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第三章 人間の街

第45話 スタンピード⑤

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 これ、言ったらダメなんだろうな。
 でも言いたい。ほんとに申し訳ないんだけど。

 「飽きてきたな」

 言っちゃった。いや、申し訳ない。
 人間様が生存を懸けて必死に頑張ってるのは分かってるんだけど。

 「なんか、ちょっと数を減らしては下がって回復。それを繰り返してるだけじゃんね」

 女騎士もあれが全力なのかなあ?
 あれなら勝てそうなんだけど。
 体力を温存してるのかもだけど、このままだとその内魔物の群れに飲み込まれそうだぞ。

 最初の方は面白かったんだけどな。
 人と魔物が入り乱れて、俺も良い感じに楽しんでたんだ。
 商会からパクってきたグラスに海の魔物の血を注ぎ、妖狐と優雅に観戦してたもんよ。
 ただ、ここまでワンパターン化されると見せ物としてはダメだね。
 妖狐も途中で寝ちゃったし。

 「どうすっかな。もう、適当に茶々入れて終わらせちゃおうか」

 せっかくここまで準備頑張ったけど仕方ないね。
 このまま、リブラも滅ぼしちゃおうか。

 「いや、待て待て。あの服屋の店主だけは確保したいぞ。おまけで奥さんも。…むむっ。店主だけじゃなくて職人もか? 面倒くさくなってきた」

 やっぱり良いか?
 別の街でも、服ぐらい作れる人いるだろ。
 いや、でもなぁ。
 この気に入った服の産みの親がいなくなるのはなんか嫌だなぁ。

 「命拾いしたな、リブラ! 服屋の店主に感謝しろ! 人間を適当に殺すだけで許してやる!」

 許してやる?
 そういえば謝ってもらう様な事はされてないような?
 ………まぁ細かい事は良いんだよ。
 そう。目的地は、あの女騎士を眷属にする事なのだから!
 ちょっと忘れてたけど問題なし!

 「って事は、あの女騎士に早いとこ全力出させて消耗させないと。ちょっと主要な騎士団の人間を何人か殺そうか」

 遠見の【魔眼】で、相手を確認。
 これ、魔力消費は多いけどかなりのチートだろ。
 見えない所から急に魔法使われて、対応出来る奴いんのかよ。

 「シャドウランス」

 何人かの騎士達の影から実体化した影の槍を出して、背後にから突き刺す。

 「およ? 1人に避けられてる。あ、対応出来る人もいるんすね」

 10人ぐらいを目安にランダムで選んだけど、鋭い人間もいたもんだ。

 「うーん? なんか女騎士こっち見てない? いや、かなり距離はあるから見えてないとは思うけど」

 シックスセンス万能すぎるだろ。
 どういう感じで分かるんだろう?
 俺とすれ違った時は分かってなかったのに、コ○ン君もびっくりの推理をする事もあるし。
 よくわかんねぇな。

 「お? お? おお! マジか!」

 女騎士が、部下にかなり指示出してるなーと思ったら、単身で俺の方に向かって走り出してきた。
 えー、思い切ったな。
 俺が魔法使ったせいで、なんか分かったんだろうけど。
 正直、俺を倒してもスタンピードは止まらないよ?
 制御出来てる訳じゃないし。

 「まあ、1人で向かってくるのは願ったり叶ったりだな。もっと消耗しててくれる方が良かったけど」

 あっという間に俺の所に着きそうだ。
 まあ最悪負けそうなら恥晒して逃げますけど。
 かなり屈辱だけどな。
 人間相手に逃げるのは。


 「よっこらしょっと」

 俺は木から飛び降りて、煙草を咥える。
 妖狐に火を付けてもらい、万が一負けそうなら助けてねと、お願いして影に入ってもらう。
 不意打ちで、助けてもらったら逃げるくらい出来るだろ。

 「来たな」

 「やはり貴様か! お前はなんなんだ!」

 なんなんだって言われましても。
 レト・ノックスですとしか言えないが。
 しかし、こういうのは最初が肝心。
 ガツンと言ってやるぜ。

 「どうも、魔王レト・ノックスです。必死に俺の事を探してたみたいで? ご苦労様です」

 いっけね。
 俺の人間性の良さが出ちまったぜ。
 魔物だけど。
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