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第五章 魔王討伐

第158話 うぇーい

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 竜王が未だにダンマリなので、その後もアギャインとお話を続けていた。
 一応攻撃してきた時の為に、初撃は躱せるように警戒はしている。本当に躱せるかは謎だけど。
 眷属達も影の中に放り込んでいる。とてもじゃないけど対抗出来るとは思わないしね。

 「ねぇ。なんであれは黙ってるの?」

 「知ラヌ。マァ 大方ノ 予想ハ ツクガ」

 アギャインは全然警戒してないっぽいんだよね。
 嫌いなのは相変わらずなようで、かなり睨んでいるけど。これは竜王の性格とかを知ってるが故にかな?

 「なに? これ、俺もう帰っていいかな? なんか魔王討伐の気も削がれちゃったし」

 「ナンジャ。 我ニ 勝ッタノニ 殺サヌノカ。オ主ガ 言ウ 経験値トヤラハ ガッポリ ジャゾ?」

 骨を震わせて楽しそうに笑ってるけど。なんかそんな気分じゃなくなっちゃったもんで。
 なんなら眷属にしたいぐらいだ。喋ったら面白いお爺ちゃんって感じだし。
 骨にどうやって血を飲ませるのか分からないけど。

 「結局少年○ャンプみたいな事になってるな。かつての敵が味方へ。王道的展開だぜ」

 でも、それは明日にしたい。
 今日はとりあえず疲れたんだよね。魔物になってから寝なくても大丈夫になったけど、今日は流石に寝たい。

 「とりあえず今日は休もうかな。明日またお話しようよ」

 「クカカカカ!」

 え? 今の言葉にどこか面白い事ありました?
 なんか腹抱えて笑ってるんだけど。

 「クカカカカ! オイ。良イ加減ニ セヌカ。此奴 本当ニ 帰リヨルゾ」

 アギャインが笑いながら竜王に話しかける。
 えーっと? ちょっとレト君良く分からないんだが? 帰ったらダメだったの?

 『うぇいうぇいうぇーい! わざわざ俺ちゃんがカッコ良く登場したってのに無視はないでしょーよ! アギャちゃんが、いつ俺ちゃんの事を紹介してくれるのかワクワクしてたのに、なんのアクションも無く無視って! 竜王ぞ? 我、竜王ぞ? もっと興味を持つべきでしょーが!』

 うるさっ! なに? なんか頭の中に直接言葉を叩き込まれた。念話的な?
 アギャインも顔を顰めてるし、そっちにも言葉が届いてるっぽい。ほえー。これが念話か。

 「相変ワラズ 五月蝿イ 奴ダ。忌々シイ。何故 我ハ コンナ奴ニ 負ケタノダ」

 『俺ちゃんが強いからでしょーが! ほら! 早く紹介して! わざわざ縄張りから出て来たんだから!』

 「出テ来イ等 頼ンデ オラヌ。ムシロ 邪魔ダ。今スグ 帰レ」

 『出て来ないとやばかったんだつーの! 全く! 人間の領域を滅茶苦茶にしてくれちゃって! そういうのは控えてねってお願いしたでしょ? お爺ちゃん、耄碌しちゃったのかな?』

 「オ主ガ 来タノハ 戦イガ 終ワッテ カラジャ。今更 来タ所デ ドウニモ ナランジャロウガ。ソレニ 人間ノ 領域ニハ 手ヲ 出シテオラヌ。被害ハ 我ノ 縄張リダケ ジャロウ。最後ニ。我ヨリ オ主ノ 方ガ 歳ヲ 食ッテル ジャロウ。オ主ヨリ 遥カニ 若イワ」

 「え? もう終わったの? アギャちゃん負けちゃった感じ? ぷふー! アギャちゃんまた負けちゃったんだー! 残念だったねー!」

 「オ主ガ! 動クナト 言ッタ カラジャ!! 我ガ モット 早イ 段階デ 動ケテイタラ 此奴ガ 成長スル 前ニ 叩ケテ オッタノジャ!」

 「えぇー? 負け惜しみー? アギャちゃん見苦しいよー? 長年魔王に君臨する者として恥ずかしくないのかなー? ぷふー!」


 レト君置いてけぼりなんだけど。
 分かったのは竜王がうざいキャラだって事だよね。とてつもなく。俺は関わりたくないなぁ。
 いつか見てみたいとは思ってたけど、もう満足です。向こう1000年くらいは会わなくても大丈夫かな。どうせ当分勝てそうにないし。

 はぁ。竜王ってもっと威厳がある感じだと思ってたんだけどなぁ。なんか期待を裏切られた気分。
 チャラい煽りキャラって、物語序盤のやられキャラだと思うんだけど。
 なんでこんな奴が世界最強やってんですかねぇ。
 アギャインの方が、よっぽど威厳があるよ。
 言い合いしてる今はそうと思えないけど。

 「可哀想なアギャイン。君の犠牲は忘れないよ」

 俺は未だに子供の様にギャーギャーも言い合いをしている二人の魔王を横目に、ひっそりと影の中へ帰還した。
 当分終わりそうにないし。なんか人間の領域への被害もアギャインが勝手に罪を被ってるし。
 あれはテレサが適当に魔法を飛ばしたせいなんだけど。まぁ、バレなきゃいいよね。

 「お帰りなさいませ」

 グレースを筆頭に眷属一同がお出迎えしてくれた。竜王が出て来た瞬間に影の中に放り込んだからね。心配しててくれたんだろう。

 「うん。避難してきました」

 「? 何かあったのですか? 【シックスセンス】でも特に反応は無かったので、安心していたんですが」

 竜王の念話的なサムシングは眷属達には聞こえてなかったらしい。あ、後ユニークスキルでも竜王はあてにならないかもしれないぞ。俺の【魔眼】も弾かれたし。
 って事で軽く説明。

 「竜王とはそういう方なんですね。なんだか、拍子抜けです」

 「それな。戦ったら負けは間違いないけど」

 「あの圧力は凄まじかったですからね。見ただけで膝をつきたくなりました」

 いつか俺もあんな感じになれるんだろうか。吸血鬼の王ぐらいにならないと無理か?
 まだ侯爵だもんなぁ。

 そんな事を思いながら就寝。今日はみんな疲れてたのでお遊びもおせっせも無しだ。
 近くに竜王やアギャインが居るのに寝るのは中々無防備だが、あいつらは手を出して来ないだろう。
 多分。そんな気がするってだけなんだけど。



 『うぇーい! レトくーん! 俺ちゃん達を無視するとは良い度胸じゃーん!』

 翌朝。影の中で寝ていると竜王に起こされた。
 なんで俺の名前知ってんだよ。異能か?

 なんか天井から頭をニュっと出してこっちをガン見している。
 影の中ってのは、入る時は影の中に潜る感じで、出る時は意思を持って軽くジャンプしたら出られるんだけど。

 竜王は無理矢理こじ開けて顔を覗かせてる感じ。
 初めて影に干渉されたな。どうやってんだろ。
 とりあえずなんか怒ってるみたいだし、影から出るかな。疲れも取れたし。
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