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第5章 海外遠征
第102話 狭間崩壊
しおりを挟む東京に戻ってきて、少しゆっくりしてからまた国内の探索者学校を巡っていく。
本当は少しでも龍が如○を進めておきたかったんだけど、思ったよりも疲れてたみたいで何もする気が起きなくてひたすらダラダラして過ごした。
暫く留守にして夜しか交流出来なかったポテをずっと愛でていたな。
ポテもなんだかんだ寂しかったのか、ずっと甘えてくれていた。可愛い奴だぜ。
少し東京でゆっくりすると、その後は大阪、名古屋に向かう。
無難に学校巡りを終わらせて、最後は北海道へ。
そこでちょっとした事件が起こった。
講義を終わらせて、よし海鮮を食べるぞと意気込んでたら、協会から電話があったのだ。
「は? 狭間崩壊ですか?」
「はい。緊急依頼という事で受けて頂けないかと」
「そりゃ崩壊しちゃってるなら勿論急ぎで向かいますよ」
丁度北海道で、3級の狭間を攻略してたギルドが失敗したらしい。
少し奥まった所に狭間が出現して発見が遅れた事で、崩壊時期を読み間違えたみたいだ。
「って事で、ダッシュで狭間に向かうぞ」
「ういうい~」
あ、どんな魔物が出てるのか聞いてなかった。
まぁ、3級だから気にしなくてもいいか。
「憑依:忠義」
天使に憑依して空を飛ぶ。
「先に行ってるぞ」
「あたしもすぐに追い付くよ~」
タクシーでなんて悠長な事は言ってられない。
崩壊してるなら一般人が巻き込まれてる可能性がある。緊急時という事で能力の使用も認められるだろう。
桜は糸で電柱から電柱、時には家を使ったりして移動している。練習の成果が出てるのか中々速い。
「スパイダーマ○かよ。いや、女だからウーマンか」
おっと。気にしてる場合じゃないな。
急がなければ。
「うわっ。アント系かよ。数が多い」
5分程で現場に到着すると、そこは阿鼻叫喚だった。現地の探索者が足止めして、一般人が逃げる時間を稼いでくれてるけど、3級は本来なら上位ギルドが相手するような等級だ。
まだなんとか持ち堪える事は出来てるが、それも時間の問題だろう。
「絶対障壁」
結界を張ってアントを止める。
これでとりあえずなんとかなるだろう。
「うーん。散らばってるな。面倒。まとめて吹き飛ばしたい。桜が居たらもう少し楽なんだけど」
家屋とかを気にしなくても良いならまとめてどーんでなんとかなるんだけどな。
「だんちょ~。お待たせ~」
「おっ。良いところに来たな。下の探索者達と協力して一般人を避難させてくれ。後、そこらに散らばってるアントを結界内に放りこんでくれ」
「ういうい~」
桜はすぐに行動を開始する。
逃げ遅れた一般人を糸で抱えつつ、一方で糸を付近に伸ばして周りに散らばってるアントを糸で拘束。結界内に雑に投げる。
「よしよし。俺は建物の保護だな」
桜が順調そうにしてるので、俺は周りの建物に結界を張っていく。
魔法でまとめて吹き飛ばすから、周辺被害が出そうだからな。建物ぐらいは保護しておかないと。
「憑依:救恤」
虫を殺すなら火に限る。
憑依を変更して魔法を準備。
「だんちょ~。付近の避難は完了したよ~」
「お前も避難しとけ。まとめて吹き飛ばす」
「ういうい~。りょうか~い」
俺は結界内で動けないアントに向かって魔法を放つ。
「爆ぜろ、大爆発」
結界内に向かって適当に魔法をばら撒く。
3級だからこれで終わりそう。楽で助かる。
「へっ! きたねぇ花火だぜ」
おっと。結界が軋んでらっしゃる。
威力が少し強すぎたみたいだ。
いくつかの建物はダメになったかも。
まぁ、人的被害は出てないんだから許してほしい。
「よし。依頼は完了だな。さっさと帰ろう」
観光の続きをしなければなるまい。
緊急依頼って事でお金もがっぽりだし、多少散財しても良いだろう。ほんと探索者ってボロい商売だな。
「だんちょ~。お疲れ~」
「疲れる程でもない。ここに来るまでの方が疲れたまである」
「あはは~。でも依頼料がっぽりじゃ~ん。ご飯食べて帰ろうよ~」
「いいぞ。何が良い?」
「牛丼一択っしょ~」
そうだよな。桜さんはそうじゃなきゃ。
北海道に来てから行ってなかったし、とりあえず吉野さんにでも向かうか。
「きゃー! 使徒様ー!!」
「助けてくれてありがとうございます!!」
「命の恩人です」
もう緊急じゃないって事で憑依を解いて、歩いて近くにあるであろう吉野さんを探してたら避難民達が駆け寄ってくる。
俺は素晴らしい笑顔を顔面に貼り付けて手を振っておく。
「うわ~。胡散臭~い。あの人達が普段のだんちょ~を見たら落胆するだろうな~」
「民意というのは馬鹿にならんからな。手を振るだけで味方になるならいくらでもするさ。お前も適当に振っておけ」
「ういうい~」
今回は桜を称賛する声も大きい事だしな。
避難誘導を仕切って頑張ってくれてたみたいだし。一緒に避難誘導してた探索者達もちゃんと感謝されてる。うむうむ。これを見ると頑張った甲斐があったなと思う事だろう。
「いつになったら俺に頼らず、次元の狭間を攻略出来るようになるんだろうな」
「まだまだ先の話だよ~。この前、初めて2級を攻略して快挙だ~なんてニュースでやってたし~」
「2級って…。お前だけでも一人で攻略出来るんじゃないか? てか、俺攻略した事あるんだけど」
「出来るかもだけど~。しんどいだろうし~絶対にやりたくはないよね~。だんちょ~は攻略出来て当たり前と思われてるんじゃないの~? だからこれからも頑張ってね~。特級探索者さ~ん」
俺と桜が名古屋巡りをしてる時に『暁の明星』と協会のお抱え探索者が合同で2級の狭間を攻略した。それはもうニュースはお祭り騒ぎだったな。
俺も1級を攻略した時は同じくらい騒がれたけど、2級では最早そこまで騒いでもらえない。
今回は俺抜きで攻略した事で快挙だーなんて騒いでるけどさ。
果たして1級攻略まではどれぐらい時間がかかるのやら。
まっ、人類が一歩進んだ事は素直に喜ぶべきかね。俺も頑張った甲斐があったってもんよ。
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