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第5章 海外遠征

第90話 勝者は

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 ☆★☆★☆★

 天魔がルーレットやBJで楽しんでる頃。
 桜は最初の30分はぶらぶらしていた。
 色々な卓の野次馬をしつつ、何で遊ぼうか考えているフリをしながらチャンスを待っていた。
 そして満を辞して始めたのがポーカー。

 「お願いしま~す!」

 ニコニコと笑顔で卓に座る。
 天魔の相棒としての知名度もそうだが元から顔が美しいので、これにはディーラーや他の遊戯してる人達もにっこりである。

 ポーカーには色々種類があるが、桜が選んだのはテキサスホールデム。
 これはディーラーと勝負するのではなく、他のプレイヤーと勝負する。
 プレイヤー毎に配られた2枚のカードと5枚の共有札の計7枚を組み合わせて手役を作り、役の強いプレイヤーが勝利となる。

 桜はこのテキサスホールデムの卓が空くのをずっと待っていた。
 カジノの中でも人気なのか中々空かなくて、仕方なく他を回っていたのだ。

 (んふふ~。だんちょ~には悪いけどあたしはポーカー大好きで得意なんだよね~)

 桜のスマホのアプリを見るとポーカーだらけ。
 暇潰しで始めたのだが、これが思ったよりも面白くて、色々なアプリで楽しんでいる。
 動画サイトでも良く見ており、いつかは生でやってみたいと思っていたのだ。

 (アプリと違うのはやっぱりブラフの効果だよね~。相手の動作の機微とか表情を良く観察しなくちゃ~。人間には絶対に癖があるからね~。最初は様子見で相手の情報を得る事に注力しよ~っと)

 そしてそれから約30分。
 桜は可もなく不可もない結果でプレイヤーを観察していた。途中で入れ替わりがある事を心配していたが、幸いそんな事もなくそろそろ勝負をかけようかと思っていたとき。

 (エース2枚。ここだね~)

 自分の手元に配られたカードを見て僅かに顔を顰める。勿論ブラフである。ここまでもずっとニコニコしていたが、時折手札通りの顔をして餌は撒いてきたのだ。

 現在プレイヤーは桜を除いて五人。
 全員このカジノの常連であり、勝負事には慣れたもの。ここまでの桜を観察していてもそこまで強いと感じなかったし、表情が素直すぎると思っていた。
 だから今回の桜の表情も見逃さなかったし、勝てる勝負だと踏んだ。

 「レイズ」

 一人の男が賭け金を釣り上げる。
 そして他の三人はそれに追随してコール。
 もう一人は手札が悪かったのかフォールドした。

 「……コール」

 桜は数瞬迷った様子を見せてニコニコしながらコール。他のプレイヤーには無理してるように見えただろう。良く見れば表情が引き攣ってるようにも感じる。

 プレイヤーが出揃った事で共有札がまず三枚公開される。
 そしてなんと運良くAが二枚落ちてくれた。

 (んふふ~。この勝負は貰ったね~)

 公開されたカードを見て他のプレイヤーは次々にレイズ。
 桜の手札が良くないとみて、強気のブラフで桜を降ろそうとしたのだろう。

 「……オールイン」

 桜はニコニコして勝負を受ける。
 器用にも表情は笑っていながらも少し苦しそうに見える。
 他のプレイヤー達にはさぞかし美味しく見えただろう。

 「コール」

 そして全てのプレイヤーがコール。
 そして全員の手札が公開される。

 「んなっ!」

 一人の男が驚いた声を上げる。
 桜の手札はエーシーズ。
 共有札と合わせて、Aのフォーカードである。

 「んふふ~。毎度あり~」

 桜はニッコニコでチップを受け取る。
 他のプレイヤー達にこれでもかと笑顔を見せつけて。

 (大体のみんなの癖は分かったね~。ここからは巻き上げさせてもらうよ~)

 そこからは怒涛の展開だった。
 男達は桜にいいようにやられて、負けてられるかと熱くなる。
 それをのらりくらりと躱しつつ、時にはブラフで退ける。そして大物手を悉くモノにしていき、気付けば桜のチップは日本円にして1億円を超えていた。

 (一般テーブルでこれだけ稼げれば充分でしょ~。だんちょ~はどうしてるかな~?)

 そろそろ約束の時間なので、桜は卓を抜ける。
 真っ白に燃え尽きた男達にウインクをかましつつ、その場をあとにした。


 ☆★☆★☆★

 お、おかしいな?
 気付けば手持ちがプラマイ0ぐらいになってるんだが? 俺にBJは向いてなかったみたいだ。
 せっかくルーレットで増やしたのに勿体ない事したぜ…。

 「これはいかん。約束の時間まで間近だぞ。ルーレットで挽回せねば!」

 俺は焦って最初にやっていたルーレットまで戻る。そして、なんとか日本円で1500万まで増やして終了。プラスで終わる事は出来た。

 「500万プラスじゃ勝てないかな? いやいや、桜が負けてる可能性だってあるんだ」

 まだ慌てる時間じゃない。
 カジノ素人は俺と一緒なんだ。
 そんな都合良く勝ててたまるかってんだ。

 「んふふ~! だんちょ~お待たせ~!!」

 ソワソワしながら待ってると満面の笑みの桜がやってきた。嫌な予感しかしないんだが。

 「待て待て。なんだそのチップの量は」

 「ボロ勝ちしちゃった~!」

 話を聞くとひたすらポーカーで増やしてたらしい。あの騒がしかったのはそのせいか!

 「なんで? ポーカーとか素人が手を出して良いもんじゃないでしょ」

 「んふふ~。あたしポーカー好きなんだ~。アプリもいっぱい取ってるしね~」

 ふぐっ。やられた。俺の完敗じゃん。

 「じゃあだんちょ~はあたしの言う事を一つ聞いてもらうからね~。んふふ~。何にしようかな~」

 負けは負けだ。潔く受け入れよう。
 軽めのお願いにしてくれると嬉しいけどね?

 
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