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第四章 迷宮都市ラビリントス

第123話 ウェインの願い

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 「レト様! レト様!」

 「ん? なんだ?」

 超越者達が動くまでの暇潰しに妲己、アシュラ、グレースで麻雀をしていると、ウェインが目を爛々と輝かせてやってきた。

 まだ3年も経たないぐらいの短い付き合いだが、このウェインの目は経験上よろしくない。
 マッドな事を考えてるに違いないぜ。
 いや俺の眷属なんだし、順当な成長とも言えるのか。鼻が高いね。

 「超越者達の死体を出来るだけ綺麗な状態で確保して欲しいんだぞ!」

 「別に良いけど。なんで?」

 俺が戦う訳じゃないけど、多分なんとかなるだろう。アシュラ辺りは怪しいが、最悪、死ぬ直前に妲己が【再生魔法】を使えばいい。
 余程ぺちゃんこにしたりしない限りは、綺麗な状態で渡せると思う。

 「進化とスキルレベルが上がったお陰で、レト様が前に言ってた事が出来るかもしれないんだぞ!」

 「前に? 俺、なんか言ったっけ?」

 常に適当ぶっこいてるもんで、自分の発言を覚えていない。その時のノリもあるしさ。

 「キメラ! キメラだぞ! 超越者の肉体で試してみたいんだぞ!」

 「あーそんな事言った様な気がするな。あ、それロン」

 「キュン!?」

 ウェインと喋りながらも、麻雀の対局は進んでいる。未だにイカサマがバレないんですよねぇ。
 グレースが呆れた様に見てくるが、気にせず無視する。こいつは【シックスセンス】のせいで、全然振り込んでくれないからな。
 自力でツモる必要がある。

 「それでキメラだっけ? 出来るの?」

 「理論上は出来るんだぞ! でも足りない物が一つあるんだぞ」

 「魂か」

 いくら死体をごちゃ混ぜにしたり、継ぎ接ぎにした所で動かなきゃ意味がない。
 唯の前衛的な死体になるだけだ。

 エンペラー・リッチは【死霊術】でも使ってるんじゃないかと思ってるが、それもどういう感じなのか分からないし。
 異能なんて理解しようと思っても無駄だろう。
 俺があまり考える気がないだけだが。

 「魂を魔石で代用出来ないかと思ってるんだぞ。キメラとホムンクルスのハイブリッドなんだぞ!」

 誰だよ、そんな知識を与えた奴は。
 そうです、俺です。覚えてないけど。
 もしかしたら、紙に書いてたかもしれないな。

 「まっ、良いんじゃないの? 失敗しても特に何かある訳じゃないし」

 「レト様、一応死体を弄んで実験するのは禁忌ですよ」

 禁忌? 知らない子ですね。
 成功したら面白そうなんだし、やるに決まってるじゃん。

 「死体で実験したらダメって、この世界の医学の発展はとてつもなく遅れそうだよな」

 「レト様の世界と違って魔法がありますので」

 魔法って便利ー。
 でも、魔法を使えない人でも助けられる事があるって事は素晴らしい事だと思うんだけどね。
 手術中に【回復魔法】を直接病原にかけるとかさ。合わせ技でも凄い事になると思うけど。
 まっ、人間様の都合なんて知ったこっちゃないし、発展が遅れるならそれはそれで良いだろう。

 「ツモ。はい、妲己ちゃんぶっ飛びー」

 「キュ…」

 ウルウルと可愛い瞳でこちらを見てくる妲己。
 もう一回やって欲しいのかな?
 何回やっても積み込まれた時点で終わりだよ?

 「今回の超越者の戦いにウェインはなにも無しだからな。ご褒美として死体をあげるぐらい構わんだろ」

 「ありがとうなんだぞ!」

 偶にしてくるおねだりぐらい応えてやらんとな。
 主人としても。親代わりとしても。
 鍛治施設を用意出来なかったりしてる訳だし。

 ってか、生け捕りじゃなくて、死体でいいのかね? 生きたままの方が都合が良さそうなんだけど。まぁ、ウェインが死体が良いってんなら、死体で良いか。

 それにキメラって楽しみだよね。どういう感じになるのかな。
 面白そうなら眷属にしたって良い。
 制御出来そうにないなら、街中に放り出して遊ばせるのも良いだろう。

 「まずは動くかどうかって話だけどな」

 「成功したら、また教会が飛び上がりそうですね」

 「早速素案を纏めてくるんだぞ!」

 ウキウキと自分の実験スペースに走り出したウェイン。その姿を見ると、歳相応に見えるんだよな。
 考えてる事はマッドな事だが。

 「ん?」

 麻雀牌をじゃらじゃらして、バレない様に積み込んでいると、ウェインが魔法鞄を持って戻ってきた。
 因みに迷宮のボス周回やらで、魔法鞄やら空間が拡張された馬車等、異世界でありがちな魔道具は結構ドロップしている。
 馬車や魔法鞄なんて余り気味なくらいだ。

 ホテル用も三つもあれば充分だし。
 ………いや、三つも改造されてる事に驚くべきなんだが。グレースさんのバイタリティは恐ろしいね。俺もノリノリでやってる訳だから、文句は言えないんだけど。

 「これ、グレースお姉ちゃんに言われてた新しい麻雀卓なんだぞ! ちょっと作るのに苦労したけど、しっかり出来てる筈なんだぞ!」

 戻ってきたウェインが魔法鞄から出してきたのは、全自動麻雀卓だった。
 チラッとグレースを見ると勝ち誇った様な顔をしてやがる。

 「お、おのれ…」

 「良かったですね、レト様! これで一々手動でやらなくて済みます!」

 無理矢理イカサマを封じてきやがった!!
 白々しくこれで楽になりますなんて言いながら、妲己とアシュラを巻き込んでウキウキでセットしていく。

 妲己とアシュラと自動で配牌まで出してくれる新たな遊び道具に目を輝かせて早くやるぞと催促してくる。

 だが、俺のイカサマが積み込みだけだと思って貰っては困る。
 これで俺を封じたと甘く見てられるのも今の内だぜ。

 これで勝てますとでも思ってるんだろう。
 この裏切りの代償は高くつくぜぇ。
 今日の夜はズタズタのけちょんけちょんにして、ぎゃふんと言わせてやらぁ。
 
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