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第五章 魔王討伐

第152話 魔王発見

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 「いけっ! 妲己! 10万ボルト!」

 「キュンキューン!」

 深層も結構探索し尽くした感が出てきた今日この頃。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 私は現在、妲己VSボーン・ドラゴンのタイマンを眺めているところです。
 ノリノリで指示を出したんだけど、使ったのは【火炎魔法】。反抗期かな?

 「異世界って不思議。骨のドラゴンが浮いてるんだもんな」

 「今更でしょう」

 いや、まぁそうなんだけど。スケルトンとかほんとファンタジーだもんね。
 初めてドラゴンを間近で見てるけど、カッコ良さが伝わってこない。
 俺からしたら化石の恐竜が動いてる感じ。

 「ドラゴンゾンビもチラッと見えた事もあったけど、あれは汚そうなんだよなぁ」

 「ゾンビですからね」

 竜王とかどんなんなんだろう。今の所戦いたいとは思わないけど、見てみたいよね。



 「キュンキューン!」

 「あ、終わった。麻雀で負けた鬱憤を晴らすかのような戦いだったな」

 「ここ最近ずっと負けてますからね」

 なんかドツボにハマって迷走してるんだよな。
 純粋な妲己ちゃんだぜ。

 「素材! 素材が欲しいんだぞ!」

 「好きに持ってけ」

 戦いが終わると影からウェインが飛び出してきた。ヴェガに抱き抱えられて、大喜びで死んだボーン・ドラゴンに駆け寄っていく。
 ずっと欲しい欲しい言ってたからな。早速研究するんだろう。

 「さてと。マジでそろそろアンデッドがいなくなるぞ。魔王はどこにいるんだ」

 「とりあえず方向は分かりますね」

 「えげつない魔力を放ってるからなぁ」

 なんか魔力視を使わなくても可視化して見えそうなぐらい毒々しい魔力がある方向から垂れ流されてるんだよね。
 魔力制御とかしないのかな。してて、これだけ垂れ流してるならやばいけど。

 「まっ、いいや。とりあえずその方向に進んで行くのみ。どれだけ強いのやら」

 頼むから勝てなくても逃げれるレベルぐらいではあって欲しいと思いますね、はい。



 「いた」

 歩いて奥に進む事数日。
 とうとう遠見で魔王の姿を確認した。

 『エンペラー・リッチ
  名前  アギャイン・トラセルフ
  【異能】
  死霊術
  【魔物能力】
  暗黒支配
  火炎魔法
  氷雪魔法
  星力魔法
  風塵魔法
  最上位アンデッド生成
  死王纏鎧
  暗黒神技
  軍団統率              』


 「すげぇ。王冠被ってるよ」

 初めて魔王見た感想である。俺も何か魔王っぽい装飾品を用意しておいた方がいいのかね。

 「っていうか、多分目が合ってるんだよね。眼球がないから多分だけど。めちゃくちゃこっち見てる」

 【魔眼】を察知されたかね。遠見で見てるからかなりの距離はあるんだけど。

 「魔王だけですか?」

 「いや、側に何体か魔物もいるな。ドラゴンゾンビやらかぼちゃ頭の奴とか。今までの名持ちとは比べ物にならないぐらい強い」

 眷属と良い勝負か、少し負けてるぐらいには強い。妲己とアシュラならなんとかなるかね。

 「魔王は強いのかな? いや、強いんだろうけど。テレサの上位互換みたいな感じ? 魔法使いなのは予想通りか」

 見た目はもうね。THE・魔王。物語とかで出てくる骨だらけの魔王を想像してほしい。
 覇気的なのが半端ない。俺もそんな強者みたいなオーラを出せるようになりたい。
 なんか骨で出来た玉座に座っちゃってさ。しっかり魔王しちゃってる。

 「目が合ってるだろうに動く気配は無し。舐められてるのかね」

 ちょっと踏ん張ってオーラみたいなの出ないかなと頑張ってみたけど出ませんでした。
 格が違うんだろうか。侯爵程度ではダメですか。

 「なんかムカつくな。こっから魔法をぶっ放してやろうか」

 「魔法対決なら向こうに分が有りそうですが」

 晦冥球とかテレサにぶっ込んでもらいたいんだけど。あれはその後が面倒なんだよね。
 そのまま戦闘に移行すると、環境ダメージ的なのが。

 「ん? あぁ?」

 なんか魔王を見ながら歩いてたら、手招きされた。これは舐められてるってことでよろしいな?
 温厚で慈悲深いと来世では評判のレト君でもこれには怒っちゃうよ?

 「ぶっころ」

 俺はウェイン以外の眷属を影から出して、引き連れるようにして魔王の元へ向かった。


 ☆★☆★☆★

 「生意気ナ。我ヲ 覗キ見 スルトハノ」

 『腐死の森』を荒らされ回って随分経つ。
 侵入してきた異物はどんどんと被害を拡大し、とうとう玉座の間近までやってきた。

 本当ならもっと早くに相見える筈だった。
 ここまで荒らされるまで放置したくなかった。
 しかし。

 「忌々シイ」

 動きたくても動けなかった。
 エンペラー・リッチに古い記憶が思い起こされる。それは魔王に成り立てと成る前の古い古い記憶。

 「マァ 良イ。アノ 異物ヲ 配下ニ 加エレバ 今回ノ 損害モ 許容 デキヨウ」

 思い出したくもない記憶を振り払うように、未だにこちらを見ている異物を確認する。
 警戒してるようで、その歩みが遅かったので手招きして挑発する。
 

 「我ノ 苛立チノ 解消ニ 付キ合ッテ 貰オウ」

 エンペラー・リッチは骨を震わせて笑う。
 したくもない我慢をさせられた鬱憤を、やってくる異物にぶつけてやろう。

 魔王対魔王。
 遥か昔にあった忘れられた戦い。
 その再現がまもなく行われようとしていた。
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