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第四章 迷宮都市ラビリントス

第102話 ボス攻略

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 「うーん。これ、勝てるけど時間がかかるパターンか」

 ボス戦が始まって30分。
 ダメージは徐々に与えてるが、大ダメージはない。少しずつ蓄積させていってる感じだ。

 「ゴギャ!!!」

 「はぁぁあ!」

 アシュラが飛び上がって、金棒でボスの顔をかちあげる。
 グレースは翼の付け根を一点狙いで腐食させていっていて、段々と効果が出て来ている。

 「キュン」

 「攻撃出来ないの」

 二人がかなり接近して攻撃してるから、魔法を撃てなくて暇を持て余してるみたいだ。
 妲己は小さくなって、テレサに抱えられている。

 俺は何をしてるんだと言われれば、何もしてない。強いていえば応援である。
 戦い出して10分程でボスが血を流しちゃったんだよね。
 はい、勝ったと思って【血液魔法】を使って終わらせようと思ったんだけど、グレースがギリギリまで戦わせて欲しいってお願いしてきたんだ。

 「コロージョンの練習に持ってこいです」

 って事で練習相手に成り下がってしまったボス。
 それに珍しくアシュラも便乗して、一緒に戦ってるって訳だな。

 だから倒そうと思えば直ぐにでも倒せるんだ。
 二人だと時間が掛かるだけで。

 「最初は強そうだし、全員で行かないとと思ってたんだけどなぁ」

 絶対ステージが悪いよ。屋外ならこんな簡単な相手じゃなかった。
 気をつけるのは【風塵魔法】だけなんだよね。
 近付かれたくないのか、直ぐに吹き飛ばそうとしてくるから。
 でも、アシュラが魔法発動の瞬間に顔に金棒を叩き付けて魔法を阻止してるんだよね。

 後は、毒なんだけど。

 「妲己」

 「キュン」

 どちらかが毒に犯されても、即座に妲己が魔法で回復する。
 これぞ永久機関。いや、意味分からんな。

 「うわぁ。片方の翼が腐り始めてきた。お、せんきゅ」

 暇だなと思って煙草を咥えると妲己ではなく、テレサが火をつけてくれた。
 ほんの少しずつ距離が縮まってきてるな。
 かれこれ一年以上も一緒にいるし、ようやくって感じだけど。

 魔剣・コロージョンの腐食の効果がようやく効いてきたのか、綺麗な白い翼だったのにどんどんとドス黒くなっていく。

 「はぁぁあ!」

 そして、とうとう片方の翼がもがれた。
 あんな無くなり方絶対嫌だなぁ。

 「グルッ、グルォォオオ!」

 ボスは痛みのあまり絶叫。そりゃそうだよな。
 体の一部が腐っていって、無くなったんだ。
 いくら気高い王の様な魔物でも耐えられるものじゃないだろう。

 「ゴギャラー!! ゴギャ? ゴ、ゴギャ!?」

 「あっ!」

 チャンスとばかりにアシュラが畳み掛けて、猛攻撃していたら金棒が折れた。
 結構長い間使ってたもんなぁ。一応魔道武具だけどそんな頑丈な訳じゃないし。

 アシュラは一瞬悲しそうな顔をしたものの、直ぐに切り替えて素手で戦い始める。
 俺と一緒にグレースから習ってるからか、しっかりサマになってるな。
 戦闘学習がある分、アシュラの方が体術は上かもしれん。脳筋には丁度良いだろうけどさ。

 「ふむ。片翼は無くなったものの、まだ粘るな。一気に崩れるかと思ったが」

 「……テレサも参加するの」

 「ん? そうか。気を付けてな」

 ミニ妲己を俺に預けて、てちてちとボスに向かって行くテレサ。
 決め手が足りないと思ったんだろうか? グレースの魔剣に任せてればそのうち終わったと思うけど。

 まさか、俺と一緒にいる空気が耐えれなかったとか? そんな事はないよね?

 「ん? え? あれって…」

 参戦しに行ったテレサは、早速魔法を行使。
 火の矢に雷を纏わせて射出している。
 それ、さっき妲己が使ってたやつじゃん。
 そんな直ぐに真似とか出来ちゃう感じ?
 妲己は槍でテレサは矢って違いはあるけど。

 「すげぇな。ユニークスキルのお陰もあるんだろうけど、しっかり自分の物にしてんじゃん」

 「キュン」

 妲己も満足そうに頷いてる。
 テレサはわしが育てたってか? まぁ、その通りなんだけど。

 「おぉー! すげぇ! メテオじゃん!」

 テレサは魔法を合体させる事に味を占めたのか、土魔法で大きい岩石を作り、それに火を纏わせる。
 プチメテオって感じだな。

 「実験したかったんだろうかね。妲己のを見て自分も試したくなったんだろう」

 「キュン」

 賢いなぁ。まだ10歳になるかどうかって感じの幼女なんだけど。グレースの教育がいいのかな?
 魔法は妲己がちょこちょこ教えてたみたいだけど、読み書き計算とか一般知識はグレースが教えてるからな。



 「あー、もう死ぬな」

 テレサが参戦してから10分。
 二人の猛攻をなんとかするので精一杯だったボスは、ちょこちょこと飛んでくる魔法をしっかり食らいダメージが溜まってしまっていた。
 既にもう片方の翼も腐り落ちてしまっていて、もはやボスにはなす術がない。

 「はぁぁぁ!!」

 「ゴギャラー!!」

 「……どっかん」

 「グ、グルウォ…」

 そして、最後の3人同時攻撃にとうとうボスが死んだ。恐らくラスボスだったのに、俺は最初以外何もしなかったなぁ。
 なんだか釈然としないけど、みんなが強くなったからだとポジティブに考えよう。

 「お疲れちゃーん」

 「ありがとうございます。予想以上に時間が掛かって疲れましたね。テレサが参加してくれて良かったです」

 「ゴギャ…」

 「…新しい魔法が試せて満足なの」

 グレースとテレサは満足気な。アシュラは悲しそうな声を上げる。
 ああ、金棒が折れたもんな。長く使ってたし、愛着もあったんだろう。
 金棒の残骸を集めて、ウェインに渡そうか。
 それを使って、いつか新たな武器に生まれ変わらせてやろう。
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