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第六章 ゆるり旅

第167話 パンプキンヘッド・ヴェガ

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 「…………!!」

 「あの喜びようは凄いな」

 余程かぼちゃになりたかったのか、ウェインが即席で作ったかぼちゃ頭の被り物のプレゼントに発狂している。
 今も被りながら、影の中を走り回ってる。

 「ムッ? ジャックノ 真似カ?」

 「………(コソコソ)」

 「ホウ。ソレハソレハ」

 「面白い顔してるの」

 そして話していたアギャインとテレサに自慢しに行っている。
 二人は驚いてたけど順応が早い。

 「ヴェガはいつになったら俺と喋ってくれるんだろうか。とりあえずどんな声をしてるかが気になるんだけど」

 「レト様には頑なに話してくれませんよね」

 なんでなんだろうね。恥ずかしいみたいなんだけど。他は良くて俺がダメな意味が分からない。

 「むぅ。このかぼちゃ頭の使い道はあんまりなさそうなんだぞ」

 ヴェガにプレゼントと交換でかぼちゃ頭を譲ってもらったらしく、早速実験として色々してたみたいだけど、使い道がないらしい。

 「幻術系が得意って聞いてたから妲己の魔道具を作れると思ってたんだぞ。でも頭にはまともな触媒になりそうなものがないんだぞ」

 ふむ? 脳みそとかないわけ?
 アンデッド扱いだし期待は薄いか。

 「仕方ないだろ。影の中でオブジェとして活躍してもらえ」

 「実験室に飾っておくんだぞ」





 「次はどの国に行こうかなぁ」

 「この辺の国は回り尽くしましたよね」

 王都巡りも飽きてくるんだよな。
 その国特有の何かがあれば、観光とかで楽しめるんだけど。
 それに街中に眷属を出せないのも辛い。
 一人でぶらぶらしても楽しくないんだよね。

 「ウェイン。認識阻害の仮面はまだ出来ないの?」

 「あ、忘れてたんだぞ」

 俺は教会に顔が割れてそうって事で最近は仮面をして出歩いている。
 別にバレても殺すから良いんだけど、殺しすぎると竜王に怒られるから。
 節度を持った殺しをしないとね。俺も大人になったもんです。……決して竜王にビビってる訳ではないので悪しからず。

 「一応グレースお姉ちゃんの分は出来てるんだぞ」

 「え、なにそれカッコいい」

 ウェインが魔法鞄から取り出したのは、新しく作った認識阻害の仮面。
 宝探しでテレサが見つけてくれた仮面より遥かに性能が良さそうだ。
 そして、何より見た目がカッコいい。

 俺のは無地で真っ白な柄も何もない仮面なんだ。
 穴とかも空いてないのに、何故か普通に視界が確保されてるっていう不思議仕様。

 でも、今回ウェインが作ったのは、そんな不思議仕様に加えて、仮面に模様が入っている。
 所謂狐マスクというやつでは? モデルが妲己になってるね。

 「キュン!」

 「これは…」

 「レト様にこういう仮面があるって前に聞いたから妲己をモデルにして作ってみたんだぞ!」

 「かっこいいな。羨ましい」

 モデルにされた妲己は滅茶苦茶嬉しそうに尻尾を振っている。
 グレースは装着して見せてあげて、使用感の確認をしてるな。

 「もう少し時間をくれたらレト様の分も作るんだぞ!」

 「是非お願い致します」

 俺は深々と頭を下げてウェインにお願いする。
 俺もあんな無地な感じじゃなくて、カッコいい仮面が良い。
 街を歩いてると、不審に思われるんだよ。
 認識阻害ってのは、俺って分からないようにするのであって、無視してくれる訳じゃないからね。

 「じゃあ次の国の王都に向かいまーす。ウェインはその間に作っておいてくれーい」

 「分かったんだぞ」

 次の国は結構大きめの所に行こう。
 ダンジョンもあれば尚良し。
 暇潰しがしたい気分です。
 俺はそんな事を考えながら、影から飛び出して次の国に向かうために羽ばたいた。





 「とうちゃーく!」

 パタパタと上空を羽ばたく事一週間。
 特にイベントがある訳でも無かったので、猛スピードで進んだ結果、かなり早く到着してしまった。

 いつもの様に門は通らずに空から侵入。
 朝方の人目がない場所に着地してすぐさま影に飛び込む。

 「おーい。着いたぞー」

 朝という事で寝てる奴らばっかりだったけど、起きていたテレサに話しかける。

 「テレサさん、最近寝てます?」

 「レポートを書く手が止まらないの」

 アギャインが眷属になってからテレサは新しい知見を得たとばかりに、研究に励んでいる。
 途中、毎日の日課の模擬戦も勝利より魔法効果の実験に重きを置いてるみたいなんだよね。

 「ちゃんと寝ないとダメよ?」

 「キリが良くなったら寝るの」

 それ、毎日聞いてるんだよなぁ。
 俺の眷属になってから、寝る必要が無くなったとはいえ、寝たら疲れは取れるんだ。
 気持ちいいし。俺も最近は毎日寝るようにしてるんだよ。

 「ほどほどになー」

 どうせ言っても聞かないので、注意だけを促して馬車ホテルに向かう。
 まだみんな活動してる時間帯でもないので、おれも軽く仮眠してから街の探索に行こうと思います。
 アギャインとかは起きてるけど、本を読んで動く気ゼロだからね。

 「ふぁあ。ねむっ」

 早起きして飛んでたから、微妙に眠気が。
 無視できるけど、どうせやる事もないしおやすみなさいします。

 「レト様」

 「えーっと? 俺、寝ようと思ってるんだけど?」

 「全て私にお任せ下さい」

 「何が?」

 みんなが活動する時間になるまで寝られなかったのは言うまでもない。
 発情したグレースほど押しが強いもんはないね。
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