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第六章 ゆるり旅

第163話 どうしようか

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 「はいはーい。そろそろ注目ー」

 パンパンと手を叩き、無理矢理こちらに注意を向けさせる。
 アギャインが眷属になってから既に一週間。
 ウェイン達の話が途切れる事なく、ひたすら何かを話し合っていた。
 初めは楽しそうにしてたし、邪魔しちゃ悪いなって思ってたけど、全然話が終わる気配が見えない。

 俺達は麻雀やらで時間を潰してたけど、ひたすら負け続ける妲己ちゃんがもう灰になってしまって再起不能だ。
 今はグレースがブラッシングし続けて、テンションの回復を図ってる真っ最中。
 良い加減次の行動を起こしたいと思って、無理矢理話を中断させてもらった。

 「良イ所 ダッタンジャガノ」

 「もう一週間経ってんだよ。そろそろ動きたい訳」

 「一週間? そういえばお腹が空いたんだぞ?」

 「テレサもなの」

 「……」

 「ゴギャギャ」

 そう言ってお腹を抑えて俺をチラッと見る眷属一行。いや、アギャインは食べないらしいが。
 あざとく上目遣いなんてしちゃって。そうお願いすれば俺が簡単に了承すると知ってやがるな?
 誰に教わったんだ。妲己か? あいつは上目遣いの天才だからな。いらん事を教えおって。復活したらもう一回叩き潰してやろう。

 「分かった分かった。とりあえず簡単な物を作るから」

 俺の料理は何故か人気なんだ。
 前世のうろ覚え知識で適当に作ってるだけなんだが。俺よりスキルを覚えてるウェインのほうがよっぽど美味しそうに作ってくれると思うんだけどな。

 「ん? いや、アシュラは毎日食べてたじゃん」

 当たり前の様に混ざってたアシュラをスルーしそうになった。
 みんなと同じくお腹が空いてて当然みたいな顔で料理を待っている。

 「まっ、いっか。一人増えようが大して手間は変わらん」

 こいつらは食う量が半端ないので、かなりの作業にはなるんだけど。
 良いように使われた気もするけど、これも行動指針を決めるため。
 俺は慣れた手付きで食材を捌いていった。




 「よし。じゃあ改めて。これからの事について決めるぞ」

 ハンバーガーを大量生産して大量消費。
 お食事の時間が終わって一息つけたので、ようやく眷族会議が開催される。
 因みに、妲己は未だに意気消沈中。
 グレースに抱き抱えられながらの参加だ。

 「まず、定住出来る場所を探したい」

 「ココデ 良インジャ ナイノカ?」

 「海が無ぇ」

 国を作るかどうかはまだ迷ってるけど、どっちにしてもとりあえず海は欲しい。
 国を作ると、海の有る無しでだいぶ戦略は変わってくるし、作らなくても海の魔物の血は美味しいんだ。雑魚魔物ですら美味しいんだから、出来れば近くに欲しいところ。

 「で、定住出来る場所を見つけたら、ウェインにはこれでもかってぐらい立派なお城を作ってもらいたい」

 THE・魔王城ってのを作りたい。
 これも国を作る作らない関係なく欲しい。
 魔王が住んでるんだぞってのを分からせたい。
 そして恐れられたい。いつかアギャインを超える魔王っぷりを身に付けたい。

 「一人でやるならかなり時間がかかるんだぞ」

 「いや、そこは俺達も手伝うし。それに人手のアテはあるだろ?」

 俺はチラッとアギャインを見る。
 そのアギャインは妲己のサイズ変更の足環に興味津々そうだった。

 「ムッ? 成程。我ノ アンデッドカ」

 「いぐざくとりー」

 アギャインの【最上位アンデッド生成】。
 これ、俺の【眷属化】なんかより、よっぽど優れた能力なんだよね。
 何も無い所から魔力のみでアンデッドを作ることが出来る。素体さえあればノーコストで異能の【死霊術】でも手駒を作れる。
 しかも、絶対命令権付きで。
 さすが『群』の魔王って感じ。

 でも【最上位アンデッド生成】には難点もあって、この能力で作ったアンデッドは進化しない。
 【死霊術】で作ったアンデッドならするらしいけど。

 「フム。下級ノ 雑用ニ使ウ 程度ノ アンデッドナラ ホボ無限ニ 生ミ出セルゾ。使イ終ワッタ後ノ 処理ハ 面倒ダガ 殺シテシマエバ 多少ノ 経験値ニモ ナルダロウ」

 「おお。アギャインで永久機関出来るじゃん」

 アギャインが使ってた裏技的なのがあって、【最上位アンデッド生成】でアンデッドを作る。殺す。【死霊術】で復活させる。殺す。ってのを繰り返して、一時は経験値を稼いでたらしい。
 流石魔王。惚れ惚れする鬼畜っぷり。
 俺は自分の眷属を殺すような事はしないけど。

 「シカシ 繰リ返シヤルト 段々 得ラレル 経験値ガ   少ナク ナッテイクノジャ」

 まぁ、それでも破格な能力だよね。
 時間が出来たら是非眷属一同でやらせてもらおう。

 「って事で、人手に関してはアギャインに一任する。ウェインと相談して都合の良さそうなアンデッドを生み出してくれ」

 「ウム」

 「分かったんだぞ!」

 後はどこに住むかだな。こればっかりは地図がないとなぁ。

 「とりあえず適当に飛んであらゆる国の王都を見学しようか。どこの国よりも立派なお城を作ってもらう為には、ちゃんとお城を見ないといけないしな」

 異世界ぶらり旅といきますか。
 道中での休憩中に、紙に前世のお城の絵も描いておこう。
 図書館で世界のお城みたいな図鑑を読んでたからな。結構ハマった記憶がある。
 なんか見てて面白かったんだよね。
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