビ放送を見返した時に映ってた。
なるほど。イケメンだから覚えてたのかな。
そんで、あれだろ? 掲示板の追っかけって名前の人だろ?
偶に覗いてるんで知っております。
それは恥ずかしいから言わないが。
「俺のファン一号ですね。ここまで面と向かって言われたのは初めてですし」
「そ、そんな! 恐縮です!」
中学の頃から俺はそれなりに有名だったけど、所詮シニアだしなぁ。
相当好きじゃないと俺の試合なんて追いかけてくれたりしないだろ。
ここまで熱烈な人は居なかったし、俺が正確に認知したファン一号って事で。
「えっと、何か俺に出来る事ありますか? 無茶な事じゃなければ、大体大丈夫ですよ」
ガチャでこのキャラを出してくれとかじゃなければなぁ!!
そういう話はタイガに持って行ってくれたまえ!
「ほ、本当ですか!? それじゃあ--」
この人俺より歳上だろうに、腰低いなぁ。
なんかむず痒いから辞めてほしいんだけど、なんか難しそう。
それから俺は太晴さんに、名前付きのサインを書いたり、一緒に写真撮ったりとそこそこ仲良くなったと思う。連絡先も交換したし。
ファン一号サインなんて、俺が将来大物になったらプレミアものなんじゃないだろうか。
プレミア価値をつけるためにも、絶対プロに行って活躍せねば。
すっかり仲良くなった俺達を父さんは暖かい目で見守っていた。
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