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第二章 名も無き吸血鬼

第17話 妖狐

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 「ん? あれは?」

 魔石を取り込み、ちょっと座ってゆっくりしてたら、少し離れた所に糸の繭が木に吊されていた。

 「俺みたいに捕まった魔物かな? ついでに糧になってもらおう」

 俺は【音魔法】を手に纏い、糸を切る。
 繭から出て来たのは、瀕死の子狐だった。

 「えっ、可愛い」

 もっとグロテスクな魔物が出て来ると思ったら可愛い小動物だった。

 『妖狐
  名前  無し
  【魔物能力】
  念力     』


 「妖狐ねぇ…。急に和風になったな。今まで横文字ばっかりだったのに」

 これはもしやレア種なのでは?
 俺も魔物をいっぱい見て来た訳じゃないけど漢字は初めてだしな。

 「むう。これだけ可愛いと殺すのも忍びないな。いや、襲って来たら普通に殺すけど」

 前世で野良猫と戯れていたのを思い出す。
 こっちは狐だけど大差ないだろ。

 「とりあえず瀕死だし、魔石でも食べさせてみるか? 俺はそれで翼が治ったしな」

 まだ取り込んでいない魔石を口の中に放り込んでみる。

 「おおー。やっぱり魔石で傷が治るんだな。図らずも実験したみたいになったけど、結果オーライという事で」

 それから、外傷が無くなるまで魔石を与えてみたがまだ意識が覚めない。

 「どうしようかな。餌付けしたら懐いたりしてくれないもんか。テイムみたいな魔法はないのかね」

 テイム魔法とか契約魔法とかさ。
 このもふもふを堪能したい。

 「とりあえず、目が覚めるまでは待機しておこうかな。疲れてるしね」

 これで目が覚めた時に襲われたら仕方ない。
 縁が無かったと諦めて殺しましょう。



 魔法の練習をしながら、半日程経つと妖狐が目覚めた。

 「キュウ…」

 「どうも始めまして。レッサー・ヴァンパイアです。名前はまだありません」

 とりあえず近くに俺が居て警戒してるみたいなので自己紹介してみる。
 そういえば名前がまだ無かったな。
 これは、神様的な人に勝手に付けられるのかな?
 それとも、自分で付けるのか。
 まぁこだわりがないので、それは後で考えよう。

 「えーと。蜘蛛に捕まってたみたいなので、解放して魔石を食べさせました」

 「……」

 「えーと……」

 「……」

 そうだった。俺はコミュ障だった。
 大体俺の言葉は妖狐に通じてるのかな?
 ずっと見られてるので落ち着かない。
 幸いすぐに襲って来る事は無かったのでそれは良かったけど。

 「お加減いかがですか?」

 「キュウ」

 妖狐は恐る恐る近付いてきて俺の手をペロペロ舐める。
 うん。可愛い。

 「妖狐はこれからどうしますか?」

 「キュンキュン」

 「そうですか」

 なんて言ってるんだろうね。
 適当に相槌打ってるけども。
 てか、なんで俺はこんなに畏まってるのか。
 魔物相手にコミュ障出してどうするよ。

 「えーと、俺はそろそろ行こうと思うんだけど…妖狐はついて来るかな?」

 言葉が通じてるか分からないが一応聞いてみる。
 俺が立ち上がると、妖狐は飛び上がり俺の頭の上に乗ってきた。

 「ついて来るって事でいいのかな? 俺は嬉しいけど」

 いや、重たいな。
 俺の体の大きさ3歳児だぞ?
 妖狐の大きさは子犬ぐらいあるからちょっとバランスがおかしい。

 「キュンキューン!」

 まあ、いいか。
 人間相手にこんなんされたら即殺やぞ?
 いや、子供相手ならセーフかな。
 子供は良い。純粋だからな。
 大人はダメだ。真っ当な大人を見た事がないからかもしれんが拒否反応が出る。
 子供の頃からしっかり教育してれば、クソみたいな大人にはならんと思うんだが。
 妖狐には、しっかりとした大人になってもらおう。
 悪即斬の心得をしっかり叩き込んでやる。
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